
刑事事件の被疑者になってしまった場合、弁護士に刑事弁護をしてもらう必要があります。刑事弁護には、国選弁護人と私選弁護人の2種類がありますが、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
本記事では、国選弁護人と私選弁護人の違いと、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
国選弁護人・私選弁護人とは?
国選弁護人と私選弁護人とはどのようなものでしょうか。またその違いにはどのようなものがあるのでしょうか。
国選弁護人とは
国選弁護人とは、経済的困窮などの理由で私選弁護人を選任できない場合に、国費で裁判所が選任する弁護人のことをいいます。
憲法第37条3項は「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」と規定しており、刑事事件で被告人となった人に対して、国が弁護人を選任することを定めています。
国選弁護人は、被疑者が勾留された後の「被疑者国選弁護」(刑事訴訟法第37条の2)と、起訴されて被告人となった後の「被告人国選弁護」(刑事訴訟法第36条)に分かれます。
法律の規定に従って選任される弁護人は、弁護士の中から選任されます(刑事訴訟法第38条)。
私選弁護人とは
私選弁護人とは、自分や家族などの弁護人選任権者が、費用を払って選任する刑事弁護人のことをいいます。もちろんこの場合も弁護士が選任されます。
国選弁護人と私選弁護人の違い
国選弁護人と私選弁護人には次のような違いがあります。
費用の支払いの要否
国選弁護人と私選弁護人の違いとして、費用の支払いの要否が挙げられます。
国選弁護人は国が費用を支払うので、被疑者・被告人は費用を払う必要がありません。一方で私選弁護人は自分や弁護人選任権者が自ら費用を支払う必要があります。
自分で弁護士を選べるかどうか
国選弁護人と私選弁護人の違いとして、自分で弁護士を選べるかどうかが異なります。国選弁護人については、裁判所が名簿に登録した弁護士を順番に選任するため、依頼する人が自分で選任ができません。一方で私選弁護人の場合は自分で契約をするため、弁護士を選ぶことができます。
弁護人として選任できる時期
国選弁護人と私選弁護人の違いとして、弁護人として選任できる時期が異なります。国選弁護人については勾留後に選任が可能ですが、私選弁護人はいつでも選任ができます。そのため、逮捕される前から弁護人として選任ができます。
国選弁護人・私選弁護人のメリット・デメリット
国選弁護人・私選弁護人のメリット・デメリットを確認しましょう。
国選弁護人のメリット
国選弁護人のメリットは費用がかからないことです。
弁護士に依頼する場合には、相談料・着手金・報酬金などの費用を支払う必要があります。費用の支払いは通常一括でするので、その費用の支払いができない場合、国選弁護人が利用できることはメリットといえます。
国選弁護人のデメリット
国選弁護人のデメリットとして次の2つが挙げられます。
自分で弁護士が選べない
自分で弁護士が選べないのが国選弁護人のデメリットの1つです。
国選弁護人は、裁判所が名簿の中から選任します。そのため、ケースによっては刑事事件に詳しくない、熱心な弁護活動をしてくれない、という弁護士にあたる可能性があります。
勾留まで弁護士がつかない
勾留まで弁護士がつかないことが、国選弁護人のデメリットの1つです。
国選弁護人が選任されるのは勾留後であり、それまでの間は弁護人がいない状態です。刑事事件においては、早い段階から自首したり被害者と示談するなどによって、逮捕や起訴をされないようにできることがあります。また、無実なのであれば、早い段階から無実であるという証拠や証言を収集する必要があります。国選弁護人は勾留まで選任されないので、逮捕や起訴前の弁護活動を受けられないという大きなデメリットがあります。
なお、被疑者段階では、無料で弁護士に1度相談できる「当番弁護士」という制度があります。ただし、これは国の制度ではなく、弁護士会が提供するものです。
私選弁護人のメリット
私選弁護人のメリットは、自分で弁護士を選べること、勾留前の段階から弁護活動によってサポートを受けられることです。
刑事事件に強く、熱心にサポートしてくれる弁護士を自分で選任し、弁護活動を早い段階からしてもらうことで、逮捕や起訴を免れる可能性が高まります。
私選弁護人のデメリット
一方で私選弁護人のデメリットとしては費用がかかることが挙げられます。
まとめ
本記事では、国選弁護人と私選弁護人の違いと、メリット・デメリットを中心に解説しました。
費用をかけずに選任できる国選弁護人ですが、勾留されるまで選任されず、刑事事件に強い弁護士に弁護活動をしてもらえないことがあります。逮捕や起訴をされることを避けたい場合には、早い段階から弁護活動ができる弁護士に依頼することをお勧めします。