Webサイトの保守契約、更新や事故対応の責任は明確ですか?|仙台の弁護士が解説

「ホームページの保守を任されているが、どこまで対応する義務があるのか分からない」
「サーバーの更新は別会社の担当なのに、顧客から対応を求められた」
「サイトの不具合や情報漏えいが起きたとき、誰が費用を負担するのか決まっていない」

Web制作・保守の現場では、契約上の業務範囲と、顧客が期待する対応にずれが生じることがあります。

とくに、制作会社、保守会社、サーバー会社などが分かれている場合、更新や事故対応の担当が曖昧になりがちです。

この記事では、Web制作・保守会社の経営者・担当者に向けて、契約書で確認しておきたい項目と、トラブルが起きた際の対応を解説します。

「保守一式」という契約だけでは、認識が食い違うことがあります

Webサイトを動かすには、WordPressなどのCMS、プラグイン、PHP、サーバーなど、複数の要素が関わります。

顧客が「保守契約を結んでいるので、すべて管理してもらえる」と考えていても、保守会社は「掲載内容の修正とCMSの更新だけが対象」と認識しているかもしれません。

この違いが、緊急時の追加費用や対応の遅れをめぐるトラブルにつながります。

まずは、契約書だけでなく、見積書、仕様書、提案書、メールなども含めて、何を引き受けているのかを確認することが大切です。

Webサイトの保守契約で確認したい7つの項目

1.更新・管理する対象と担当者

「更新作業を行う」とだけ記載せず、対象を具体的に整理しましょう。

  • 対象
  • 契約で確認すること
  • CMS・プラグイン
  • 情報収集、更新作業、更新後の確認を誰が行うか
  • PHP・OS・サーバー
  • 制作会社、保守会社、サーバー会社のどこが管理するか
  • 独自プログラム
  • 不具合修正やバージョン変更への対応を含むか
  • ドメイン・証明書
  • 更新手続きと費用負担を誰が担うか
  • バックアップ
  • 保存する対象、頻度、保存期間、復元作業の担当
  • 管理画面・アカウント
  • 権限の付与・削除、認証情報の管理方法

他社が担当する作業については、連絡窓口と依頼方法も決めておくと、緊急時に動きやすくなります。

2.月額料金に含まれる業務と追加費用

保守料金に含まれる作業と、別途見積もりとなる作業を区別します。

例えば、通常の更新作業と、大幅な改修が必要になるバージョン変更では、作業量が異なります。

次のような項目を整理しておきましょう。

  • 月額料金に含まれる作業・時間・回数
  • 緊急対応や休日対応の追加料金
  • 検証環境での動作確認の費用
  • 更新に伴う改修や復旧の費用
  • 外部専門業者への調査依頼費用

追加作業の承認方法も定めておくと、「頼んでいない」「費用がかかると聞いていない」という争いを避けやすくなります。

3.脆弱性が公表された場合の対応

ソフトウェアの弱点である「脆弱性」が公表された際には、情報の確認から更新まで、複数の作業が必要になります。

契約では、次の役割を整理しておくことが重要です。

  • 誰が脆弱性情報を確認するか
  • 対象となるシステムかを誰が調べるか
  • 顧客への連絡と対応方針の決定を誰が行うか
  • 更新作業を誰が承認・実施するか
  • 更新後に何を確認するか

対応時間の定めは、実際の人員体制や外部サービスの条件に合わせる必要があります。「必ず即時に修正する」など、実行が難しい約束になっていないかも確認しましょう。

4.更新に伴う停止・不具合への対応

セキュリティのための更新であっても、既存の機能が動かなくなることがあります。

作業前のバックアップ、検証の範囲、停止時間の案内、問題が生じた場合の復旧手順について、あらかじめ合意しておくことが大切です。

予約・決済・問い合わせなど、事業に直結する機能は、顧客と確認項目を共有しておきましょう。

5.不正アクセス・情報漏えいが疑われる場合の連絡と協力

事故が疑われるときは、技術的な調査に加え、顧客や関係者への連絡、法令上の対応を検討する必要があります。

契約では、緊急連絡先、連絡方法、調査への協力、ログなどの資料の取扱い、費用負担の決定方法を整理します。

一定の個人データの漏えい等では、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が必要です。制作会社・保守会社・顧客それぞれの立場や取扱情報を確認し、必要な対応を判断します。

