

債務整理をしようと思っています。借金の額がかなり多く、自己破産が妥当かと思うのですが、家族への影響が怖いです。

法的に直接的な影響はありませんが、間接的な影響が避けられないことがあります。どんなことが心配か教えてもらってもいいですか?
自己破産は債務者本人が行う法的手続きですが、「家族に迷惑がかかるのではないか」「信用情報が家族にも影響するのでは」と不安を抱く方は少なくありません。
しかし、自己破産は「個人単位」の手続きであり、法律上は家族に直接的な影響を与えることはありません。ただし、間接的な影響は避けられない場合があります。
本記事では、自己破産が家族に与える法的な影響と、間接的な生活上の影響について詳しく解説します。
法的な影響はない
自己破産は、あくまで債務者個人に対して適用される法的手続きであり、家族への影響はありません。
また、配偶者や子ども、同居親族などが連帯保証人になっていない限り、借金の返済義務を家族が負わされることはありません。
官報に掲載されるのは本人のみで家族には影響しない
自己破産をすると、破産手続きの開始決定や免責許可決定が「官報」に掲載されます。官報とは国が公に広報するための機関誌で、だれでも閲覧が可能です。掲載されるのは破産申立人本人の氏名や住所などであり、家族の名前が載ることは一切ありません。
また、官報は一般人が日常的に目にすることは少なく、閲覧には手間がかかるため、勤務先や知人に知られるリスクも限定的です。したがって、官報掲載によって家族が社会的に不利益を受ける心配はほぼないといえるでしょう。
職業制限・住居移転の制限も本人のみで家族には影響しない
自己破産手続き中には、一定の職業に就けない「職業制限」や、裁判所の許可なく住居を移転できない「住居移転の制限」が生じますが、これらはすべて破産者本人に限られる制約です。
たとえば保険募集人、警備員、宅地建物取引士など、特定の業種には制限がかかることがありますが、家族の就業には何ら影響しません。
同様に、家族が自由に引っ越しをしたり転職したりすることも問題ありません。破産者本人の行動に一定の制限があるとはいえ、家族にまで適用はされません。
原則として家族名義の財産には影響しない
自己破産では、債務者本人の財産が処分の対象となりますが、原則として家族名義の財産には影響しません。たとえば、配偶者や子ども名義の預貯金や不動産、車などは本人の資産とはみなされないため、破産手続きで処分されることはありません。
ただし、名義が家族でも実質的に本人の財産と判断される場合は、破産管財人によって調査される可能性があります。形式だけの名義変更や財産の隠匿行為は免責不許可事由にもなり得るため、慎重な対応が必要です。
結婚には影響しない
自己破産をしたからといって、結婚する権利が制限されることはありません。
民法上、自己破産は結婚の要件や効力に一切影響を与えず、結婚は自由に行うことができます。破産歴が戸籍に記載されることもないため、婚姻届を出す際に自己破産の有無が問題になることは基本的にありません。
間接的な影響
法律上、家族には直接的な影響がないといっても、生活面では間接的な影響が出ることもあります。
本人の財産を失うことによる間接的な影響
自己破産では、一定額以上の現金や預貯金、不動産、車などの資産が原則として処分の対象となります。これにより、破産者本人だけでなく、同居家族にも生活上の不便が生じることがあります。
たとえば、本人名義の自家用車が通勤や通院に使われていた場合、それが処分されることで家族全体の生活に影響が出ることもあります。
また、住宅を所有している場合には、それを手放す必要があるため、家族の住居にも影響が及ぶでしょう。
郵送物の制限に関する間接的な影響
自己破産の手続き中は、郵送物が一度破産管財人のもとに送られ、内容を確認されてから本人に送られます。
対象となる郵送物は手続きを行う本人のものですが、郵送物が連名となっているような場合には同様に中を確認されることになります。
家族が保証人になっている場合の影響
家族だからといって債務を支払う義務はありませんが、借金について家族が保証人になっている場合には、債権者から請求を受けることになります。
対象となっている債務の額が大きい場合には、家族も債務整理を検討しなければならないことがあります。
信用情報についての影響
自己破産をすると、信用情報機関にその事実が一定期間(通常7年)登録され、いわゆる「ブラックリスト」という状態になります。
法的な影響とは別に、どのような不利益が生じる可能性があるか確認しましょう。
家族の信用情報には影響しない
自己破産による信用情報への登録は、破産した本人だけに限定されており、家族の信用情報には一切影響を及ぼしません。
たとえば、同居の配偶者や親、子どもがクレジットカードを新規に申し込んだり、ローンを組んだりする際にも、家族の誰かが破産しているという理由で審査に落ちることはありません。
家族カードは利用できなくなる
自己破産者が配偶者や親族のクレジットカードに付帯して使っていた「家族カード」は、破産手続きによって利用が停止または解約される可能性が高くなります。
家族カードは契約者の与信枠を利用して発行されるものですが、利用者に信用上の問題が発生すると、カード会社が安全策としてカードの利用を制限します。家族がこの家族カードを利用していた場合には利用ができなくなるので注意が必要です。
保証人になることができなくなる
自己破産をした人は、信用情報に事故情報が記録されることで、信用情報をもとに審査がされる取引ができません。これは、本人がお金を借りる場合だけでなく、保証人になることもできなくなることを意味します。
家族の債務の保証人になることを求められても、これに応じることができません。家族が進学するにあたって親が保証人となるような場合や、子がローンを組む際に親が保証人になることもできないため、注意が必要です。
まとめ
自己破産は個人に適用される手続きであり、原則として家族に法的な影響はありません。官報への掲載や職業制限も本人のみが対象で、家族名義の財産や信用情報に直接的な支障が生じることは基本的にありません。
しかし、自己破産によって本人の財産が処分されたり、信用情報に事故情報が登録されることで、家族にも間接的な影響が及ぶ場合があります。特に、家族が保証人になっている場合には、その負担が現実に発生する可能性があるため注意が必要です。
不安がある場合は、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。