労働災害発生から解決までの流れ

労働災害発生から解決までの流れ

仕事が原因で怪我や病気になった場合、または通勤途中に怪我をした場合を労働災害(略して労災)と呼びます。

では、この労働災害はどのような流れで解決するのでしょうか。本記事では、労働災害が発生してから解決に至るまでの手順を解説します。

労働災害の問い合わせ

労働災害発生から解決までの流れの概要

労働災害発生から解決までの流れは次の通りです。

労働災害発生から解決までの流れ
  1. 労働災害の発生・治療
  2. 治癒または症状固定
  3. 労災保険給付の申請
  4. 会社への損害賠償請求

それでは、それぞれの内容について確認してみましょう。

労働災害の発生・治療

まず労働災害が発生すると、怪我や病気の治療をおこないます。

労働災害を会社に届け出ると、会社は労働基準監督署に対して労働者死傷病報告書を提出します。

治癒または症状固定

怪我や病気が治癒するか、症状固定という状態となります。

怪我や病気は軽いものであれば元に戻りますが、重篤な怪我や病気によって後遺症が残ることがあります。後遺症が残る場合であっても一生治療費の支払いが受けられるわけではないので、どこかで区切りをつける必要があります。後遺症が残る場合、これ以上治療をしても良くならないという状態があり、この状態のことを症状固定といいます。

症状固定後の後遺症については、障害が残ことになった分の障害(補償)等給付の問題とされます。

労災保険給付の申請と審査

労災保険給付の申請を行います。申請は会社を通じて行うこともできますし、会社が協力してくれない場合には自分で請求することもできます。

後遺症がある場合には労災保険給付の申請の前提として、後遺症が後遺障害等級のどの等級に該当するかの認定を行います(後遺障害等級認定)。

会社への損害賠償請求

最後に会社への損害賠償請求を行います。

労働契約において会社は、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるように、必要な配慮をする義務を負っています(安全配慮義務・労働契約法第5条)。また、会社の従業員が労働者に損害を与えた場合には、その従業員を雇っている会社は損害賠償を負う義務があります(使用者責任・民法第715条)。

例えば、会社が長時間労働を強いたせいで心疾患にかかってしまった場合には安全配慮義務違反によって、上司による暴行やパワハラによって怪我をした場合には安全配慮義務違反・使用者責任いずれによっても会社が責任を負います。

労災保険では被った精神的苦痛に対する慰謝料や、休業した場合の休業(補償)給付の一部についての補償はないので、労災保険でカバーしきれない部分について損害賠償請求が可能です。

適切な解決のためのポイント

適切な解決のためのポイントには次のものがあります。

病院できちんと診てもらう

病院できちんと診てもらうようにしましょう。

例えば、建設現場で高いところから落ちて全身を強く打ったとします。このような事故が起こった直後は興奮状態にあり、痛みを感じないことがあります。また、仕事を休むことができない、迷惑をかけることができないなどの理由から、病院に行かずに我慢することもあります。

このような場合に病院で診てもらわずにしばらく放置してしまうことがあります。2~3日経つと次第に痛みやしびれ・めまいを感じることがあり、病院に行き、精密検査を受けるとむちうちになっているということが珍しくありません。

あまりにも時間が経ってしまった場合、起きた労働災害と症状との間の因果関係が否定されかねず、労災給付を受けられない結果となることがあります。

そのため、できれば無症状でも病院できちんと診てもらい、痛みやしびれを感じはじめたらすぐに病院で診てもらいましょう。

きちんと通院をする

通院期間中はきちんと通院をするようにしましょう。

ある程度治療が進むと、あまり良くならないので行っても意味がない、仕事を休むわけにはいかないと、通院を途中でやめてしまうことがあります。このような場合、後遺症が残った場合に後遺障害等級認定が難しくなることがあります。

きちんとした通院やリハビリを行い、症状の経過を細かく記録してもらうようにしましょう。

病院選びや医師への症状の伝え方に注意

病院選びや医師への症状の伝え方に注意しましょう。怪我であれば基本的には整形外科に通院するのですが、耳鳴りがあったりPTSDがある場合には、それぞれ耳鼻科・精神科や心療内科などにも通院する必要があります。

また、後遺障害等級の認定に、レントゲンだけではなくMRIによる画像診断が必要な場合には、MRI検査ができる病院に行く必要があります。

さらに、医師にはきちんと症状を伝える必要があります例えば、全身を強く打った際に右手をついて骨折したので、右手の治療ばかりしていたけども、実は首がむちうちになっているということもあります。この場合、医師に首の痛みについても検査してもらう必要があり、首が痛いこともきちんと伝える必要があります。

まとめ

本記事では、労働災害発生から解決までの流れと注意点について解説しました。

労働災害を適切に解決するためには、早めの治療計画的な通院会社との交渉、そして必要に応じた法的手続きが重要です。発生直後の行動が補償の可否に大きく影響しますので、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。