
デリヘルなどの風俗店を利用した際に、いわゆる本番行為を強要してしまい、キャスト・店舗スタッフとトラブルになることがあります。この場合、本番行為を強要したことについて、不同意性交等罪となるのでしょうか。
本記事では、デリヘルで本番行為を強要した場合に不同意性交等罪が成立するのか、本番行為を強要してしまった場合の対応方法などについて解説します。
本番行為とは
風俗における本番行為とは、性交をすることをいいます。
売春防止法において、売春について「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義されています(売春防止法第2条)。そのため、風俗店において有償で本番行為をすることは、売春防止法に違反します。そのため、風俗店においては本番行為は表向き禁止です。
なお、ソープランドでは、男性と女性従業員が自由恋愛の体裁を取る形態となっているため、売春防止法には違反しないとされています。
本番行為を強要した場合には不同意性交等罪は成立するか
本番行為を強要した場合には不同意性交等罪は成立するのでしょうか。
不同意性交等罪
下記の状態に陥れ、またはその状態を利用して、性交等を行った場合には、不同意性交等罪が成立します(刑法第177条)。
- 暴行もしくは脅迫を行う
- 心身の障害を生じさせる
- アルコールもしくは薬物を摂取させる
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
- 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させる
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
- 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる
- 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせる
- 行為をする者について人違いをさせる
- 16歳未満の者
なお、性交等とは
- 性交
- 肛門性交
- 口腔性交
- 膣もしくは肛門に陰茎以外身体の一部もしくは物を挿入する行為であってわいせつなもの
以上の行為をすることをいいます。
なお、不同意性交等罪はかつて強姦罪・強制性交等罪と呼ばれていましたが、処罰範囲を拡大する改正を経て現在のように呼ばれています。
本番行為は不同意性交に該当する可能性がある
本番行為は不同意性交等にあたるのでしょうか。
単にキャストと合意の上で本番行為をした場合には、以上の列挙事由に該当しません。
しかし、それまでのやりとりによって、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない」「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させる」などに該当したり、酒を飲ませたり睡眠薬を飲ませたような場合には「アルコールもしくは薬物を摂取させる」、「睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる」などが該当することがあります。
この場合、不同意性交に該当する可能性があるでしょう。
後に同意がなかったと主張されることにも注意
行為の最中には同意があるように見せかけ、後に同意がなかったと主張される可能性もあるので注意しましょう。
行為の最中にはキャストが同意があるように見せかけ、本番行為をした後に、「同意なく本番行為が行われた」と主張し、トラブルになることもあります。風俗店では本番行為を禁じているため、同意があったと主張しても認められず、トラブルになる可能性が高いです。
本番行為が不同意性交等罪にあたる場合どうなるのか
本番行為が不同意性交等罪にあたる場合、その後どうなるのでしょうか。
風俗店から金銭を請求される可能性が高い
風俗店から金銭を請求される可能性が高いです。
風俗店では本番行為に及んだ場合に、違約金などの金銭を請求する旨掲示していることが多いです。またそのような掲示が無くとも、刑事事件にすることを示唆して罰金を請求することも考えられます。
とくに注意が必要なのが、その場で名刺を渡すように要求されることです。これに応じてしまうと職場にまで連絡される可能性があります。
刑事事件として逮捕される
風俗店が警察に訴え出れば刑事事件として取り扱われ、ケースによっては逮捕され、有罪となる可能性もあります。
風俗店で本番行為をした場合でも、示談ができれば、多くの場合、刑事事件としては取り扱われないことがほとんどです。もっとも、店によっては厳格な対応を取る方針である場合や、被害者が刑事罰を望んでいるような場合には、被害届が提出される・告訴がされるなどで刑事事件として扱われる可能性があります。
風俗店で本番強要でトラブルになっている場合には早めに弁護士に相談
本記事では、風俗店での本番強要が不同意性交等罪にあたるのかを中心に解説しました。
本番を強要した場合、不同意性交等罪に該当することがあり、最悪のケースでは刑事事件に発展する可能性があります。早い段階で示談ができれば刑事事件になる可能性は低いですが、その場合でも金銭の支払い額などでトラブルになることも多いです。本番強要でトラブルになった際には、早めに弁護士に相談しましょう。