借金で給与が差し押さえされるのはどんな場合?

借金で給与が差し押さえされるのはどんな場合?
相談者
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借金返済が滞りそうです。返済ができないと給与が差し押さえられると聞いたのですが、どのような場合に給与が差し押さえられるのでしょうか?

前田啓吾
前田啓吾

返済が滞り、裁判で敗訴が確定した後に、強制執行の手続きで給与が差し押さえられることになります。差し押さえをされると会社には必ず知られてしまうので、早めに債務整理をしましょう。

借金の返済が滞ってしまうと、「給料が差し押さえられるのでは…」と不安になる方も多いのではないでしょうか。実際、債権者が裁判で勝訴した場合、裁判所を通じて給与の一部を強制的に差し押さえることが可能です。

今回は、給与差し押さえが行われる具体的な条件や流れ差し押さえ金額の上限、そして差し押さえを防ぐための対処法まで、わかりやすく解説します。

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どのような場合に給与が差し押さえられるのか

給与はどのような場合に差し押さえられるのでしょうか。

通常通りの返済をしていれば差し押さえはされない

借金があるからといって、すぐに給料が差し押さえられるわけではありません。毎月決まった金額を返済している場合や、債権者との間で返済の合意が取れている場合は、差し押さえの対象にはなりません。差押えは「強制執行」という法的手続きに基づくもので、債権者が勝手に行えるものではないからです。返済が可能なうちは、支払いを続けることが最も確実な防衛手段です。

返済が滞ると強制執行することになる

借金の返済が滞った場合、債権者は法的手段で回収することになります。具体的には、裁判所に対して民事訴訟を起こし、債務者の財産に対して強制執行をします。

強制執行には債権である給与が含まれる

給与は会社に対する「債権」という形で財産となり、強制執行の対象となります。そのため、裁判を起こされて強制執行をされる場合、その財産の一つとして給与を差押えることができます。借金返済ができなくなっている場合、差押えができる財産が少ないことが多く、給与は差押えができる数少ない財産であることが多いです。

会社に借金が返済できていないのを知られてしまう

給与が差し押さえられた場合、裁判所から勤務先に給与が差押えられた旨を通知する「差押命令」が届きます。これにより、借金を滞納していることが職場に知られることになります。給与が差押えられたからといって解雇はできないとはいえ、会社での信頼関係に影響する可能性があり、絶対に避けるべきです。

借金延滞した場合の給与差し押さえの流れ

給与が差し押さえられるまでの流れを確認しましょう。

延滞した場合の督促

借金を延滞すると、まずは債権者から電話や郵送で「督促」が行われます。初期段階では、まだ柔軟な対応が可能であり、返済相談や分割払いの交渉に応じてもらえるケースが多いです。

貸金業者が裁判を起こす

督促に応じない場合、貸金業者は裁判所に民事訴訟を提起します。強制執行をするためには民事執行法第22条に定められる債務名義を取得する必要があり、その一つである判決(確定判決)を取得するために裁判を起こします。民事訴訟の他に支払督促という手続きが用いられることがあります。

貸金業者が給与を差し押さえる

裁判で勝訴した貸金業者は、裁判所に「給与差押命令」の申立てを行い、命令が出されると勤務先へ通知が届きます。これにより、会社は債務者の給料から差押えられた分を、債権者に支払わなければなりません。給与が差押えられた後は、債務者は手取り額が減った状態で生活することになり、経済的にも精神的にも大きな負担となります。

借金延滞した場合の給与差押えにはルールがある

給与は法律上は銀行預金などと同様に債権ですが、生活のために不可欠であるという性質を持っています。そのため、給与差押えには一定のルールがあります。

差押の上限金額は給料の1/4とされている

差し押さえできる給与額には上限があり、原則として給与の1/4と民事執行法で定められています。

たとえば、給与20万円の場合、差し押さえられるのは最大で5万円です。給与は生活のために必要不可欠なもので、債務者の生活が破綻してしまわないように配慮されています。

給与が33万円を超える分は全額差し押さえられる

給与が33万円を超える場合、超過分はすべて差し押さえの対象となります。これは「33万円以上の給与については生活に必要な範囲を超えている」とみなされるためです。たとえば手取りが40万円であれば、33万円から4分の1(8.25万円)が差押えられ、33万円を超える7万円は全額差押えられることになります。

差押の効力は債務が完済されるまで続く

給与差押えは一度始まると、借金が全額完済されるまで継続します。毎月の支払額が自動的に給料から引かれる仕組みであるため、強制的に返済が続けられ、毎月強制執行する必要はないことになります。

借金の返済が遅れた場合に給与差押を防ぐ方法

給与差押えは、裁判や強制執行を経て実行される最後の手段です。差押えを防ぐためには、早期に適切な対応を取ることが大切です。

返済をする

借金を返済すれば、差押えが行われることはありません。ただし、このとき未払分だけを支払えばよいのか、それとも債務全額の支払いが必要になるのかは、「期限の利益の喪失」という契約条項が適用されるかどうかによります。延滞が長引くと、未払分だけでなく、まだ返済期限が来ていない分も含めて全額の支払いを求められる場合があるため注意が必要です。

債権者と交渉する

債権者と返済について交渉しましょう。債務の支払いに目処が立っているような場合には、きちんと交渉をして裁判や強制執行をしないように依頼しましょう。債務の支払いの目処が立っていない場合でも、定期的に連絡するなどして、返済の意思があることを示すのが有効です。

債務整理をする

返済が困難な場合には、債務整理を検討するのが有効です。自己破産・個人再生の手続きが開始すると、給与に対する強制執行は効果を失うことになっています。また、任意整理の打診をすれば、裁判提起前であれば応じてくれることが多く、裁判提起後でも判決が出るまでの間であれば、遅延損害金が付加されるなどの不利はあるものの、任意整理に応じてもらえる可能性があります。

まとめ

給与の差し押さえは、借金を放置した結果として起こる法的な強制措置です。判決や差押命令を経て実行され、会社にも通知が行くことでプライバシーや信用にも影響が及びます。

しかし、差押えにはルールがあり、収入全額が取られるわけではありません。とはいえ生活への負担は大きく、放置するほど状況は悪化します。

早めに返済を再開するか、債務整理で立て直しを図ることで、給与差押えを回避する道はまだ残されています。まずは弁護士に相談することをおすすめします。