債務整理を検討している人の中には、債務整理をしても現在の賃貸契約に影響はないのか、新たな賃貸契約をする際に不利にならないかと不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。
結論から言うと、債務整理をしても現在の賃貸契約に影響を与えることはありませんが、新たな賃貸契約の審査で不利になる可能性があります。
今回は、債務整理が賃貸契約に与える影響について、現在の賃貸契約と新たな賃貸契約に分けて解説します。
債務整理をするとブラックリストに載せられる
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があります。債務整理の方法には、それぞれの特徴があるものの、いずれの方法でも信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。
信用情報機関とは、個人の借入れについて、借金の額や取引の状況などを管理する機関です。債務整理を行うと、信用情報機関に債務整理を行ったとの事故情報が登録され、いわゆるブラックリストに載った状態となります。
ブラックリストに載せられると、新たな借金やクレジットカードの作成ができなくなります。さらに、賃貸契約との関係では、保証会社の審査が通らなくなる可能性があるのです。
債務整理が賃貸契約に与える影響は、主にブラックリストに載せられることによるものです。そのため、どの債務整理の方法を選んでも賃貸契約に与える影響には大きな違いはありません。
債務整理をしても現在の賃貸契約には影響がない
債務整理をしても、債務整理以前から賃貸契約を締結している場合には、現在の賃貸契約に影響を与えることはありません。債務整理のあとも家賃を支払い現在の物件に住み続けようと考えている場合、心配することなく債務整理の手続きを進めて問題ありません。
債務整理は賃借人を退去させる理由にはならない
賃借人が債務整理をしたことは、賃貸契約の解除理由にはなりません。賃貸契約を更新する際にも、賃貸人が賃貸契約の更新を拒絶して賃借人を退去させるには、「正当の事由」(借地借家法28条)が求められます。
「正当の事由」が認められるのは、賃貸物件の老朽化による建て替えが必要な場合や、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されている場合、賃貸人から立退料が支払われる場合などに限定されています。賃借人が債務整理をしただけでは、更新を拒絶する「正当の事由」とはなりません。
賃借人は、債務整理をしてもすぐに賃貸契約を解除されることはありませんし、更新のタイミングで更新拒絶されることもありません。
家賃を滞納している場合には退去させられる可能性がある
債務整理をしたか否かにかかわらず、家賃を滞納している場合には、退去させられる可能性があります。
賃貸契約の解除は、賃貸人と賃借人との信頼関係が破壊された場合でなければ認められません。家賃を1か月滞納しただけでは、信頼関係の破壊までは認められませんが、家賃の滞納が3か月以上続くと、信頼関係が破壊されたとして賃貸契約を解除される可能性が高いでしょう。
債務整理をすると、新たな賃貸物件を探すのに苦労します。債務整理をする際には、現在の賃貸契約が解除されることがないよう、家賃の支払いだけは継続するようにしてください。家賃をクレジットカードの引き落としにしている場合には、クレジットカードが使えなくなる前に支払い方法の変更をしておくようにしましょう。
債務整理をすると新たな賃貸契約の審査で不利になる
債務整理をすると、新たな賃貸契約の審査で不利になる可能性があります。
賃貸契約を締結する際には、家賃保証会社との契約を求められるケースがあります。家賃保証会社は、賃借人が家賃を支払えない状態になったときに、賃貸人に支払われる家賃を保証する会社です。
家賃保証会社には、信販系の保証会社、全国賃貸保証業協会に加入する保証会社、独立系の保証会社の3種類があります。
このうち、クレジットカードを発行する信販会社が運営する信販系の保証会社は、審査の際に信用情報機関の情報を参照します。なので、信販系の保証会社は、ブラックリストに載った状態では審査が通りにくくなります。
債務整理をした場合には、信販系の保証会社との契約が必要となるときに、入居審査に通らなくなる可能性があります。
債務整理後に新たな賃貸物件を探す際のポイント
債務整理後でも、入居可能な賃貸物件はあります。債務整理後に新たな賃貸物件を探す際には、次のような物件を選ぶと審査に通りやすくなるでしょう。
債務整理が不利になるのは、信販系の保証会社との契約の場面です。信販系の保証会社との契約が不要な物件を選べば、債務整理が不利になることはほとんどありません。
公営住宅の抽選に通るのであれば、家賃も安く、債務整理後の生活を安定させるのにも最適と言えるでしょう。
まとめ
債務整理をしても、現在の賃貸契約には影響を与えることはありません。ただし、新たな賃貸契約をする際には、信販系の保証会社の審査が厳しくなるため、不利になる可能性があることを紹介しました。
債務整理後に新たに賃貸契約をする際にネックになるのが家賃保証会社の有無です。家賃保証会社が必要な物件の場合は、独立系の保証会社を利用する物件や、公営住宅、URの物件を選ぶとよいでしょう。
仙台青葉ゆかり法律事務所では、債務整理後の不安な点についても相談に乗らせていただきます。まずは、お気軽にご相談ください。