なお、脆弱性が見つかっただけで、直ちに情報漏えいが発生したと決まるわけではありません。確認された事実と、まだ分かっていないことを分ける必要があります。

6.損害賠償の範囲と責任の制限

事故が起きた場合、復旧費用、調査費用、営業への影響などについて、費用負担が問題になることがあります。

責任の有無や範囲は、契約内容だけでなく、具体的な義務、対応経緯、損害との因果関係などによって異なります。

契約書に免責条項があっても、必ず責任を免れるとは限りません。損害賠償の対象・上限・例外について、取引内容に合った条項になっているか確認しましょう。

7.契約終了時の引継ぎ

保守会社の変更時に、管理者情報やデータの引継ぎが進まず、サイト運営に支障が出ることがあります。

契約終了時に渡す情報、作業期限、引継ぎ費用、データの返却・削除方法を定めておきましょう。顧客が所有するアカウントと、保守会社が契約するサービスも区別する必要があります。

ひな形を使う場合も、実際のサービスに合わせた調整が必要です

契約書のひな形は、確認事項を整理する出発点になります。IPAも「情報システム・モデル取引・契約書」を公開しています。

ただし、制作のみを受ける会社と、サーバー管理まで引き受ける会社では、必要な契約内容が異なります。

ひな形をそのまま使うのではなく、自社の業務、料金、対応時間、再委託先との関係に合わせて確認することが大切です。

すでにトラブルが起きている場合は、資料と対応経緯を整理しましょう

顧客から損害賠償を求められた場合や、追加費用について争いになった場合は、まず次の資料を整理してください。

  • 契約書、見積書、仕様書、提案書
  • 顧客とのメール・チャット
  • 更新や障害対応の記録
  • サーバー会社・再委託先との契約
  • 相手方から届いた請求書や通知書

技術的な調査や復旧が必要な場合は、その担当者とも連携します。ログなどの証拠が失われないよう、保全方法を確認しながら進めることも重要です。

責任や金額について返答を求められているときは、回答前に弁護士へ相談することで、確認すべき点を整理できます。

弁護士に相談できること

Web制作・保守をめぐる法律相談では、例えば次の内容を検討できます。

  • 制作契約書・保守契約書の作成や点検
  • 業務範囲と追加料金の条項の見直し
  • 再委託先との契約や責任分担の整理
  • 情報漏えい等に関する報告・通知の法的検討
  • 顧客への説明文や回答書の確認
  • 損害賠償請求を受けた場合の交渉方針
  • 継続的な契約相談に対応する顧問契約

技術的な安全性の診断、侵入調査、更新・復旧作業は、技術専門業者による対応が必要です。弁護士は、契約や法令上の義務、交渉・対外対応を法的な観点から検討します。

仙台・宮城でWeb制作・保守契約の見直しをお考えの方へ

契約書を見直すきっかけは、トラブルが起きたときだけではありません。

保守サービスを始めるとき、料金を変更するとき、顧客や再委託先が増えたときも、業務内容と契約を確認する機会です。

仙台青葉ゆかり法律事務所では、Web制作・保守に関する契約書や、取引上のトラブルについてのご相談を受け付けています。土日祝日も相談に対応していますので、希望日時をお知らせください。相談日時は予約状況により調整します。

お問い合わせの際は「Web制作・保守契約について相談したい」とお伝えください。

契約書の有無、現在のサービス内容、困っていること、回答期限などをお知らせいただくと、ご案内がスムーズです。相談料や契約書点検・交渉等の費用は、ご予約・ご依頼の前にご確認ください。

弁護士法人仙台青葉ゆかり法律事務所
代表弁護士:前田 啓吾
電話:022-797-8355

※本記事は一般的な説明です。責任の有無や必要な対応は、契約内容や個別の事情によって異なります。

参考資料
IPA:情報システム・モデル取引・契約書(第二版)
個人情報保護委員会:漏えい等の対応とお役立ち資料