
「子供が盗撮で警察に捕まった」
「盗撮の被害届が出ていて事情を聞きたい」
警察から連絡を受けた場合、親としてどのように対応すればよいのでしょうか。
本記事では、子供が盗撮で捕まったときに家族が取るべき初動対応と弁護活動の進め方について解説します。
盗撮した場合に成立する犯罪
盗撮によって成立する可能性のある犯罪には、次のようなものがあります。
撮影罪
盗撮した場合、撮影罪が成立します。
性的な姿態を撮影する行為等の処罰および押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影処罰法)第2条1項の撮影罪が成立します。
撮影罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と重いものです。
性的姿態撮影処罰法は令和5年7月13日に施行された新しい法律であり、処罰の対象となるのは施行日以降の行為に限られます。
参考:性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律|e-Gov法令検索
都道府県の迷惑防止条例違反
令和5年7月12日以前に行われたトイレの盗撮は、各都道府県で制定されている迷惑防止条例違反として処罰の対象となります。
各都道府県には、人に迷惑をかける種々の行為について処罰する迷惑防止条例が規定されています。宮城県では迷惑行為防止条例第3条の2第3項で盗撮が処罰の対象となっています。
迷惑行為防止条例第3条の2第3項に違反した場合の法定刑は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金(常習性がある場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金)です。
子供が盗撮で警察に捕まるとどうなるのか
子供が警察に捕まるとどうなるのでしょうか。
犯行時に子供が20歳以上の場合:刑事事件として扱われる
犯行時に子供が20歳以上であれば、通常どおり刑事事件として取り扱われます。
在宅もしくは逮捕されて捜査が行われ、起訴された場合には刑事裁判において刑罰が判決で言い渡されます。
犯行時に子供が20歳未満の場合
犯行時に子供が20歳未満で、盗撮をして捕まった場合には少年事件として取り扱われます。
少年事件として扱われる場合、基本的には次の流れによって処分されます。
捜査段階
捜査段階では通常の刑事事件と同様です。
盗撮をした子供は在宅のまま捜査が進むこともあれば、逮捕・勾留される可能性もあります。在宅のまま捜査が進む場合、警察から任意で出頭を求められる場合もあります。
家庭裁判所での少年審判
捜査機関での捜査が終わると、家庭裁判所に送致されます。
少年法第3条第1項では、1号で「罪を犯した少年」、2号で「14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年」について、家庭裁判所が少年審判を行うことが規定されています。
家庭裁判所が観護措置決定を行うと、子供は鑑別所に移送されます。そこで、子供が盗撮をした経緯や現在の環境などを調査し、更生に向けてどう解決するかを整理した上で少年審判が行われます。この際、家族としては少年院に行かせなくても更生が可能であることを裁判所に理解してもらえるよう、環境を整えることが重要です。
家庭裁判所での保護処分もしくは逆送
少年審判の結果、保護処分が言い渡されることになります。
保護処分としては、児童自立支援施設などに送致する、少年院に送致する、または保護観察のいずれかの処分が行われます。その後は、処分に従って更生を目指すことになります。
年齢が成人に近いなどで家庭裁判所が刑事事件として取り扱うのが相当だと判断した場合には、家庭裁判所から検察官に送致(逆送)され、刑事事件として取り扱われます。
子供が盗撮で逮捕された場合に親や家族がすべきこと
子供が盗撮で逮捕された場合に、親や家族が取るべき対応は次の通りです。
子供が20歳以上の場合
子供が20歳以上で、盗撮で逮捕された場合には、早めに弁護士に依頼することがおすすめです。
子供が大学生である場合には退学の可能性があり、社会人である場合には会社の懲戒処分として懲戒解雇となる可能性もあります。これを避けるためには早期に被害者と示談をするのが重要ですが、本人が警察に逮捕されている状況では示談ができません。刑事訴訟法第30条第2項は、被告人または被疑者の法定代理人や直系の親族および兄弟姉妹は独立して弁護人を選任することができることが規定されています。そのため、本人が弁護人を選任できていない場合には、家族が弁護人(=弁護士)を選任することがおすすめです。
子供が20歳未満である場合
子供が20歳未満の場合も同様に、早めに弁護士に依頼してあげましょう。
子供が20歳未満である場合には少年審判へと進みますが、成人の場合と同じように逮捕・勾留され、観護措置決定が出されると、鑑別所に送致されます。家庭裁判所によって学校への調査が行われ、盗撮の事実が学校に知られる可能性があり、退学・停学などの処分を受ける可能性があるほか、少年審判でできるだけ軽い処分とするために家族がどのように環境を整えるかなど、適切な対応を講じることが求められます。
そのため、早期に弁護士へ依頼することを強くおすすめします。
まとめ
本記事では子供が盗撮で捕まったときに家族が取るべき初動対応と弁護活動の進め方について解説しました。
盗撮で逮捕された場合、子供が成人か未成年かにかかわらず、身柄を拘束される可能性があり、その後には刑事事件・少年審判の対象となります。いずれの場合でも、弁護士に依頼し、適切な弁護活動を受けることで処分の軽減を図ることをおすすめします。