
交通事故の被害にあった場合には、相手に対して損害賠償を求めることができます。もっとも、損害賠償といっても被った被害ごとに細かい内訳があり、加害者側と一つ一つについて交渉することになります。
そこで本記事では、交通事故被害に遭った場合の損害賠償の種類と相場について解説します。
交通事故に遭った場合の損害賠償の法的根拠
交通事故に遭った場合の損害賠償の法的根拠は、民法第709条以下に規定されている、不法行為損害賠償請求です。
交通事故の加害者は被害者に対して不法行為を行っています。そのため、与えた損害について賠償する必要があります。損害賠償請求は与えた損害についての補填となるので、被害者にどのような種類の損害が発生しているかが問題となります。
交通事故に遭った場合の損害賠償の種類と相場
交通事故に遭った場合の損害賠償には様々な種類があります。その種類と相場について確認しましょう。
財産的損害
まず、交通事故による財産的な損害があります。交通事故の被害にあった場合、ケガの治療などのためにお金を払ったりするなど費用をかけなければなりません。
また、仕事を休むことになって、本来仕事をしていれば給料を得られたのに、交通事故が原因で得られなくなることがあります。前者のようなタイプの損害を積極損害・後者のようなタイプの損害を消極損害といいます。これらの財産的損害は、損害賠償請求の対象となります。
積極損害
積極損害としては次のものが挙げられます。
- 治療費:交通事故の治療にかかった費用
- 付添看護費:交通事故の治療に第三者が付き添ったときの費用
- 入院雑費:交通事故の被害者が入院中に購入する日用品などの費用
- 交通費:交通事故の治療のために通院をするために必要となる交通費
- 器具・装具費:交通事故の治療をするために必要な器具・装具のための費用
- 葬儀費用:交通事故の被害者が亡くなったときの葬儀などの費用
これらは実際に発生した額が損害となるので、その相場も実際に支払った額となります。
消極損害
消極損害としては次のものが挙げられます。
- 休業損害:仕事を休んだことに対する費用
- 後遺障害逸失利益:交通事故で後遺症が発生していなければ本来得られた利益
- 死亡逸失利益:交通事故で亡くなった人が本来得られた利益
これらも実際に発生した額が損害となるので、その相場は発生したそれぞれの損害額によります。
慰謝料
精神的苦痛を被った場合には、慰謝料が請求でき、交通事故でも被害者は精神的苦痛を被るので、慰謝料の請求ができます。
慰謝料にはさらに細かく次のものが挙げられます。
- 入通院慰謝料:入院・通院を強いられた精神的苦痛に対する慰謝料
- 後遺障害慰謝料:後遺症が発生したことによる精神的苦痛に対する慰謝料
- 死亡慰謝料:交通事故の被害者が死亡したことに対する慰謝料
これらの相場は、入通院慰謝料の場合はどのくらいの期間入院・通院をしたかによって異なります。後遺障害慰謝料の場合はどのような後遺症が発生して自賠責保険の何級の後遺障害に認定されたかによって異なります。死亡慰謝料の場合誰が亡くなったか、被扶養者が何人いたかによって異なります。
また、自賠責保険から支払われる額である自賠責基準・任意保険会社が示談金を示すために用いる独自の基準である保険会社基準・裁判所が裁判で認定する裁判基準(弁護士はこの金額で請求するので弁護士基準とも呼ばれます)によっても額が異なります。保険会社は支払額が少なくなる任意保険基準で示談金の提案をしてくるので、きちんと裁判基準で反論する必要があることを覚えておきましょう。
物的損害
交通事故では自分が乗っている自動車が破損して修理が必要となるなど、物的損害も発生しています。物的損害についても損害として加害者に請求ができます。
- 修理費:交通事故で破損した自動車を修理するための費用
- 代車費用:交通事故で破損した車が修理中に代わりの車を用意するための費用
- 評価損:交通事故によって破損した車の評価額が下がったことに対応する費用
- 休車損害:交通事故で営業用車両が破損した場合に、修理・買い替えのために使用できなかった期間に発生する営業損失
物的損害についても発生した損害をそのまま請求することになるので、その相場も発生した費用によることになります。
交通事故の損害賠償と自動車保険の関係
交通事故の損害賠償と自動車保険との間にはどのような関係があるのでしょうか。
交通事故の被害者は加害者に対して損害賠償をするのが法律の建前です。しかし、交通事故で発生する被害は、時に数千万以上になることもあります。これを加害者が一括で支払えることは稀です。莫大な損害賠償を補填するために、自賠責保険と任意に加入する自動車保険があります。
自賠責保険・自動車保険ともに加害者が支払わなければならない損害賠償を補填するものです。そして、自賠責保険から支払われた金額を差し引いた残りの額について、加害者の任意保険会社から支払われることになります。もし任意保険に加入していない場合には、基本的には加害者は被害者に直接損害賠償をする必要があります。
まとめ
本記事では交通事故被害に遭った場合の損害賠償の種類と、その相場について解説しました。
交通事故被害にあった場合には、損害賠償請求をすることになり、治療費・慰謝料・物的損害など発生した損害をきちんと計算する必要があります。いずれも非常に複雑であり、かつ相手方の保険会社がなるべく支払わないために様々な主張をします。適切に対応するために、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。