横領罪とは?構成要件や時効などをわかりやすく解説

横領罪とは?構成要件や時効などをわかりやすく解説

横領罪は、他人から預かっている財物を自分の物にしてしまう犯罪です。

財物が自分の手元にあるため、つい魔が差して犯罪に手を出してしまうケースもあり、誘惑的な側面を持つ犯罪とも言われています。

今回は、横領罪の構成要件種類時効、そして窃盗罪・背任罪との違いについてわかりやすく解説します。

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横領罪の構成要件

横領罪は、自分が占有する他人の物を自分の物とすることで成立する犯罪です(刑法252条1項)。

(横領)

第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する。

引用:e-Gov法令検索|刑法

横領罪(単純横領罪)の構成要件は、次の3つの要素で構成されています。

横領罪(単純横領罪)の構成要件
  1. 自己の占有する
  2. 他人の物を
  3. 横領した

「占有」とは、財物を現実に支配している状態のことです。

横領罪における「自己の占有する」とは、他人の委託に基づいて財物を占有している状態を示します。

たとえば、友人からお金や貴金属を預かっている場合、お金や貴金属を占有していると言えます。

「他人の物」とは、他人に所有権がある物のことです。

先ほどの例で、お金や貴金属の所有権は友人にあるので「他人の物」と言えます。

「横領」とは、不法領得の意思を実現する一切の行為を指します。

横領罪における「不法領得の意思」とは、委託を受けた任務に背き、所有者でなければできないような処分をする意思のことです。

たとえば、預かっているお金を使い込んだり、貴金属を売却したりする行為は所有者でなければできない行為なので「横領」となります。

横領罪の種類と時効

横領罪には、次の3つの種類があります。

横領罪の種類
  1. 単純横領罪
  2. 業務上横領罪
  3. 遺失物等横領罪

ここでは、それぞれの区別と法定刑、時効について解説します。

単純横領罪

単純横領罪は、先ほど説明したとおり、自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。法定刑は、5年以下の拘禁刑となっています。

単純横領罪は、長期10年未満の拘禁刑に当たるため、公訴時効は5年です(刑事訴訟法250条2項)。

業務上横領罪

業務上横領罪は「業務上」自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪となっています(刑法253条)。

単純横領罪との違いは、委託を受けて他人の物を占有している状態が業務に基づくものなのか否かという点です。

友人からお金を預かったという例では、業務に基づいてお金を占有しているわけではありません。一方、会社の経理を担当しているケースや修理のために他人の自動車を預かっているケースでは、業務に基づいて他人の物を占有している状態と言えるでしょう。

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑です。単純横領罪より重く処罰されるのは、業務上の立場を悪用した横領行為がより悪質と判断されるためです。

業務上横領罪は、長期15年未満の拘禁刑に当たるため、公訴時効は7年です。

遺失物等横領罪

遺失物等横領罪は、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した場合に成立する犯罪となっています(刑法254条)。

遺失物等横領罪の代表的な例としては、道に落ちている財布を警察などに届け出ず、自分の物にしてしまう行為が挙げられます。

遺失物等横領罪と単純横領罪・業務上横領罪との違いは、物の占有が他人の委託に基づかない点にあります。

遺失物等横領罪の法定刑は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料です。

占有の離れた物を自分の物にしてしまう行為は、誘惑的な側面が大きいため、法定刑が比較的軽く設定されています。

遺失物等横領罪は、長期5年未満の拘禁刑または罰金に当たるため、公訴時効は3年です。

横領罪と他の犯罪との違い

ここでは、横領罪と同じ財産犯である窃盗罪や背任罪との違いを解説します。

窃盗罪との違い

窃盗罪は、他人が占有する財物を無断で奪う犯罪です。

横領罪と窃盗罪の違いは、財物を自分が占有しているのか、他人が占有しているのかという点にあります。

同じ他人の車に対する犯罪でも、預かっていた車を自分の物にしたときには横領罪が、委託のない状態で車を奪い取ったときには窃盗罪が成立します。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(刑法235条)。

窃盗罪が横領罪より重く処罰されるのは、他人の占有を侵害する行為が重く非難されるためです。

また、横領罪は、財物を自分が占有しているという点で、つい自分の物にしてしまうという誘惑的な要素があるため、窃盗罪よりは法定刑が軽くなっています。

背任罪との違い

背任罪は、他人のために事務を処理する立場にある人が、自己や第三者の利益を図ったり、本人に損害を与えたりする目的で任務に反する行為を行い、その結果、本人に財産上の損害を与えた場合に成立する犯罪です(刑法247条)。

横領罪と背任罪は、いずれも被害者の信頼を裏切る点で共通しています。

両者は、横領罪が財物の領得行為、背任罪がその他の任務違背行為である点で区別されます。

背任罪の典型例は、販売員が不当に安い金額で商品を販売して会社に損害を与えるというものです。このケースで、商品をそのまま自分の物にした場合には横領罪が成立します。

まとめ

横領罪は、財産を預かる立場にある人なら誰にでも起こり得る犯罪です。悪意がなかったとしても、行為の内容によっては刑事責任を問われる可能性があります。

また、横領罪の成立や量刑は、占有の状況や行為の目的、被害弁償の有無などによって大きく変わるため、慎重な判断が必要です。

横領の疑いをかけられた場合や、従業員による横領被害にお悩みの場合は、早めに弁護士へ相談することが大切です。

当事務所では、刑事事件について初回60分の無料相談を受け付けています。状況に応じて最適な対応方法をご提案いたしますので、横領事件でお困りの方はぜひ当事務所にご相談ください。