
交通事故の被害にあった場合、加害者に対して損害賠償を行います。では、家族が交通事故の被害にあって亡くなってしまった場合、誰がどのような根拠で加害者に対して請求するのでしょうか。
本記事では家族が交通事故被害で死亡した場合の損害賠償請求について解説します。
家族が交通事故被害で死亡した場合の損害賠償請求権
家族が交通事故被害で死亡した場合、損害賠償請求権はどのようになるのでしょうか。
被害者本人の損害賠償請求権が相続人に相続される
被害者本人の損害賠償請求権が相続人に相続されます。
交通事故の被害者は、交通事故の加害者に対して、交通事故で被った被害について、民法第709条の不法行為損害賠償請求権の規定をもとに、損害賠償請求ができます。被害者が生存していれば被害者が加害者(通常は加害者の保険会社)と示談をして、賠償金を手にすることになります。
しかし、被害者が亡くなった場合、被害者本人と示談をすることができなくなります。この場合、損害賠償請求権は相続人が相続することになります。そのため、損害賠償請求は相続人が行うことになります。
被害者の家族に固有の損害賠償請求権も別にある
なお、相続人が相続する損害賠償請求権のほかに、家族に固有の損害賠償請求権があります。
民法第711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定しています。たとえば被害者を交通事故で亡くした場合で、被害者に父母・配偶者・子がいる場合には、被害者本人の損害賠償請求権は相続人である配偶者・子が相続し、父母は相続人とはなりませんが、この民法第711条に規定されている固有の損害賠償請求権によって損害賠償請求ができます。
家族が交通事故で死亡した場合に問題となる損害賠償の内容
交通事故で損害賠償請求をするといっても、治療費・入院費・慰謝料など様々な細かい内容の金額が問題となります。死亡事故の場合には次の費用の請求ができます。
- 治療費:病院で治療を受けるのにかかった費用
- 入通院慰謝料:入院や通院を余儀なくされたことに対する慰謝料(しばらく生存して治療していた場合)
- 休業損害:仕事を休んだことに対する休業損害(しばらく生存して治療していた場合)
- 死亡慰謝料:亡くなったことに対する慰謝料
- 死亡逸失利益:亡くなった人が得られたであろう利益
- 葬儀費用:葬儀にかかった費用など
とくに死亡事故で問題となる、死亡慰謝料・死亡逸失利益・葬儀費用について確認しましょう。
死亡慰謝料
交通事故で被害者が亡くなった場合の慰謝料が死亡慰謝料です。
上述したように、被害者本人にも慰謝料が発生し、その分は相続人が相続します。また一定の家族固有の慰謝料があるのも上述した通りです。なお、上述の民法第711条には「、被害者の父母、配偶者及び子」だけが規定されています。
しかし、たとえば同居していたのが祖父母だけであるようなケースや、被害者が幼い場合で兄弟姉妹と一緒に育っていたというような場合、規定されている以外の親族でもケースによっては慰謝料が認められることがあります。
自賠責保険からは次のような基準で慰謝料が支払われます。
自賠責基準 | 金額 |
被害者本人分 | 400万円 |
請求する人が1人 | 550万円 |
請求する人が2人 | 650万円 |
請求する人が3人以上 | 750万円 |
被害者に扶養されている人がいる場合 | 200万円 |
示談交渉で慰謝料の計算をする際にもっとも高い金額となる裁判所基準では次の金額が請求可能です。
被害者の属性 | 金額 |
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他 | 2,000万円~2,500万円 |
以上が基本となって、交通事故の内容や被害者の属性などによって、増額・減額することになります。
死亡逸失利益
亡くなった人が得られたであろう利益が死亡逸失利益です。
被害者は、交通事故で死亡しなければ、仕事をして収入を得るなどしていたはずです。その分が死亡逸失利益です。もちろん亡くなるまでには生活費でかかる分もありますし、将来給与として支払われるであろう分を前もって支払ってもらう場合の金利の調整などが必要です。そのためその計算は次の通り非常に複雑です。
基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
ライプニッツ係数は国土交通省のホームページに掲載されてます。
就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省ホームページ(URL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf)
葬儀費用
葬儀などにかかる費用が葬儀費用です。
自賠責保険からは100万円が、示談交渉をする場合には最大150万円の範囲で実際にかかった金額が補填されます。
まとめ
本記事では家族が交通事故被害で死亡した場合の損害賠償について解説しました。
被害者が亡くなった場合には、被害者の損害賠償請求権が相続人に相続されるとともに、一定の家族に固有の損害賠償請求を請求します。もっともその内容は非常に複雑である上に、法律・交渉のプロである保険会社との交渉をしなければなりません。理不尽な示談を強いられないように、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。