後遺障害等級とは?等級や慰謝料をわかりやすく解説

後遺障害等級とは?等級や慰謝料をわかりやすく解説

交通事故で後遺症が残るような大きな怪我をした場合に後遺障害等級認定を行います。そもそも後遺障害等級とはどのようなもので、示談金や慰謝料とはどのような関係にあるのでしょうか。

本記事では後遺障害等級とはどのようなものか、慰謝料・示談金との関係について解説します。

後遺障害等級とは

後遺障害等級とは、自賠責保険の請求に際して、交通事故による怪我で残った後遺症の重さに応じて設定された等級のことをいいます。

交通事故で怪我をした場合に、怪我によって生じた症状が治療をしても元に戻らないことがあります。このような症状のことを一般的に後遺症といいます。後遺症について自賠責保険では後遺症をその重篤度に応じて後遺障害等級として設定して、認定された等級に応じて保険金を支払うという仕組みをとっています。

後遺障害等級と支払われる賠償金それぞれは次の通りとなっています。

自動車損害賠償保障法施行令別表第一

等級介護を要する後遺障害保険金額
第1級1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの4,000万円
第2級1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの3,000万円

自動車損害賠償保障法施行令別表第二

等級後遺障害保険金額
第1級1 両眼が失明したもの2 咀嚼及び言語の機能を廃したもの3 両上肢をひじ関節以上で失つたもの4 両上肢の用を全廃したもの5 両下肢をひざ関節以上で失つたもの6 両下肢の用を全廃したもの3,000万円
第2級1一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの2両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの3両上肢を手関節以上で失つたもの4両下肢を足関節以上で失つたもの2,590万円
第3級1一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの2咀嚼又は言語の機能を廃したもの3神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの4胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの5両手の手指の全部を失つたもの2,219万円
第4級1両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの2咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの3両耳の聴力を全く失つたもの4一上肢をひじ関節以上で失つたもの5一下肢をひざ関節以上で失つたもの6両手の手指の全部の用を廃したもの7両足をリスフラン関節以上で失つたもの1,889万円
第5級一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの2神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの3胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの4一上肢を手関節以上で失つたもの5一下肢を足関節以上で失つたもの6一上肢の用を全廃したもの7一下肢の用を全廃したもの8両足の足指の全部を失つたもの1,574万円
第6級1両眼の視力が〇・一以下になつたもの2咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの3両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの4一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの5脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの6一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの7一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの8一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの1,296万円
第7級1一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの2両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの3一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの4神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの5胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの6一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの7一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの8一足をリスフラン関節以上で失つたもの9一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの10一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの11両足の足指の全部の用を廃したもの12外貌に著しい醜状を残すもの13両側の睾丸を失つたもの1,051万円
第8級1一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの2脊柱に運動障害を残すもの3一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの4一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの5一下肢を五センチメートル以上短縮したもの6一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの7一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの8一上肢に偽関節を残すもの9一下肢に偽関節を残すもの10一足の足指の全部を失つたもの819万円
第9級1両眼の視力が〇・六以下になつたもの2一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの3両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの4両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの5鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの6咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの7両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの8一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの9一耳の聴力を全く失つたもの10神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの11胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの12一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの13一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの14一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの15一足の足指の全部の用を廃したもの16外貌に相当程度の醜状を残すもの17生殖器に著しい障害を残すもの616万円
第10級1一眼の視力が〇・一以下になつたもの2正面を見た場合に複視の症状を残すもの3咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの4十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの5両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの6一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの7一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの8一下肢を三センチメートル以上短縮したもの9一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの10一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの11一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの461万円
第11級1両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの2両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの3一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの4十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの5両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの6一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの7脊柱に変形を残すもの8一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの9一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの10胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの331万円
第12級1一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの2一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの3七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの4一耳の耳殻の大部分を欠損したもの5鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの6一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの7一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの8長管骨に変形を残すもの9一手のこ指を失つたもの10一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの11一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの12一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃し13局部に頑固な神経症状を残すもの14外貌に醜状を残すもの224万円
第13級1一眼の視力が〇・六以下になつたもの2正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの3一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの4両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの5五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの6一手のこ指の用を廃したもの7一手のおや指の指骨の一部を失つたもの8一下肢を一センチメートル以上短縮したもの9一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの10一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの11胸腹部臓器の機能に障害を残すもの139万円
第14級1一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの2三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの3一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの4上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの5下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの6一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの7一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの8一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの9局部に神経症状を残すもの75万円

例えば、交通事故で頭部を強打し、遷延性意識障害(いわゆる植物状態)になってしまった場合には別表1の第1級に認定され、自賠責保険からは4,000万円の保険金が支払われます。

後遺障害等級と慰謝料・示談金との関係

後遺障害等級と慰謝料・示談金との関係はどうなっているのでしょうか。

後遺障害等級と慰謝料の関係

慰謝料とは、精神的苦痛を負った被害者に対してこれを慰めるために支払われるものです。後遺症を負った場合には、以後後遺症を抱えて生きていく精神的苦痛を負うので、後遺障害慰謝料が被害者に請求できます。後遺障害等級は自賠責保険の請求のためのものであり、慰謝料の額に法的には影響しませんが、その金額を見積もるにあたって何級の後遺障害等級に認定されたかが参考にされ、事実上大きな影響を及ぼします。そのため、後遺障害等級は慰謝料の請求に事実上影響し、重要です。

後遺障害等級と示談金との関係

示談金とは、当事者が裁判をしないで解決するために支払う金銭のことをいいます。上述の後遺障害慰謝料は示談金の内訳の1つです。

後遺障害等級は上述のように自賠責保険を請求するためのもので、示談金と直接関係はしません。しかし、示談金の内訳の1つである後遺障害慰謝料の額に影響するなど、示談金全体との関係でも影響を及ぼします。

後遺障害等級の認定の重要性

後遺障害等級は交通事故の時間全般に大きな影響を及ぼすので重要です。どのような重要か確認しましょう。

自賠責保険の額が異なってしまう

まず、自賠責保険から補償される額が異なります。

例えばむちうちの場合、後遺障害等級に認定されない・局部に神経症状を残すものとして第14級に認定される・局部に頑固な神経症状を残すものとして第12級に認定される3つのパターンが考えられます。後遺障害等級に認定されなければ後遺症についての保険金は降りませんし、第14級に認定されば75万円が、第12級に認定されれば224万円が支払われることになり、その金額には大きな差があります。

後遺障害慰謝料の額が大きく異なる

後遺障害慰謝料の額が大きく異なります。

後遺障害等級は加害者との示談の際にも参考にされます。第14級に認定された場合に、裁判所で後遺障害慰謝料として認定される額は110万円で、第12級に認定された場合の慰謝料が290万円です。どの等級に認定されるかは後遺障害慰謝料の額に大きく影響します。

参考:後遺障害等級による裁判基準の慰謝料

後遺障害等級裁判基準
第1級    2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

まとめ

本記事では後遺障害等級とはどのようなものか、等級の内容や慰謝料について解説しました。

どの等級に認定されるかによって自賠責保険から支払われる額のみならず、慰謝料の額にも大きく影響します。弁護士は後遺障害等級認定を有利にするための活動にも尽力できます。治療段階から相談して、有利な等級認定を受けるようにしましょう。