自己破産をすると全ての財産を没収されて生活ができなくなるという誤った情報や思い込みで、自己破産をすることを躊躇する方がいます。
自己破産しても、すべての財産を失うわけではありません。「自由財産」と認められるものは、自己破産しても手元に残せます。
「何が自由財産になるの?」「自由財産をできる限り多く認めてもらう方法はあるの?」など気になる方もいらっしゃるでしょう。
今回は、自由財産の種類と自由財産の範囲を広げる方法について解説します。自己破産で財産を失うことに不安を感じている方はぜひ最後までご覧ください。
同時廃止なら手元の財産を残せる
自己破産には、「同時廃止」と「管財事件」の2つの種類があります。同時廃止は、債権者への配当手続きなしで破産手続きが終わるので、手元の財産を失うことはありません。
同時廃止は、破産者が財産を持っておらず、破産管財人を選任して債権者への配当手続きを行う費用がない場合に認められるものです。なので、手元に残しておきたい大きな財産があるときには、そもそも同時廃止を選ぶことはできません。
同時廃止と管財事件を振り分ける基準は、裁判所によって異なります。多くの裁判所が準拠する東京地方裁判所の基準では、次の基準で振り分けられています。
例えば、生命保険の解約返戻金が20万円以上ある場合や、20万円以上の価値がある不動産や自動車を所有している場合には、管財事件に振り分けられます。
自己破産しても自由財産は残せる
管財事件でも手元に残せる財産を「自由財産」と言います。破産管財人は、破産者の財産を自由財産と破産財団に分けて、破産財団を債権者への配当や破産管財人の報酬などに充てます。
自由財産として認められる財産は、次の5つです。
それぞれの財産の内容と、自由財産と認められる根拠について解説します。
破産開始決定後に取得した財産
破産者が、破産開始決定後に新たに取得した財産は自由財産となります。
破産財団になるのは、破産者が破産手続開始のときに持っていた財産です(破産法34条1項)。破産手続中も破産者の経済活動は禁止されていないので、破産者が新たな財産を取得することがあります。
例えば、破産開始決定後に受け取った給与やボーナスは、破産開始決定後に取得した財産なので自由財産となります。
99万円以下の現金
破産者の手元にある99万円以下の現金は、自由財産として扱われます。
破産法34条1項1号は、民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた金銭は破産財団に属さないと規定しています。民事執行法131条3号は、標準的な世帯の2か月分の生活費について差押えを禁止する規定です。
民事執行法施行令では、2か月分の生活費を66万円と規定しているので、66万円に2分の3を乗じた99万円が破産財団に属さない自由財産となります。
差押禁止財産
法律で差押えが禁止された財産は、破産財団に組み込まれず自由財産となります(破産法34条3項2号)。
差押禁止財産としては、次のようなものが挙げられます。
自由財産の拡張が認められた財産
法律で自由財産とされている財産以外でも、裁判所の判断で自由財産の範囲が拡張されれば、自由財産として手元に残せます(破産法34条4項)。
自己破産は、破産者の生活を立て直すための制度です。自由財産の範囲を限定しすぎると、破産後に生活を立て直すのが難しくなってしまうでしょう。そこで、破産法では、破産者の生活に最低限必要と認められる財産については、裁判所の判断による自由財産の拡張を認めているのです。
自由財産の拡張が認められる財産は、破産者の生活状況や各裁判所の運用によって異なります。東京地方裁判所の運用では、次の財産について原則として自由財産の拡張を認めています。
個別で自由財産の拡張を認めてもらいたい場合には、裁判所に自由財産拡張の申し立てを行い、裁判所が認めたときには自由財産となります。
破産管財人が放棄した財産
破産管財人は、破産財団を換価処分して債権者に分配します。しかし、破産財団に換価処分が難しい財産がある場合、破産管財人は裁判所の許可を得て、その財産を放棄できます。
換価処分が難しい財産としては、買い手が見つからない財産や、処分するのに多額の費用や維持費がかかる財産などが挙げられるでしょう。
破産管財人が放棄した財産は、自由財産となるため破産者の手元に残せます。
法人の破産では自由財産の制度はない
法人の破産手続きには、自由財産の制度はありません。
法人の場合は、破産手続の終結によって法人が消滅します。そのため、自然人のように破産後に手元に残す財産を考慮する余地がないのです。
さいごに
自己破産をしても手元に残すことができる自由財産について紹介しました。
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