

借金が増えてしまったので、債務整理を考えています。でも、株式投資で損失を出して、追証を払うために借金をした場合でも、債務整理はできるのでしょうか?

株式投資やFXといった投資が原因で借金を抱えた場合でも債務整理は可能です。
ただし、自己破産をする場合には免責不許可事由にあたるので、簡易管財(宮城県外では少額管財とも)で手続きを進める必要があります。
「株やFXに投資したものの損失を出して借金を抱えてしまった」
「証拠金が足りず、借り入れをしてしまった」
株式投資やFXが原因で、思わぬ損失から借金地獄に陥るケースは少なくありません。では、株式投資やFXが原因でできた借金でも債務整理はできるのでしょうか。
結論からいえば、債務整理は可能ですが、いくつか注意すべき点があります。
本記事では、株式投資やFXが原因の場合でも債務整理ができるのか、そのポイントについて解説します。
株式投資・FXで作った借金でも債務整理はできるのか?
結論からいえば、株式投資やFXが原因で生じた借金でも、債務整理は可能です。債務整理には主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの手続きがありますが、株式投資やFXが原因だからといって一律に拒否されることはありません。
ただし、自己破産を選択する場合には、「免責不許可事由」に該当する可能性があるなど、特有の注意点が存在します。
株式投資・FXで作った借金で債務整理する場合の問題点
株式投資やFXによる借金で債務整理を行う際には、次の点に注意が必要です。
自己破産の免責不許可事由に該当する可能性が高い
株式投資やFXが原因で借金をした場合には、免責不許可事由に該当する可能性があります。
自己破産について規定する破産法では、一定の場合には免責をしないとする「免責不許可事由」が第252条第1項に規定されています。
破産法第252条第1項4号は「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」を免責不許可事由としており、株式投資・FXで借金をすることは射幸行為に該当する可能性があります。
免責不許可事由に該当する場合でも裁量免責で免責される
たとえ株式投資やFXによる借金が「免責不許可事由」に該当しても、必ずしも免責が認められないわけではありません。
免責不許可事由に当たる場合でも、破産に至った経緯やその他の事情を総合的に考慮し、免責を認めることが相当と判断されれば、裁判官の裁量によって免責が許可されます(裁量免責・破産法第252条第2項)。
裁判所が、「反省の意思がある」「今後は誠実に生活を立て直そうとしている」と認めた場合には、裁量免責により免責が認められることになります。実務上も、免責不許可事由があるケースであっても、多くの場合は裁量免責によって免責が許可されています。
自己破産をする場合には管財事件(簡易管財)になる
株式やFXによる借金を理由に自己破産を申請する場合、管財事件として扱われます。管財事件とは、破産者に一定の財産があると認められる場合に、裁判所から選任された破産管財人が財産の管理・処分を行う手続きです。
株式投資やFXの内容、裁量免責が適切かどうかを調査するため、破産管財人が選任される必要があり、簡易な手続きである同時廃止ではなく管財事件として扱われます。
株式を持っている・ポジションが決済されていない場合には財産として計算される
自己破産を申請する際、株式を保有していたり、FXの未決済ポジションがある場合、それらは「財産」として計上されます。たとえ大きな含み損を抱えていても、時価で評価され、破産財団に組み入れられることになります。
破産前に不適切に処分すると「財産隠し」と見なされることもあるため、弁護士に早めに報告し、正しい手続きを踏むことが重要です。
任意整理・個人再生であれば問題にならない
株やFXによる借金であっても、「任意整理」や「個人再生」であれば原則として問題になることはありません。
これらの手続きでは、借金の原因が問われることがなく、「今後きちんと返済できるかどうか」が重視されます。
株式投資・FXを理由に債務整理しても再度取引を行うことは可能
債務整理をした場合でも、再度株式投資やFX取引は可能です。
証券口座を開設するためには審査がありますが、審査はマネーロンダリングや反社会的勢力との繋がりなどに関するもので、貸金業者のように信用情報に基づく審査ではありません。新たに口座を開設したり、従来の口座が残っていればその口座で取引を続けることも可能です。
もっとも、再び株式投資やFXで借金を抱えた場合には、自己破産が認められにくくなる可能性が高いため、再度の投資は慎重に行う必要があります。
まとめ
株式投資やFXによって借金を抱えてしまった場合でも、債務整理を通じて解決を図ることは可能です。
任意整理や個人再生であれば借金の原因が問われることはなく、比較的スムーズに手続きが進みます。自己破産の場合には「免責不許可事由」に該当する可能性があるものの、多くの場合は裁量免責によって、借金の免責が認められています。
なお、株式投資やFXについては、ケースによっては資産が残っていると認定される可能性があり、その取り扱いが難しくなる場合があります。そのため、早めに弁護士に相談しながら手続きを進めるようにしましょう。