ナンパで逮捕される可能性がある?刑罰や構成要件について

ナンパで逮捕される可能性がある?刑罰や構成要件について

男性が女性に声をかけて口説いたり連絡先を交換しようとする、いわゆるナンパについて、ケースによっては犯罪となるのはご存知でしょうか。ナンパがすべて犯罪となるわけではありませんが、そのやり方次第では刑罰を定める法律に抵触してしまうことがあります(これは女性が男性に行う逆ナンにも当てはまります)。

本記事ではナンパで犯罪となる場合の構成要件と刑罰について解説します。

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ナンパで逮捕される可能性のある犯罪の構成要件と刑罰

ナンパで逮捕される可能性のある犯罪の構成要件と刑罰として次のものがあります。

軽犯罪法

ナンパで逮捕される可能性のある犯罪として軽犯罪法があります。軽犯罪法第1条に規定されているもののうち、第5号と第28号の規定がナンパをする際に当てはまることがあります。

第5号 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者

第28号 人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者

たとえば、飲食店や電車内で「著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」に該当する場合、5号に当たります。また路上でナンパをするときに、歩行中の女性の前に立ちふさがったり、執拗に追いかけてつきまとった場合には、軽犯罪法に該当することになります。軽犯罪法に違反すると拘留又は科料の刑に処せられます。

迷惑防止条例

都道府県には、人に迷惑をかける一定の行為を防止する目的で迷惑防止条例が制定されています(例:宮城県における宮城県迷惑防止条例)。

宮城県迷惑防止条例第12条第1号は次のように規定しています。つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

つきまとう・進路に立ちふさがるなどしてナンパをした場合にはこの宮城県迷惑防止条例第12条第1号に違反し、同第17条第1項第3号によって6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が、常習性がある場合には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

脅迫・強要・暴行

ナンパで脅迫罪強要罪暴行罪が成立することがあります。

生命、身体、自由、名誉または財産に害悪を加える旨を告知した場合には脅迫罪(刑法第222条)が成立します。ナンパの最中に「殴るぞ!」などということによって脅迫罪が成立する可能性があり、この場合2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

生命・身体・自由・名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫した場合や、暴行を用いて、人に義務のないことを行わせると、強要罪(刑法第223条)が成立します。「殴るぞ!」などと脅迫した上で飲食店に連れて行った場合には、強要罪が成立し、この場合3年以下の懲役に処せられます。

また、相手の身体に有形力の行使を加える行為には暴行罪が成立します(刑法第208条)。ナンパ中に相手の腕を掴む肩に手をかけるような行為によって暴行罪が成立すれば、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処せられます。なお、怪我をさせた場合には傷害罪となり(刑法第204条)15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪

ナンパをした相手が同意をしていないにも関わらずわいせつな行為を行ったり、性交等を行った場合には、不同意わいせつ罪不同意性交等罪に問われます。

次の状況で相手にわいせつ行為をおこなうと、不同意わいせつ罪に問われます。

不同意わいせつ罪が成立する状況
  • 暴行もしくは脅迫を行う
  • 心身の障害を生じさせる
  • アルコールもしくは薬物を摂取させる
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
  • 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させる
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
  • 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる
  • 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせる
  • 行為をする者について人違いをさせる
  • 16歳未満の者に対し、わいせつな行為をする

ナンパをした相手とお酒を飲みにいって、酔いつぶれた相手にわいせつ行為を行えば、不同意わいせつ罪が成立し、6か月以上10年以下の懲役に処せられます。

また、同様の状況で性交・肛門性交・口腔性交・膣若しくは肛門に身体の一部もしくは物を挿入する行為をすると不同意性交等罪となり、5年以上の有期拘禁刑に処せられます。

ナンパした相手が未成年者である場合

ナンパした相手が未成年者である場合には次の罪が成立する可能性があります。

淫行条例(青少年保護育成条例・青少年健全育成条例)違反

ナンパした相手が未成年者で性行為やわいせつ行為をした場合、都道府県に規定されている淫行条例に違反して犯罪になります。

各都道府県には、青少年保護育成条例(宮城県などでは青少年健全育成条例)があり、その中で青少年(18歳未満の者)への淫行を禁止しています(通称:淫行条例)。

そのため、ナンパをして淫行をした場合には青少年健全育成条例違反で、宮城県の場合宮城県健全育成条例第31条に違反することになり、同第41条によって2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

深夜の外出制限違反

同じく青少年保護育成条例には、青少年を一定の時間外出させてはならない旨の規定があります。たとえば宮城県青少年健全育成条例では、第36条第2項で「保護者の委託を受けないで、又は同意を得ないで前項に規定する時間中に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。」と規定しています(なお前項に規定する時間は午後11時から午前4時まで)。

そのため、ナンパをして深夜まで青少年と一緒にいると違反となり、第41条第5項第9号に違反して10万円以下の罰金又は科料が処せられます。

まとめ

本記事ではナンパによって逮捕される可能性があるのか、逮捕された場合の刑罰について解説しました。

ナンパもその態様によっては犯罪となり、処罰される可能性があります。刑事事件になる場合には早めに弁護士に依頼して示談をすることで、逮捕や起訴を避けたり、既に行われている身柄拘束を解いてもらうことが可能です。まずは弁護士に相談してみるようにしてください。