
街中や駅、SNSなどで男性が女性に声をかけて口説いたり、連絡先を交換しようとしたりする、いわゆる「ナンパ」。繁華街ではよく見かける光景ですが、実はケースによっては犯罪になることをご存じでしょうか。
もちろん、ナンパという行為そのものがすべて犯罪となるわけではありません。しかし、声をかける際の「強引さ」や「しつこさ」、「場所」の選び方次第では、法律や都道府県の条例に抵触する可能性があります(これは女性が男性に行う、いわゆる「逆ナン」にも全く同じことが当てはまります)。
近年、ハラスメントや性犯罪に対する社会の目は急激に厳しくなっており「ただの積極的なアプローチ」のつもりでも、警察に通報されて逮捕にいたるケースは決して珍しくありません。
本記事では、どのようなナンパ行為がアウト(違法)になるのか、その具体的な犯罪の構成要件(成立の条件)と刑罰について、法律の観点から分かりやすく解説します。
2025年6月から懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されました。旧制度や過去の事件に関連する場合は、懲役・禁錮と表記している場合もあります。
ナンパで逮捕される可能性のある犯罪の構成要件と刑罰
ナンパで逮捕される可能性のある犯罪の構成要件と刑罰として次のものがあります。
| 罪名 | 刑罰 |
|---|---|
| 軽犯罪法 | 拘留または科料 |
| 宮城県迷惑防止条例 | 6か月以下の懲役 または50万円以下の罰金 |
| 脅迫罪 | 2年以下の懲役 または30万円以下の罰金 |
| 強要罪 | 3年以下の拘禁刑 |
| 暴行罪 | 2年以下の拘禁刑 若しくは30万円以下の罰金 または拘留若しくは科料 |
| 傷害罪 | 15年以下の拘禁刑 または50万円以下の罰金 |
| 不同意わいせつ罪 | 6か月以上10年以下の拘禁刑 |
| 不同意性交等罪 | 5年以上の有期拘禁刑 |
拘留とは、1日以上30日未満の身柄拘束を伴う刑罰
科料とは、1,000円以上1万円未満の金銭を徴収する財産刑
軽犯罪法
ナンパで逮捕される可能性のある犯罪として軽犯罪法があります。軽犯罪法第1条に規定されているもののうち、第5号と第28号の規定がナンパをする際に当てはまることがあります。
第5号 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者
第28号 人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者
たとえば、飲食店や電車内で「著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」に該当する場合、5号に当たります。また路上でナンパをするときに、歩行中の女性の前に立ちふさがったり、執拗に追いかけてつきまとった場合には、軽犯罪法に該当することになります。軽犯罪法に違反すると拘留又は科料の刑に処せられます。
迷惑防止条例
各都道府県ごとに、人に迷惑をかける一定の行為を防止する目的で迷惑防止条例が制定されています(例:宮城県における宮城県迷惑防止条例)。
宮城県迷惑防止条例第12条第1号は次のように規定しています。つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
つきまとう・進路に立ちふさがるなどしてナンパをした場合にはこの宮城県迷惑防止条例第12条第1号に違反し、同第17条第1項第3号によって6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
ナンパの場合は当てはまらないでしょうが、常習性がある場合には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
脅迫・強要・暴行
ナンパで脅迫罪・強要罪・暴行罪が成立することがあります。
生命、身体、自由、名誉または財産に害悪を加える旨を告知した場合には脅迫罪(刑法第222条)が成立します。ナンパの最中に「殴るぞ!」などということによって脅迫罪が成立する可能性があり、この場合2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処せられます。
生命・身体・自由・名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫した場合や、暴行を用いて、人に義務のないことを行わせると、強要罪(刑法第223条)が成立します。「殴るぞ!」などと脅迫した上で飲食店に連れて行った場合には、強要罪が成立し、この場合3年以下の拘禁刑に処せられます。
また、相手の身体に有形力の行使を加える行為には暴行罪が成立します(刑法第208条)。ナンパ中に相手の腕を掴む・肩に手をかけるような行為によって暴行罪が成立すれば、2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処せられます。なお、怪我をさせた場合には傷害罪となり(刑法第204条)15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます。
不同意わいせつ罪・不同意性交等罪
ナンパをした相手が同意をしていないにも関わらずわいせつな行為を行ったり、性交等を行った場合には、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪に問われます。
不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が成立するのは、次の3つの場合です。

