自己破産手続き中にしてはいけないこと

自己破産手続き中にしてはいけないこと

借金の返済が困難になり、自己破産を検討している方の中には「手続き中に何をしてはいけないのか分からない」と不安に感じている方も多いでしょう。

自己破産は、借金を法的にゼロにできる強力な制度ですが、一定のルールを守らなければ免責(借金の帳消し)が認められない可能性があります。

本記事では、自己破産の申立前申立後にやってはいけない行動を具体的に解説します。

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申立前にやってはいけないこと

自己破産を申立てる前から、一定の行動は慎まなければなりません。誤った行動は手続きに悪影響を及ぼし、最悪の場合、免責が認められなくなる可能性もあります。

弁護士費用の滞納

自己破産を依頼した弁護士への費用の支払いを滞納するのは避けましょう。弁護士費用の滞納をすると手続きを進められません。延滞が続くと弁護士は受任している自己破産手続きを辞任することになります。

債権者から改めて督促を受けることになり、改めて自己破産手続きを依頼しなければならなくなります。仕事ができなくなったなど何らかの事情で弁護士費用の支払いができなくなった場合には、早めに弁護士と連絡を取り、今後の支払いについて協議をしましょう。

特に支払えなくなって弁護士からの連絡を無視すれば、弁護士が辞任する可能性が高まります。

手続きへの非協力

自己破産の申立てには弁護士への協力が不可欠です。

資料提出の遅れや質問への無回答など、協力姿勢を欠いた場合、弁護士は申立てができなくなってしまうので、結果として依頼されている自己破産を辞任することになります。

弁護士への虚偽申告

弁護士に対して収入・資産・借金の内容などを偽って伝えることは厳禁です。虚偽の申告は、破産手続きそのものの信用を失わせ、裁判所の信頼も損ねます。

結果として、免責が不許可となり借金の帳消しが認められないことにもなりかねません。正確な情報を共有することで、適切なアドバイスや対応が受けられます。どんな内容でも正直に申告することが大切です。

新たな借入

自己破産の準備中に新たな借入をするのは厳禁です。免責を得る前に借金を増やす行為は、返済の意思がないまま資金を得たと判断され、詐欺罪に問われる可能性があります。

また、新たな債権者に不利益を与える結果にもなり、免責不許可事由となり手続きに悪影響を及ぼします。生活費に困っても、まずは弁護士や支援機関に相談し、正当な支援方法を探ることが重要です。

一部の債権者への返済(偏頗弁済)

一部の債権者にだけ返済を続ける行為(偏頗弁済)は、自己破産の公正性を損なうため禁じられています。たとえば「家族にだけ返す」「保証人に迷惑をかけたくない」といった理由でも、債権者間で不平等な扱いは許されません。

発覚すれば免責が認められないだけでなく、手続きが打ち切られる可能性もあります。借金整理はすべての債権者を平等に扱うのが原則であり、例外はありません。


資産の隠匿

自己破産において、預貯金・車・保険などの資産を隠すことは重大な違反です。自己破産手続きでは、債務者がすべての財産を正確に申告し、清算に協力することが求められています。

隠匿行為は免責不許可事由となるだけでなく、悪質な場合は詐欺破産罪で刑事処分を受けるおそれもあります。「少額だからバレないだろう」と考えるのは危険であり、誠実な開示が最も安全な対応です。

自己破産申立後

自己破産を申し立てた後は、裁判所の監督下に入るため、自由な行動が制限されます。

誤った行動は、手続きの進行や免責に大きく影響するため注意が必要です。

住居の移転(旅行・出張も含む)

自己破産の申立て後に無断で住居を移転することや長期出張に出ることは原則として禁止されています。裁判所の許可なく住居を移転すると、破産法第252条第1項第11号の「この法律に定める義務に違反したこと」に該当し、免責不許可事由となります。住居を移転する場合には、必ず裁判所の許可を受ける必要があります。

この住居の移転は裁判所への説明義務を確保するためのものであり、旅行や出張も対象に含まれます。数日でも家を空ける場合には必ず弁護士に相談しましょう。

裁判所・破産管財人と面接の期日に出頭しない

裁判所や破産管財人から指定された期日に出頭しないことは、手続きへの重大な不協力とみなされます。裁判所での免責審尋や債権者集会、破産管財人との面談は、財産状況や免責の判断に欠かせない重要な手続きです。

正当な理由なく欠席すると、免責が認められなかったり、手続きが中断されたりする可能性もあります。体調不良ややむを得ない事情がある場合でも、必ず事前に弁護士や裁判所・破産管財人に連絡しましょう。

裁判所・破産管財人に対して虚偽の申告をする

自己破産の手続きにおいて、裁判所や破産管財人に対して嘘の申告をすることは絶対に避けるべきです。資産・負債・生活状況に関する虚偽申告は、免責不許可事由に該当し、借金が帳消しにならないおそれがあります。

さらに、故意に嘘をついたと認定された場合には、詐欺破産罪として刑事責任を問われることもあります。正確な情報をもとに手続きを進めることが、再出発への第一歩です。

まとめ

自己破産手続きでは、申立前後を問わず、慎重かつ誠実な行動が求められます。弁護士や裁判所への虚偽申告、資産の隠匿、一部の債権者への返済、無断の移転などは、すべて手続きの妨げとなり、最終的には免責が認められない原因となります。

自己破産は再出発のための制度です。その恩恵を受けるには、ルールを守り、誠実に協力する姿勢が何より重要です。判断に迷った際には、必ず弁護士に相談しましょう。