売春防止法とは?刑罰や構成要件について

売春防止法とは?刑罰や構成要件について

売春に関する法律として、売春防止法があります。売春に関連するさまざまな行為を処罰の対象としていますが、どのような行為が売春防止法違反として処罰されるのでしょうか。またその場合の刑罰はどうなっているのでしょうか。

本記事では売春防止法について解説します。

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売春防止法とは

売春防止法は、「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることに鑑み、売春を助長する行為等を処罰することによつて、売春の防止を図ることを目的」として、昭和32年4月1日に施行された法律です(売春防止法第1条)。

売春とは、「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義されています(売春防止法第2条)。売春防止法は、売春行為およびそれを助長する行為を禁止し、犯罪として刑事罰を定めています。

売春行為自体は禁止しているが犯罪とはしていない

売春防止法は売春行為自体を禁止していますが、刑事罰の対象とはしていません。

売春防止法第3条は「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。」と規定しており、売春行為・その相手となる行為を禁止しています。ただし、同条は他の行為と異なり刑罰を定めていないため、売春行為自体は処罰されません

ただし、児童買春については、児童買春・児童ポルノ禁止法第4条で禁止されており、5年以下の懲役または500万円以下の罰金という非常に厳しい刑罰が定められているため、注意が必要です。

売春防止法で犯罪とされる行為の構成要件と刑罰

売春防止法で犯罪とされる行為、その構成要件、および刑罰については次の通りです。

勧誘等(売春防止法第5条)

売春をする目的で次の行為をする場合、売春防止法第5条に違反します。

売春防止法第5条に違反する行為
  • 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
  • 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
  • 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

いわゆる「立ちんぼ」と呼ばれる行為は、本条に該当する可能性があります。

売春防止法第5条に違反すると、6か月以下の懲役または1万円以下の罰金が科されます。

周旋等(売春防止法第6条)

売春の周旋をする、売春の周旋をする目的で次の行為を行う場合、売春防止法第6条に違反します。

売春防止法第6条に違反する行為
  • 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
  • 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
  • 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

困惑等による売春(売春防止法第7条)

人を欺いたり、困惑させてこれに売春をさせたり、親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた場合には売春防止法第7条第1項に違反します。この場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

人を脅迫し、又は人に暴行を加えてこれに売春をさせた場合には売春防止法第7条第2項に違反します。この場合には、3年以下の懲役のみか、3年以下の懲役及び10万円以下の罰金両方が科されます。

売春防止法第7条、第1項・第2項の規定については未遂でも罰する旨の規定があります(売春防止法第7条第1項)。

困惑等により売春をさせた人が対償の収受等をした場合(売春防止法第8条)

売春防止法第7条に規定されている困惑等により売春させた人が、売春のお金の全部または一部を受け取った・要求した・支払いの約束をした場合には、売春防止法第8条第1項に違反します。この場合、5年以下の懲役および20万円以下の罰金が科されます。

売春をした者に対し、親族関係による影響力を利用して、売春のお金の全部または一部の提供を要求した場合には、売春防止法第8条第2項に違反します。この場合3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

前貸等(売春防止法第9条)

売春をさせる目的で、前貸その他の方法により人に金品その他の財産上の利益を供与することは、売春防止法第9条に違反します。この場合3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

売春をさせる契約をした(売春防止法第10条)

人に売春をさせることを内容とする契約をした場合、売春防止法第10条第1項に違反します。この規定については未遂でも処罰されます(売春防止法第10条第2項)。この場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

場所の提供(売春防止法第11条)

売春のために場所を提供した場合、売春防止法第11条第1項に違反します。この場合3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

売春を行う場所を提供することを業としている場合は、売春防止法第11条第2項に違反します。この場合、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金が科されます。

売春をさせることを業とする(売春防止法第12条)

業として占有・管理している場所で売春をさせたり、指定する場所に居住させて売春させた者は、売春防止法第12条に違反します。この場合、10年以下の懲役および30万円以下の罰金が科されます。

資金等の提供(売春防止法第13条)

売春をすることを知りながら、売春防止法第11条第2項で規定される売春場所の提供を業とする者に対して資金、土地、または建物を提供した場合、売春防止法第13条1項に違反します。この場合、5年以下の懲役及び20万円以下の罰金が科されます。

売春をすることを知りながら、売春防止法第12条の売春をさせることを業とするために資金・土地・建物を提供した場合、売春防止法第13条第2項に違反します。この場合は、7年以下の懲役および30万円以下の罰金が科されます。

ソープランドが売春防止法に違反しない理由

ソープランドは、売春のために場所を提供する売春防止法第11条に違反したり、売春をさせることを業とする売春防止法第12条に該当しそうです。しかし、ソープランドはキャストと客が自由恋愛の体裁を取っているという建前のもとで、売春防止法に違反しないとされています。

まとめ

本記事では売春防止法について解説しました。

売春防止法では、売春自体は禁止しているものの刑事罰は科していませんが、売春にかかわる行為について犯罪としています。売春防止法違反で逮捕された場合、どの行為によって逮捕されたのか、当該行為にあたるのかについてしっかり吟味する必要があります。早めに弁護士に相談することで、適切な反論や弁護活動を進められるようにしましょう。