- 相手が同意していない
- わいせつではないと誤信または人違い
- 相手が16歳未満である
3つのNoのいずれかが困難な状態が不同意とされています。
特に1.相手が同意していない、状況は以下の通りです。

- 暴行もしくは脅迫を用いる
- 心身の障害を生じさせる
- アルコールもしくは薬物を摂取させる
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
- 同意しない意思を形成・表明するいとまをなくさせる
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖、驚愕させる
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
- 経済的・社会的地位に基づく影響力による不利益を憂慮(ゆうりょ)させる
ナンパをした相手とお酒を飲みにいって、同意しない相手にわいせつ行為(キス・胸を触るなど)を行えば、不同意わいせつ罪が成立し、6か月以上10年以下の拘禁刑に処せられます。
また、同様の状況で性交・肛門性交・口腔性交・膣若しくは肛門に身体の一部もしくは物を挿入する行為をすると不同意性交等罪となり、5年以上の有期拘禁刑に処せられます。
ナンパで出会った当日に性行為を行う、いわゆる一夜限りの関係、は違法となるのか不安な方もいらっしゃるかと思います。同意があれば問題はありませんが、後から不同意だったとトラブルになるケースも多くあります。ナンパという出会いであっても、当日に性行為をするのは避けるのが無難です。
ナンパした相手が未成年者である場合
ナンパした相手が未成年者である場合には次の罪が成立する可能性があります。
| 罪名 | 刑罰 |
|---|---|
| 淫行条例 | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 青少年保護育成条例 深夜の外出制限違反 | 10万円以下の罰金または科料 |
未成年保護の観点から未成年者との性行為は様々な法律によって規制されています。ナンパに関わらず気をつけておかなければなりません。以下の記事で、未成年淫行について詳しく解説しています。

淫行条例(青少年保護育成条例・青少年健全育成条例)違反
ナンパした相手が未成年者で性行為やわいせつ行為をした場合、都道府県に規定されている淫行条例に違反して犯罪になります。
各都道府県には、青少年保護育成条例(宮城県などでは青少年健全育成条例)があり、その中で青少年(18歳未満の者)への淫行を禁止しています(通称:淫行条例)。
そのため、ナンパをして淫行をした場合には青少年健全育成条例違反で、宮城県の場合宮城県健全育成条例第31条に違反することになり、同第41条によって2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。
深夜の外出制限違反
同じく青少年保護育成条例には、青少年を一定の時間外出させてはならない旨の規定があります。たとえば宮城県青少年健全育成条例では、第36条第2項で「保護者の委託を受けないで、又は同意を得ないで前項に規定する時間中に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。」と規定しています(なお前項に規定する時間は午後11時から午前4時まで)。
そのため、ナンパをして深夜まで青少年と一緒にいると違反となり、第41条第5項第9号に違反して10万円以下の罰金又は科料が処せられます。
まとめ
街中での気軽な声かけから始まるナンパですが、一歩間違えれば軽犯罪法や迷惑防止条例違反にとどまらず、暴行罪や脅迫罪、さらには「不同意わいせつ罪」「不同意性交等罪」といった人生を大きく狂わせる重大な性犯罪に発展するリスクを孕んでいます。
トラブルになった場合にはできるだけ早く弁護士に依頼して示談をすることで、逮捕や起訴を避けたる可能です。仙台青葉ゆかり法律事務所では、ナンパでトラブルになった方の示談交渉や刑事弁護に積極的に取り組んでいます。トラブルになった際には、お気軽にご相談ください。






