不同意性交等罪をわかりやすく解説

不同意性交等罪をわかりやすく解説

不同意性交等罪は、被害者が同意しない意思を伝えたり、抵抗したりするのが難しい状況で性交等を行う犯罪です。

令和5年7月13日の刑法改正によって性犯罪の厳罰化が行われ、その一環として不同意性交等罪が新設されました。不同意性交等罪は新しい法律であるため、旧法の強制性交等罪との違いがわからないという方もいらっしゃるでしょう。

今回は、不同意性交等罪とは何か不同意性交等罪と強制性交等罪との違い不同意性交等罪を犯したらどうなるかについて解説します。

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不同意性交等罪とは何か

不同意性交等罪は、かつての強姦罪、強制性交等罪を元とする犯罪で、令和5年7月13日の刑法改正で新設されました。

ここでは、不同意性交等罪で処罰される3つの行為と罰則について詳しく解説します。

不同意性交等罪で処罰される3つの行為

不同意性交等罪で処罰の対象となる行為は、次の3つです。

不同意性交等罪で処罰の対象となる行為
  • 暴行・脅迫、アルコールの影響など刑法176条1項に掲げられた行為その他これに類する行為により、被害者が同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせ、または、その状態にあることに乗じて性交等をする行為(刑法177条1項)
  • その行為がわいせつなものでないと誤信させ、もしくは行為する相手について人違いをさせ、または、その誤信や人違いに乗じて性交等をする行為(刑法177条2項)
  • 13歳未満の者と性交等をする行為、13歳以上16歳未満の者より5年以上前に生まれた者がその者と性交等をする行為(刑法177条3項)

不同意性交等罪は、「被害者が同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせ」、または、その状態にあることに乗じて「性交等」をすることによって成立します。

「被害者が同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせる」行為としては、刑法176条1項各号に例示されています。

被害者が同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせる行為
  • 暴行もしくは脅迫
  • 心身の障害を生じさせる
  • アルコールもしくは薬物を摂取させる
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
  • 同意しない意思を形成したり、表明したりするいとまをなくさせる
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖、驚愕させる
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
  • 地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる

「性交等」とは、男性器を女性器に挿入する性交だけでなく、肛門での性交、口での性交を含みます。さらに、女性器や肛門に指や物を挿入する行為のうちわいせつなものも「性交等」に含まれます。

刑法177条2項について、行為がわいせつなものでないと誤信していたり、人違いしていたりする場合には、性交等に同意する前提が欠けているといえるため、不同意性交等罪による処罰の対象となります。

刑法177条3項について、13歳未満との性交等は、同意があっても不同意性交等罪による処罰の対象です。さらに、13歳以上16歳未満の者との性交等についても、年齢差が5歳以上あるときには、不同意性交等罪が成立します。たとえば、被害者が15歳であっても、加害者が21歳以上のときには不同意性交等罪による処罰の対象となります。

不同意性交等罪の罰則

不同意性交等罪の罰則は、5年以上20年以下の有期拘禁刑となっています(刑法177条)。

なお、拘禁刑とは、従来の懲役刑と禁錮刑を一本化したものです。拘禁刑は、受刑者に応じた柔軟な処遇を可能とするもので、受刑者の再犯防止を目的として新設されました。たとえば、これまで、懲役刑の受刑者は刑務作業を義務付けられていましたが、拘禁刑の適用後は刑務作業が義務ではなくなります。

不同意性交等罪と強制性交等罪との違い

不同意性交等罪の元となった強制性交等罪は、平成29年(2017年)の刑法改正で新設された法律です。強制性交等罪は、それまでの強姦罪とは異なり、女性だけでなく男性も被害者となり得る犯罪で、処罰の対象となる行為も男性器を女性器に挿入する性交だけでなく、その他の性交類似行為にまで拡大されました。

不同意性交等罪と強制性交等罪の大きな違いは、構成要件と性交同意年齢の2つです。

強制性交等罪の構成要件は、暴行または脅迫によるものに限定されていましたが、不同意性交等罪の構成要件は、準強制性交等罪の構成要件も統合したもので、処罰の対象となる行為が拡大・明確化されています。

性交同意年齢について、13歳未満の者との性交等を処罰対象とする点は、不同意性交等罪と強制性交等罪に違いはありません。しかし、不同意性交等罪は、性交同意年齢を引き上げ、13歳以上16歳未満の者でも年齢差が5歳以上ある場合には処罰の対象としています。

不同意性交等罪を犯したらどうなるか

不同意性交等罪の法定刑は、5年以上20年以下の有期拘禁刑(懲役)です。判決で3年以上の懲役刑を言い渡された場合には、執行猶予はつきません。そのため、不同意性交等罪で起訴されると、初犯でも実刑となる可能性が高いです。

不同意性交等罪を犯してしまった場合、逮捕・勾留、実刑を避けるためには被害者との示談交渉が何よりも重要となります。逮捕前に被害者との示談が成立すれば、逮捕される可能性は低くなりますし、逮捕・勾留後でも起訴前であれば、起訴猶予による釈放が期待できます。

かつて、強姦罪や強制わいせつ罪などの性犯罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪でした。現在、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪などの性犯罪も非親告罪となっていますが、性犯罪の事件は、依然として被害者のプライバシーに配慮し、被害者の意思を重視した取扱いがされています。

そのため、不同意性交等罪といった重い犯罪であっても、被害者との示談が成立し、被害者が加害者の処罰を求めないのであれば、起訴されない可能性が十分にあるのです。

不同意性交等罪を犯してしまった場合は、すぐに弁護士に相談して被害者との示談交渉を進めるようにしてください。被害者との示談ができず、逮捕・勾留、起訴されてしまった場合には、実刑判決となる可能性が高いでしょう。