ストーカー規制法とは?つきまといで逮捕されたら?

ストーカー規制法とは?つきまといで逮捕されたら?

恋愛感情が行き過ぎた結果、自宅までついていってしまう、大量にメールを送ってしまうなどした場合、ストーカー規制法違反により逮捕される可能性があります。どのような行為がストーカー規制法で犯罪とされるのでしょうか。また、もし法に触れてしまった場合にはどのような対応をすべきなのでしょうか。

本記事ではストーカー規制法とはどのようなものか違反した場合の対策について解説します。

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ストーカー規制法とは

ストーカー規制法とは、正式名称をストーカー行為等の規制等に関する法律といい、いわゆるストーカー行為・ストーキングを規制する法律です。

1999年に発生した桶川ストーカー殺人事件を契機に制定されました。この事件では、恋愛関係がもつれてストーカー行為の被害に遭うも、警察が適切な対応を取らなかった結果、被害者が殺害されるに至りました。この事件が報道されたことで、ストーカー行為を規制する必要性が認識され、議員立法で制定されました。

ストーカー規制法によって犯罪となる行為とは

ストーカー規制法によって犯罪となる行為には次のものが挙げられます。

ストーカー規制法によって犯罪となる行為
  • ストーカー行為(ストーカー規制法第18条)
  • 接近禁止命令等に違反するストーカー行為(ストーカー規制法第19条第1項)
  • 接近禁止命令等に違反してつきまとい等又は位置情報無承諾取得等をすることによるストーカー行為(ストーカー規制法第19条第2項)
  • 接近禁止命令等に違反する行為(ストーカー規制法第20条)

以下内容を確認しましょう。

ストーカー行為

ストーカー規制法によって犯罪となる行為として、ストーカー行為が挙げられます(ストーカー規制法第18条)。

ストーカー行為については、ストーカー規制法第2条第4項で次のように規定されています。

「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)又は位置情報無承諾取得等を反復してすることをいう。引用:ストーカー行為等の規制等に関する法律|e-Gov法令検索

つきまとい行為について、同じくストーカー規制法では次のように定めています。

この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。

四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。

以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。引用:ストーカー行為等の規制等に関する法律|e-Gov法令検索

つきまとい行為に該当するためには、次の3つが必要です。

つきまとい行為に該当する3つの条件
  1. 特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的
  2. 当該特定の者又はその配偶者・直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対して
  3. ストーカー規制法第2条第1項第1号~第8号に該当する行為

そして、つきまとい行為のうち、次の項目については身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限ります。

つきまとい行為
  • つきまとう
  • 待ち伏せする
  • 進路に立ちふさがる
  • 住居・勤務先・学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所の付近を見張る
  • 住居等に押し掛ける
  • 住居等の付近をみだりにうろつく
  • その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知り得る状態に置くこと
  • 面会・交際その他の義務のないことを行うことを要求する
  • 著しく粗野又は乱暴な言動をすること
  • 電子メールの送信等

冒頭のつきまとう行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合にはストーカー行為として処罰の対象です。

ストーカー行為を行うと、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が課せられます。

接近禁止命令等に違反するストーカー行為(ストーカー規制法第19条第1項)

接近禁止命令等に違反するストーカー行為(ストーカー規制法第19条第1項)が挙げられます。

ストーカー禁止法3条は、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせることを禁止しています。更に反復して上記の行為をするおそれがある場合、都道府県公安委員会は加害者に対して接近禁止命令ができます(ストーカー規制法第5条)。この接近禁止命令等に違反してストーカー行為を行った場合、単純なストーカー行為よりも重い、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。

なお、位置情報無承諾取得等とはGPS機器等の位置情報を取得すること・GPS機器等を取り付けることによって位置情報を取得することをいいます(ストーカー規制法第2条第3号)。

接近禁止命令等に違反してつきまとい等・位置情報無承諾取得等をすることによるストーカー行為

接近禁止命令等に違反して、つきまとい等・位置情報無承諾取得等をすることも、ストーカー行為をすることと同様に禁止されており、同じく2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が課せられます(ストーカー規制法第19条第2項)。

接近禁止命令等に違反する行為

単に接近禁止命令等に違反した場合、ストーカー規制法第20条に違反し、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金が課せられます。

ストーカー規制法に違反した場合のリスクと対応方法

ストーカー規制法に違反した場合のリスクと対応方法を知っておきましょう。

ストーカー規制法に違反した場合のリスク

ストーカー規制法に違反すると、接近禁止命令を受けるほか、犯罪として逮捕・起訴されるリスクがあります。逮捕された場合には家族関係にヒビが入るほか、身柄拘束されていることから会社に出社・連絡ができず、不利益を被ることになります。また、被害者から民事訴訟を起こされ、損害賠償の支払い義務が発生する場合があります。

ストーカー規制法に違反した場合の対応方法

ストーカー規制法に違反した場合に避けなければならないのが逮捕・起訴されることで、すでに逮捕されている場合には早期に身柄を解放してもらえるようにしなければなりません。そのために有効なのは被害者と示談することです。もっともストーカー行為を行った場合には示談のために接触することも通常は困難です。弁護士に依頼して示談をすることをおすすめします。

まとめ

本記事ではストーカー規制法について解説しました。

恋愛感情が行き過ぎた結果発生するストーカー行為は、ストーカー規制法により処罰される可能性があります。法律自体が非常に複雑であり、具体的行為がそれに該当するか分かりづらい場合もあります。弁護士に相談して被害者との示談が必要かなどの相談を早めにおこないましょう。