ライブチャットはリアルタイムのビデオ映像を見ながら、チャットでの会話を楽しむことができるサービスです。近年、ライブチャットをわいせつな目的で利用することによる逮捕報道を目にする機会も多くなっています。
「ライブチャットで逮捕されるのはどのようなケースなのだろう?」「ライブチャットって何の犯罪が成立するの?」など、疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
今回は、ライブチャットに関連する犯罪、法定刑、ライブチャットで逮捕される可能性のある行為について解説します。
ライブチャットに関連する犯罪と法定刑
ライブチャットに関連して成立する可能性のある犯罪としては、次の4つが挙げられます。
ここでは、それぞれの犯罪が成立する要件と法定刑について解説します。
公然わいせつ罪
公然とわいせつな行為をした者には、公然わいせつ罪が成立します(刑法174条)。
ライブチャットは、不特定多数の人がアクセスできる場所なので公然性が認められます。そのため、ライブチャットでわいせつな行為を配信した場合、公然わいせつ罪が成立します。
「わいせつな行為」とは、性欲を刺激、興奮または満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為と定義されています。具体的には、性器を露出する行為や性行為、性的類似行為などがわいせつな行為に該当します。
公然わいせつ罪の法定刑は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または勾留もしくは過料です。
わいせつ電磁的記録媒体陳列罪
わいせつ電磁的記録媒体陳列罪は、わいせつな電磁的記録を頒布または公然と陳列した者に成立する犯罪です(刑法175条)。
たとえば、ライブチャットの配信に誘導するために、自分のSNSに自身のわいせつな画像やライブチャットの録画映像をアップすると、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪が成立します。
わいせつ電磁的記録媒体陳列罪の法定刑は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金もしくは科料、または懲役刑と罰金刑の併科です。
職業安定法違反
ライブチャットの配信者がわいせつ行為を配信するチャットレディを募集した場合には、職業安定法63条2号に違反する可能性があります。
職業安定法63条2号は、有害な業務に就かせる目的での職業紹介、求人募集を禁止する規定です。ライブチャットでわいせつ行為を配信することは、公然わいせつ罪に該当する違法行為なので、「有害な業務」に該当します。
職業安定法63条2号の法定刑は、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金です。
風俗営業法違反
ライブチャットでチャットレディにアダルトジャンルの配信を行わせることは、「専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること」といえるため、風俗営業法の「映像送信型性風俗特殊営業」に該当します(風俗営業法2条8項)。
風俗営業を行うには届出が必要です。無許可でアダルトジャンルのライブチャット業を行うと、無許可営業として6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または懲役刑と罰金刑が併科されます。
なお、チャットレディによる配信が公然わいせつ罪に該当しない場合であっても、風営法違反で処罰される可能性はあります。
ライブチャットで逮捕される可能性のある行為
ライブチャットでは、次のような場合でも犯罪が成立して逮捕される可能性があります。
それぞれの行為について具体的に解説します。
会員制のライブチャットで性器を露出した・性行為を配信した
有料の会員制ライブチャットでモザイクなしの性器を露出したり、性行為を配信したりすると、公然わいせつ罪で逮捕される可能性があります。
公然わいせつ罪における「公然」とは、不特定多数の人が認識し得る状態のことをいいます。たとえ、有料のサイトであっても、入会すればアクセスできるのなら公然性は否定されません。
日本国内でのわいせつ行為を海外サーバー経由で配信した
日本の刑法は、犯罪行為の一部でも日本国内で発生している場合に適用されます。
ライブチャットのサーバーが海外にある場合でも、映像内のわいせつ行為が日本国内で行われていた場合には、日本の刑法が適用されます。つまり、海外サーバーを利用する場合でも、公然わいせつ罪やわいせつ電磁的記録媒体陳列罪などの適用を免れることはできません。
海外サイトのチャットレディに登録してわいせつ行為を配信した
ライブチャットの運営元が海外の会社であっても、チャットレディが日本国内でわいせつ行為を配信した以上は、日本の刑法が適用されます。
海外のサイトでは、『逮捕される心配がない』としてチャットレディを募集している場合がありますが、海外サイトであっても、日本国内でわいせつ行為を配信すれば逮捕される可能性はあります。