
「同意のない性行為は犯罪」
言葉で言うのは簡単ですが、実際の法律がどのようなものかを正しく説明できる人はどれくらいいるでしょうか。
「NOと言わなければ同意になるの?」「お酒を飲んでいた場合は?」など、曖昧に捉えられがちな疑問も少なくありません。悪意の有無にかかわらず、知らなかったでは済まされないのが法律の厳しさです。
今回は、2023年7月に刑法改正により従来の「強制性交等罪」から厳罰化された「不同意性交等罪」についてわかりやすく解説をします。不同意性交等罪とは何か、旧強姦罪・強制性交等罪との違い、刑罰や執行猶予がつくのか、などについて解説しています。
2025年6月から懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されました。旧制度や過去の事件に関連する場合は、懲役・禁錮と表記している場合もあります。
不同意性交等罪とは?
不同意性交等罪とは、拒絶できない状況や勘違いなどを利用し、相手の真意に基づく同意がないにも関わらず性交等を行った者を処罰する犯罪です。
- 性交
- 肛門性交
- 口腔性交
- 膣もしくは肛門に陰茎以外の身体の一部もしくは物を挿入する行為であってわいせつなもの
不同意性交等罪は、大きく分けて次の3つのパターンのいずれかに該当する場合に成立します。

- 相手が同意していない
- わいせつではないと誤信または人違い
- 相手が16歳未満である
1.相手が同意していない
被害者が同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態にさせまたはその状態にあることに乗じて、性交等をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑となります。
「被害者が同意しない意思を形成し、表明しもしくは全うすることが困難な状態」は、以下の通りです。

- 意思を形成=Noと思うこと
- 意思を表明=Noと言うこと
- 意思を全うする=Noを貫くこと
3つのNoのいずれかが困難な状態が不同意とされています。
刑法176条に具体的な8つの類型が挙げられています。この記事では、わかりやすいように意訳して掲載しています。
- 暴行もしくは脅迫を用いる
- 心身の障害を生じさせる
- アルコールもしくは薬物を摂取させる
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
- 同意しない意思を形成・表明するいとまをなくさせる
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖、驚愕させる
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
- 経済的・社会的地位に基づく影響力による不利益を憂慮(ゆうりょ)させる
2.わいせつではないと誤信または人違い
行為がわいせつなものでないと誤信していたり、人違いしていたりする場合には、性交等に同意する前提が欠けているといえるため、不同意性交等罪による処罰の対象となります。
- 治療のために必要だと偽り性交等を行った場合
- 宗教的な儀式だと偽り性交等を行った場合
- 夫や交際相手だと思いこませ性交等を行った場合 など
3.相手が16歳未満である
2023年の法改正前までは、法律上の性交同意年齢は「13歳」と非常に低く設定されていました。社会通念に合わせて「16歳」に引き上げられました。
13歳未満:いかなる場合も同意は無効
13歳以上16歳未満:基本的には同意があっても処罰対象となるが、「5歳以上の年齢差」がある場合に限定して処罰されます。
高校1年生(15歳)と中学3年生(14歳)といった、同年代同士(年の差が近い若者同士)の恋愛や性的な行為まで犯罪として処罰してしまわないよう、この「5歳以上の年齢差」という例外規定が設けられました。

不同意性交等罪の刑罰
| 罪名 | 刑罰 |
|---|---|
| 不同意性交等罪 | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 不同意性交等致傷罪 | 無期または6年以上の拘禁刑 |
不同意性交等罪やその未遂などによって、人を死傷させた者は不同意性交等致傷罪としてより厳しく罰せられる。
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑とされています。
拘禁刑とは、刑務作業が義務とされる懲役刑と異なるもので、更生プログラムを受けさせるなどの措置を行います。最低でも5年という期間の刑になっており、罪としては非常に重い部類に分類されているといえます。
不同意性交等罪や未遂などによって怪我や死傷の結果を生じさせた場合には、不同意性交等致傷罪となり(刑法第181条)、無期又は6年以上の拘禁刑が科されます。
不同意性交等罪の公訴時効
公訴時効(こうそじこう)とは、犯罪が終わってから一定の期間が過ぎると、犯人を裁判にかけられなくなる(処罰できなくなる)制度のことです。
| 罪名 | 法改正前 2023年7月13日以前 | 法改正後 2023年7月13日以降 |
|---|---|---|
| 不同意性交等罪 | 10年 | 15年 |
| 不同意性交等致傷罪 | 15年 | 20年 |
性犯罪の性質上、被害申告が難しいことなどから被害が潜在化しやすいといわれています。性犯罪厳罰化に伴い、公訴時効が延長されることとなりました。
被害者が18歳になるまで公訴時効の進行が停止します。例えば10歳の時に被害に遭った場合は、18歳になってから時効が進みます。つまり実質的な時効は23年(8年+15年)となります。
不同意性交等罪で執行猶予はつく?
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上20年以下の有期拘禁刑です。判決で3年以上の懲役刑を言い渡された場合には、執行猶予はつきません。不同意性交等罪で起訴されると、初犯でも実刑となる可能性が高いです。
不同意性交等罪を犯してしまった場合、逮捕・勾留、実刑を避けるためには被害者との示談交渉が何よりも重要となります。逮捕前に被害者との示談が成立すれば、逮捕される可能性は低くなり、逮捕・勾留後でも起訴前であれば、起訴猶予による釈放が期待できます。
かつて、強姦罪や強制わいせつ罪などの性犯罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪でした。現在、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪などの性犯罪も非親告罪となっていますが、性犯罪の事件は、依然として被害者のプライバシーに配慮し、被害者の意思を重視した取扱いがされています。
そのため、不同意性交等罪といった重い犯罪であっても、被害者との示談が成立し、被害者が加害者の処罰を求めないのであれば、起訴されない可能性が十分にあるのです。
不同意性交等罪を犯してしまった場合は、すぐに弁護士に相談して被害者との示談交渉を進めるようにしてください。被害者との示談ができず、逮捕・勾留、起訴されてしまった場合には、実刑判決となる可能性が高いでしょう。

