
覚せい剤や大麻などの薬物事件で逮捕された場合、初犯でも起訴される可能性が高く、内容によっては実刑判決を受ける可能性すらあります。薬物を規制する法律は薬物の種類によって複数あり、刑罰の内容も種類や行為態様によって異なります。
「薬物で逮捕されたらいつ釈放されるの?」「覚せい剤の使用で実刑判決になる?」など不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、薬物で逮捕されたときの流れや刑罰について解説します。薬物事件で逮捕された際の対応にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
薬物事件の種類と刑罰
ひと言に薬物事件と言っても、薬物の種類や使用・譲渡など行為態様の違いによって適用される法律や刑罰の内容はさまざまです。逮捕後の流れや刑事処分の内容を予測するには、前提として薬物事件の種類と刑罰を理解しておく必要があります。
ここでは、薬物を規制する法律の種類と規制される内容・刑罰について解説します。
薬物を規制する法律
薬物を規制する主な法律には、次の4つがあります。
- 覚せい剤取締法
- 大麻草の栽培の規制に関する法律
- 麻薬及び向精神薬取締法
- あへん法
各法律は、薬物の種類や行為の内容によって規制する対象が異なります。
なお、大麻取締法は、2024年12月施行の「大麻草の栽培の規制に関する法律」に改正されました。その結果、大麻取締法の規制対象とされていた大麻の所持は、麻薬及び向精神薬取締法の規制対象に変更されています。
法律で規制される内容と刑罰
薬物を規制する法律で処罰の対象とされている行為としては、次のものが挙げられます。
- 所持
- 使用
- 譲渡・譲受
- 輸出入
- 製造・栽培
また、行為の目的が営利である場合には、非営利の場合と比べて重い刑罰が科されます。
この記事では、一般人が関わる可能性の高い、非営利目的の所持・使用・譲渡・譲受について刑罰の内容を解説します。
薬物の種類 | 行為態様 | 刑罰 |
覚せい剤 (覚せい剤取締法) | 使用、所持、譲渡、譲受 | 1か月以上10年以下の懲役 |
ヘロイン (麻薬及び向精神薬取締法) | 使用、所持、譲渡、譲受 | 1か月以上10年以下の懲役 |
大麻、コカイン、MDMAなどヘロイン以外の麻薬 (麻薬及び向精神薬取締法) | 使用、所持、譲渡、譲受 | 1か月以上7年以下の懲役 |
抑うつ薬、睡眠薬などの向精神薬 (麻薬及び向精神薬取締法) | 譲渡・譲受目的の所持 | 1か月以上3年以下の懲役 |
薬物事件で逮捕されたときの流れ
薬物事件については、家庭や職業があり逃亡のおそれが低い人や初犯の人でも、証拠隠滅のおそれから逮捕されるケースが多くなっています。
薬物事件で逮捕されたときの流れは、成人の場合と少年の場合とで異なります。
成人の場合
薬物事件で逮捕されると、逮捕から48時間以内に検察に送致され、それから24時間以内に勾留請求されるか、釈放されるかが判断されます(最長で3日間)。
多くのケースでは、最長10日間の勾留となり、捜査の必要がある場合にはさらに最長10日間延長され、合計で最長20日間勾留される可能性があります。初犯で被疑事実を認めている場合には、最初の10日以内で勾留期間が終了することも少なくありません。
勾留期間の満了までに、検察官が起訴するか不起訴とするかを判断します。薬物事件では、不起訴となるケースが少なく、起訴となる可能性が高いでしょう。
起訴後は約1か月で刑事裁判が開かれ、審理期間を経て判決が下されます。営利目的がなく、初犯の薬物事件では、執行猶予付きの判決となるケースが多いです。
なお、起訴後は、保釈請求が認められれば身体拘束から解放された状態で裁判を受けることが可能です。
少年の場合
少年事件でも、逮捕・勾留までの流れは成人とほとんど変わりません。少年事件では、勾留期間が満了すると必ず家庭裁判所に送致されます(最長で23日間)。
家庭裁判所は、少年を引き続き少年鑑別所に収容する収容観護(最長で4週間)とするか、在宅観護とするかを決定します。薬物事件で逮捕・勾留された場合には、収容観護となるケースがほとんどです。
収容観護の期間を終えると、家庭裁判所の審判によって最終的な処分が決定します。
薬物事件で弁護士に相談・依頼するメリット
薬物事件で逮捕された場合や逮捕される可能性がある場合には、弁護士に相談すべきです。弁護士に相談・依頼するメリットとしては、次のものが挙げられます。
- 流れや予想される処分がわかる
- 逮捕・勾留期間の短縮が期待できる
- 刑事処分の軽減が期待できる
それぞれのメリットについて解説します。
流れや予想される処分がわかる
弁護士は、専門的な知識と経験に基づき、今後の流れや予測される処分を相談者に説明します。取り調べ対応のアドバイスや家族・職場などへの連絡もできるので、逮捕・勾留中の不安が軽減されます。
逮捕・勾留期間の短縮が期待できる
弁護士は、勾留の必要性がないことを主張して勾留を回避したり、勾留決定に対する準抗告を申し立てたりするなど、依頼者ができる限り早く身体拘束から解放されるよう活動します。
起訴後には、保釈請求の申請を任せることも可能です。
刑事処分の軽減が期待できる
薬物事件の刑事処分をできる限り軽減するには、裁判所に対して真摯な反省の態度を示すことや社会内での更生可能性を示すことなどが重要です。
弁護士は、検察官に不起訴処分を求めたり、裁判所に反省の態度や更生可能性を示したりして、可能な限り刑事処分が軽減されるよう活動します。
まとめ
薬物事件は、逮捕から勾留、起訴、裁判に至るまでの流れが非常に迅速かつ厳格に進められるため、早い段階で適切な対応を取ることが極めて重要です。
特に、初犯であっても起訴される可能性が高く、内容によっては実刑判決を受けるおそれもあります。そのため、専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談することが、今後の人生を左右する重要な結果につながります。
薬物事件でお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。