
大麻取締法は、令和5年12月6日に改正法が成立し、令和6年12月12日に改正法が施行されました。法律の改正後、大麻の不正施用は、麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)によって規制されます。そのため、改正後の大麻の規制内容を知るには、旧大麻取締法だけでなく、麻薬取締法の理解も必要です。
今回は、大麻取締法の従来の規制について解説したうえで、大麻取締法と麻薬取締法の改正のポイントを解説します。現在の大麻の規制内容について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
大麻取締法とは?従来の規制について
大麻取締法(改正前の旧大麻取締法)における「大麻」とは、大麻草や大麻樹脂およびそれらを成分とする製品のことを言います(旧大麻取締法1条)。
旧大麻取締法は、大麻の所持、譲り受け、譲り渡しを規制する法律でした(同法3条1項)。旧大麻取締法には、大麻の使用についての罰則はありません。従来、大麻の使用については、大麻を所持していたとして検挙されてきました。
旧大麻取締法の規制内容をまとめると、次の表のようになります。
規制の対象 | 罰則 |
大麻の栽培、輸入、輸出 | 7年以下の懲役 |
営利目的での栽培、輸入、輸出 | 10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金 |
大麻の所持、譲り受け、譲り渡し | 5年以下の懲役 |
営利目的での所持、譲り受け、譲り渡し | 7年以下の懲役または7年以下の懲役および200万円以下の罰金 |
大麻取締法改正のポイント
ここからは、旧大麻取締法についての理解を前提に、令和6年12月12日に施行された改正法のポイントを解説します。
抑えておくべき改正のポイントとしては、次の3つが挙げられます。
- 法律の名称が「大麻草の栽培の規制に関する法律」に変更
- 大麻の使用が規制対象に(規制対象の拡大・厳罰化)
- 医療用大麻の解禁
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
参照:令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます|厚生労働省
法律の名称が「大麻草の栽培の規制に関する法律」に変更
改正により、大麻取締法の名称は「大麻草の栽培の規制に関する法律」に変更されました。
旧大麻取締法の規制対象とされていた「大麻」の所持や栽培などは、新法の規制対象からは外されています。新法では、「大麻」ではなく「大麻草の栽培」を規制する法律に改正されたのです。
大麻草の栽培については、産業用と医療用の2種類の免許制が導入されました。新法では、免許なしに大麻草を栽培した人に対する罰則を規定しています。
大麻の使用が規制対象に(規制対象の拡大・厳罰化)
改正後は、従来は規制の対象外となっていた大麻の使用が規制対象となります(大麻使用罪)。大麻使用罪は、「大麻草の栽培の規制に関する法律」ではなく麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)で処罰されます。これに伴い、従来は旧大麻取締法で処罰されていた、大麻の所持や栽培などが、すべて麻薬取締法で処罰されることになりました。
大麻の規制について、従来の罰則と改正後の罰則を比較したものが、次の表です。
規制の対象 | 罰則(改正前) | 罰則(改正後) |
大麻の使用 | なし | 7年以下の懲役 |
営利目的での使用 | なし | 10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金 |
大麻の栽培、輸入、輸出 | 7年以下の懲役 | 1年以上10年以下の懲役 |
営利目的での栽培、輸入、輸出 | 10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金 | 1年以上20年以下の懲役または1年以上の20年以下の懲役および500万円以下の罰金 |
大麻の所持、譲り受け、譲り渡し | 5年以下の懲役 | 7年以下の懲役 |
営利目的での所持、譲り受け、譲り渡し | 7年以下の懲役または7年以下の懲役および200万円以下の罰金 | 10年以下の懲役または10年以下の懲役および300万円以下の罰金 |
なお、罰則が規定されているのは、改正前は旧大麻取締法、改正後は麻薬取締法となっています。
医療用大麻の解禁
旧法は、大麻取扱者以外が大麻を所持や譲り受けなどをすることを禁止していたため、大麻から製造された医薬品(医療用大麻)の使用も禁止されていました。新法では、医療用大麻の使用を禁止する規定が排除され、大麻の所持や使用などは麻薬取締法で規制されます。
結果として、医療用大麻の使用を禁止する規定はなくなり、改正後は医療用大麻の使用が解禁されました。もちろん、使用が許されるのは「医療用」大麻のみで、娯楽目的での使用は麻薬取締法による処罰対象となります。
麻薬取締法で検挙されたらすぐに弁護士に相談を
今後、大麻の所持や使用などは、麻薬取締法で処罰されます。罰則は旧大麻取締法から強化されており、麻薬取締法で検挙された際には重い処分が見込まれます。
麻薬取締法で検挙されてしまったときは、すぐに弁護士に相談すべきです。刑事事件に強い経験豊富な弁護士に相談することで、重い処罰を回避し、早期釈放の可能性を高められます。