旧強姦罪・強制性交罪と不同意性交等罪の違い
- 1907年:強姦罪・準強姦罪の制定
- 2004年:強姦罪の厳罰化・集団強姦罪の新設
- 2017年:強制性交等罪、準強制性交等罪へ移行
- 2023年:不同意性交等罪へ移行
「性的な自己決定権をいかに守るか」という社会的な意識の高まりから性犯罪に関する法制度は変化してきました。かつての法律では、被害者がどれだけ深く傷ついていたとしても、処罰のハードルが非常に高く、実態に見合っていないという批判が根強くありました。
強姦罪、強制性交罪そして不同意性交等罪の違いを表にして見やすくまとめました。
| 強姦罪 | 強制性交 | 不同意性交 | |
|---|---|---|---|
| 成立要件 | 暴行・脅迫 | 暴行・脅迫 | 同意しない 意思の形成等が 困難な状態 |
| 判断基準 | 抵抗ができたか | 抵抗ができたか | 同意があったか |
| 被害者 | 女性 | 男女 | 男女 |
| 行為の内容 | 性器への挿入 | 性器・肛門・口腔への挿入 | 性器・肛門・口腔 への挿入 膣・肛門に陰茎以外の体の一部を挿入 物を挿入する行為であってわいせつなもの |
| 法定刑 | 3年以上の有期懲役 | 5年以上の有期懲役 | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 告訴 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 性交同意年齢 | 13歳以上 | 13歳以上 | 原則 16歳以上 |
法改正後に認知件数が増加している
2023年(令和5年)7月に「強制性交等罪」から「不同意性交等罪」へと法改正されて以降、認知件数は大きく増加しています。内閣府や警察庁の統計によると、法改正を挟む期間の認知件数は以下の通り推移しています。
| 年 | 認知件数 | 前年からの増減 |
|---|---|---|
| 2022年 | 1,655件 (強制性交) | — |
| 2023年 | 2,711件 | +1,056件(63.8%増) |
| 2024年 | 3,936件 | +1,225件(45.2%増) |
正確な統計はありませんが、美人局や風俗店でのトラブルも増えているようです。

「暴行・脅迫」から「同意のない状態」へ
最大の変更点は、犯罪が成立するための「要件」の見直しです。
旧・強制性交等罪(2023年法改正前まで)
犯罪が成立するためには、被害者の抵抗を著しく困難にするほどの「暴行や脅迫」があったかどうかが重視されていました。そのため、「恐怖で体がすくんで抵抗できなかった」「加害者との関係性から拒絶できなかった」というケースでは、処罰を免れる、あるいは罪を問うことが極めて難しいという構造的な問題がありました。
不同意性交等罪(現在)
法改正により、処罰の基準は「暴行・脅迫の有無」ではなく、「相手の真意に基づく同意がないこと」へ変わりました。これにより、暴行や脅迫を伴わなくても、処罰できるようになりました。
逮捕・実刑を避けるために最も重要なこと
日本の刑事裁判で起訴された場合の有罪率は99%以上ですが、執行猶予がつく条件は「3年以下の懲役・拘禁刑」と法律で決まっています。つまり、不同意性交等罪で裁判になり、裁判官が減刑(酌量減軽など)をしてくれない限り、執行猶予はつかず、初犯であっても刑務所へ入る(実刑判決)ことになります。
不同意性交等罪でも刑が減刑され執行猶予がつく条件を満たす可能性はありますが、現実的には執行猶予判決を取ることは稀です。
不同意性交等罪では起訴されると実刑判決となることが多いため、「逮捕されないこと」「起訴されないこと」が非常に大切になります。逮捕・実刑を避けるためには「被害者と示談する」「自首する」ことが重要です。
被害者と示談をする
被害者との示談は不起訴を獲得するには欠かせません。
被害者と示談が成立している場合、被害者の処罰感情が弱まっていると考えられます。その結果、犯罪後の状況を踏まえて「起訴する必要がない」と判断されることがあります(刑事訴訟法第248条)。また、起訴された場合でも、情状の酌量ができるとして刑の減軽を受けられる可能性があります(刑法第66条)。
もっとも、不同意性交等罪の場合、加害者本人が被害者と直接連絡を取ることは非常に難しく、特に被害者と連絡がつかない場合には、警察から被害者の情報を教えてもらうことも困難です。そのため、通常は弁護士に依頼して示談交渉を進めることになります。
自首する
相手が特定できず示談ができない場合には自首することも対策の1つです。自首によっては犯罪後の情状により訴追を必要としないと判断される可能性があり、また刑の減軽を受けることができます(刑法第42条)。
自首についても、きちんと反省をしていることを示すために、弁護士によるサポートを受けるのが望ましいです。

不同意性交等のトラブルでお悩みの方へ
2023年の刑法改正によって新設された「不同意性交等罪」は、これまでの性犯罪のあり方を大きく変えるものとなりました。
「知らなかった」「悪気はなかった」では決して済まされないのが法律の厳しさです。
お互いの尊厳を守るためにも、何が犯罪となるのかという正しい知識を身につけ、曖昧な状態での性的な行為は絶対に避けるという意識を持つことが大切です。
注意していても被疑者として逮捕されてしまう可能性もあります。仙台青葉ゆかり法律事務所では、不同意性交等罪で逮捕されてしまった方の弁護活動も行っております。






