未成年の飲酒が招く法律リスク:提供者の責任と処罰を詳しく解説

未成年の飲酒が招く法律リスク:提供者の責任と処罰を詳しく解説

民法の成人年齢が18歳になっても、「お酒とタバコは20歳から」というルールに変わりはありません。20歳未満の未成年者の飲酒は、現在でも法律で禁止されています。

コンビニや居酒屋が未成年者にお酒を提供した場合、重い処罰を受ける可能性があります。

今回は、未成年者の飲酒が招く法律リスクとして、親権者や提供者の責任と処罰などについて解説します。

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未成年者の飲酒を禁止する法律

未成年者の飲酒は、未成年者飲酒禁止法(20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律)で禁止されています。未成年者飲酒禁止法は、飲酒による悪影響から未成年者を保護することを目的に制定されたものです。

未成年者の飲酒を禁止する理由としては、次のものが挙げられます。

未成年者の飲酒を禁止する理由
  • 飲酒が脳の機能を低下させること
  • 飲酒により肝臓をはじめとする臓器に障害を起こしやすくすること
  • 飲酒により性ホルモンの分泌に異常が起きるおそれがあること
  • アルコール依存症になりやすくなること

未成年者飲酒禁止法は、未成年者を処罰の対象とはしていません。処罰の対象となるのは、未成年者の飲酒を制止しなかった親権者や監督代行者と未成年者に酒類を販売・提供した営業者です。

ただし、未成年者が飲酒した場合には、警察官による補導の対象となります。何度も補導されても飲酒を止めないときには、ぐはん少年として家庭裁判所に送致される可能性もあります

参照:20歳未満の者の飲酒防止の推進|国税庁

未成年者の飲酒を制止しなかった者の責任

未成年者の親権者や監督代行者は、未成年者の飲酒を制止する義務を負います。監督代行者とは、年長の兄弟や成人した職場の同僚など、親に代わって未成年者の飲酒を監督する立場にある人のことです。

未成年者の飲酒を知りながら制止しなかった親権者や監督代行者には、科料が科されます。科料とは、1000円以上1万円以下の金銭納付を命ずる刑罰のことです。刑罰としては軽いものですが、前科となるため注意が必要です。

たとえば、18歳の新入社員の歓迎会で、年長者の同僚が新入社員に飲酒を勧めた場合には、未成年者飲酒禁止法違反として科料を科される可能性があります。

未成年者にお酒を提供した者の責任

未成年者飲酒禁止法は、酒類を販売・供与する営業者が、未成年者に酒類を販売・供与することを禁止しています。これに違反した営業者には、50万円以下の罰金が科されます。

コンビニでお酒を購入する際や居酒屋でお酒を注文する際には、年齢確認を求められることが多いでしょう。これは、未成年者飲酒禁止法が営業者に年齢確認することを求めているためです。

未成年者飲酒禁止法に違反した営業者は、酒類販売業の免許が取り消される可能性もあります。個人営業の居酒屋などでは、罰金の支払いと免許の取消しによって、営業不能の状態に追い込まれることになるでしょう。

さらに、バーやスナックなどの風俗営業の営業者が未成年者にお酒を提供した場合、風営法違反として1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となる可能性もあります(風俗営業法50条、22条1項6号)。

酒類を提供・供与する営業者は、自分自身の身を守るためにも年齢確認を徹底することが重要です。

参照:酒類製造・販売業免許関係(共通)|国税庁

未成年者の飲酒に関してよくある質問

ここでは、未成年者の飲酒に関してよくある質問に回答します。

19歳の者が飲酒した場合はどうなる?

令和4年の民法改正によって、成人年齢は18歳に引き下げられました。しかし、未成年者飲酒禁止法の対象となるのは、20歳未満の者で変わりありません。

そのため、民法改正以降も、19歳の者が飲酒した場合、それを制止しなかった親や、酒類を提供したお店は未成年者飲酒禁止法による処罰の対象となります。

未成年者がお店に対して成人であると偽っていた場合はどうなる?

未成年者がお店に嘘をついて酒類を提供させた場合でも、お店が未成年飲酒禁止法による処罰の対象となる可能性があります。

酒類を提供するお店には、年齢確認を行う義務があります。身分証などの確認をせずに未成年者の言葉だけを信じてお酒を提供してしまった場合には、年齢確認の義務を果たしていないため、処罰される可能性があるでしょう。

ただし、未成年者が身分証を偽造しており、お店として見抜くのが難しい状況であったのなら、処罰される可能性は低くなります。

お店で責任者ではない従業員が罪に問われることはある?

未成年者飲酒禁止法で処罰の対象となるのは、原則としてお店の責任者です。そのため、お店の従業員が未成年者にお酒を提供した場合でも、処罰の対象となるのは従業員ではなく責任者です。

ただし、風営法違反の事例については、従業員も含めて処罰の対象となります。実際、風営法違反の事例では、責任者と従業員がまとめて逮捕されるケースが多いです。