0労働災害における後遺障害認定の申請について

仕事で怪我や病気になった場合や、通勤中に怪我をした場合、労災保険給付を受けることができます。

労災保険給付にはいくつかの種類がありますが、怪我や病気が重篤な場合、後遺症が残った場合に問題になるのが障害(補償)等給付などで、その給付を受けるために欠かせないのが後遺障害等級認定です。

本記事では後遺障害等級認定の申請について解説します。

1.労働災害における後遺障害等級認定とは

労働災害(労災)における後遺障害等級認定とは、後遺症が残った場合に障害(補償)等給付などの金額を決定するために、残ってしまった後遺症についての後遺障害等級の認定のことをいいます。

労災に被災した場合に、怪我や病気が重い場合、後遺症が残る場合があります。

後遺症が残ってしまった場合、障害(補償)等給付などを受けることができる場合がありますが、その内容は後遺症がどれだけ重篤かに応じて後遺障害等級によって決めることになります。

後遺障害等級認定は、この後遺障害等級に認定してもらうもので、労災に被災した人で後遺症が残ったしまった場合には、非常に重要なものになります。

2.後遺障害等級に応じた給付内容

では労災に被災して残った後遺症が後遺障害等級認定された場合の給付内容を確認しましょう。

障害等級障害(補償)等給付障害特別支給金障害特別年金障害特別一時金
第1級年金給付基礎日額の313日分一時金342万円年金給付基礎日額の313日分
第2級年金給付基礎日額の277日分一時金320万円年金給付基礎日額の277日分
第3級年金給付基礎日額の245日分一時金300万円年金給付基礎日額の245日分
第4級年金給付基礎日額の213日分一時金264万円年金給付基礎日額の213日分
第5級年金給付基礎日額の184日分一時金225万円年金給付基礎日額の184日分
第6級年金給付基礎日額の156日分一時金192万円年金給付基礎日額の156日分
第7級年金給付基礎日額の131日分一時金159万円年金給付基礎日額の131日分
第8級一時金給付基礎日額の503日分一時金65万円一時金給付基礎日額の503日分
第9級一時金給付基礎日額の391日分一時金50万円一時金給付基礎日額の391日分
第10級一時金給付基礎日額の302日分一時金39万円一時金給付基礎日額の302日分
第11級一時金給付基礎日額の223日分一時金29万円一時金給付基礎日額の223日分
第12級一時金給付基礎日額の156日分一時金20万円一時金給付基礎日額の156日分
第13級一時金給付基礎日額の101日分一時金14万円一時金給付基礎日額の101日分
第14級一時金給付基礎日額の56日分一時金8万円一時金給付基礎日額の56日分

給付基礎日額とは、労災保険給付を計算するためのもので、労災が発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額をその期間の総日数で除して得た額をいいます。

例えば背中や首を強く打ったために、むちうちの症状が後遺症として残った場合、第12級あるいは第14級に認定されるか、全く認定されない、という可能性があります。

給付基礎日額が1万円だとすると、第12級に認定されれば上記で合計332万円が、第14級に認定されれば120万円が支払われ、認定されなければ障害(補償)等給付は全く支払われません。

そのため、後遺障害等級認定は後遺症が残ってしまった場合には重要です。

3.後遺障害等級認定の申請の流れ

後遺障害等級認定の申請は次のような流れでおこなわれます。

3-1.症状固定

後遺障害等級認定の申請は、症状固定の後におこなわれます。

症状固定とは、後遺症が治療をしてもこれ以上良くならない状態です。

症状固定によって後遺症をどう認定すべきかが確定するので、その後に後遺障害等級認定の申請をすることになります。

3-2. 請求書(申請書)を作成・添付書類を収集して労働基準監督署に申請をする

申請書を作成し、添付書類を収集して労働基準監督署に申請します。

申請書は、厚生労働省ホームページの「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousaihoken.html)でダウンロードができます。

添付書類として必要なのは次の2種類です。

労災用の後遺障害診断書

自己申立書(※障害の状態に関する申立書)

3-3 後遺障害等級の審査・認定

労働基準監督所で審査が行われ、その結果に基づいて認定がされます。

認定内容に不服がある場合には審査請求・再審査請求・裁判などの方法で不服申立てができます。

4.労働災害で後遺症が残った場合には会社への損害賠償ができる

後遺症が残る怪我を負った場合、障害(補償)等給付以外にも、療養(補償)等給付・休業(補償)等給付・介護(補償)等給付などの補償を受けられます。

それでも、休業(補償)等給付については補償は全額では無く、慰謝料も労災保険給付としては支払われません。

これらの損害については、会社に対して使用者責任(民法第715条)や安全配慮義務(労働契約法第5条)をもとに損害賠償請求ができます。

4.まとめ

本記事では、労働災害における後遺障害等級認定について解説しました。

後遺症が残ってしまった場合、その重篤度に応じて後遺障害等級認定が行われ、認定された等級に基づいて年金・一時金の形で支払いがされます。

認定される等級によっては受けられる補償が少なくなってしまい、その後の生活に影響します。

労災で後遺症が残ってしまった場合には、症状固定となる前の治療の段階から、弁護士に相談することをおすすめします。