
起業でできた借金であっても、基本的には自己破産による借金の免責は認められます。
ただし、個人事業主、法人の代表者いずれの場合であっても、自己破産の手続きは通常より複雑なものとなるため注意が必要です。
本記事では、起業失敗でできた借金で自己破産が認められる理由、起業失敗による自己破産の手続き方法、自己破産以外で借金問題を解決する方法などを解説します。
起業による借金問題でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
起業失敗でできた借金も自己破産できる
起業失敗が原因の借金は、免責不許可事由に当たらないため、基本的には自己破産による免責が認められます。
免責不許可事由とは、自己破産による免責が認められなくなる事情のことです。免責不許可事由の具体例としては、次のようなものが挙げられます。
- 不当な債務負担行為を行った
- 偏頗弁済(特定の債権者だけを優先して返済すること)を行った
- 浪費やギャンブルが原因の借金
- 破産手続きにおいて裁判所に虚偽の説明をした など
起業の失敗による借金はやむを得ないもので、免責不許可事由のいずれにも該当しません。そのため、起業失敗でできた借金も問題なく自己破産できます。
ただし、借金の主な原因が起業の失敗であっても、浪費やギャンブルをしていた場合には免責不許可事由があると判断される可能性はあります。
起業失敗による自己破産の手続き方法
起業失敗による借金で自己破産する際の手続きは、個人事業主の場合と法人の場合とで異なります。ここでは、それぞれのケースに分けて自己破産の手続き方法を解説します。
個人事業主の場合
自己破産の手続きは、破産手続きの開始と同時に手続きが終結する「同時廃止事件」と管財人が選任されて財産の調査や配当手続きが進められる「管財事件」に分けられます。
個人事業主の自己破産では、事業における金銭のやり取りや取引先への配当などを進める必要があるため、管財事件となるのが通常です。
個人事業主の自己破産で弁護士を代理人として選任している場合、少額管財を運用している裁判所では手続きが簡略化された「少額管財事件」として扱われます。
少額管財事件と通常の管財事件の主な違いは次のとおりです。
| 通常の管財事件 | 少額管財事件 | |
| 予納金の額 | 50万円程度 | 20万円程度 |
| 手続きにかかる期間 | 4か月から1年ほど | 4か月から5か月ほど |
管財事件では、申立の際に管財人報酬などに充てられる予納金を収める必要があります。
少額管財の場合でも、自己破産を検討している方にとっては安い金額とは言えないため、費用の準備方法についてあらかじめ考えておく必要があります。
法人の場合
法人として事業を行っていた場合、法人と個人の財産は区別されるため、法人のみを破産させることも可能です。
しかし、法人の代表者は法人の債務の連帯保証人となっているケースが多く、法人破産と個人の自己破産を同時に申し立てることが多くなっています。
法人破産の場合でも、規模が小さな会社では少額管財が採用されています。法人破産では、通常の管財事件で約70万円、少額管財で約20万円の予納金が必要です。
法人と個人の破産を同時に進める場合でも、予納金や弁護士費用などは個別にかかります。
少額管財の場合でも、それぞれの予納金と弁護士費用を合わせると最低でも100万円程度は準備しなければなりません。
自己破産以外で借金問題を解決する方法
起業失敗でできた借金問題を解決する方法は、自己破産だけではありません。借金の額や事業の状況によっては、任意整理や個人再生の方が適しているケースもあります。
ここでは、任意整理と個人再生(民事再生)の具体的な内容について解説します。
任意整理
任意整理は、債権者と直接交渉し、借金の額や返済期間を見直す手続きです。
多くの場合、任意整理の交渉に成功すると、借金の遅延損害金や利息がカットされて、元本のみを原則3年程度で返済することになります。
任意整理には、手続きが簡単で費用も安く済むというメリットがあります。
任意整理は、裁判所を通さずに手続きを進められるので、手続きにかかる期間は1か月程度です。費用も1社あたり3〜5万円程度で済みます。
任意整理の場合、元本の返済を続ける必要はありますが、返済を継続できる収入があるなら、借金問題の解決に適した方法と言えます。
個人再生(民事再生)
個人再生は、裁判所で再生計画案を認可してもらうことで、借金の額を5分の1から10分の1程度にまで減額できる手続きです。
法人の場合には、民事再生によって事業を継続したまま、再建を目指せます。
借金の額や事業の状況によって破産を回避し、事業を立て直せる見込みがある場合は、個人再生や民事再生を選択するのがおすすめです。
事業失敗の借金問題は弁護士へ相談を
事業失敗の借金問題を解決するには、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すると、借金の額や事業の状況などを踏まえ、最適な解決方法を提案してもらえます。
自己破産を選択する場合でも、弁護士に依頼することなく手続きを進めるのは難しいでしょう。弁護士に依頼することで、少額管財として扱われ、結果的に費用を抑えられるケースもあります。
借金問題の解決に向けて何から始めればよいか迷っている方は、まず弁護士へ相談してみてください。







