
盗撮で逮捕された場合、気になるのはどのような刑罰が下るかではないでしょうか。特に昨今盗撮については新たな法律によって性的姿態等撮影罪が定められ、厳罰化されることになっています。
そこで本記事では、盗撮で初犯で逮捕された場合どのような刑罰に処せられるのか、執行猶予は下されるのかなどについて解説します。
盗撮で成立する可能性のある犯罪
まず、盗撮でどのような犯罪が成立するのかについて確認しましょう。
性的姿態等撮影罪(撮影罪)
盗撮で性的姿態等撮影罪が成立します。
令和5年7月13日以後は「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」)2条によって盗撮行為が処罰されます。撮影罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
迷惑防止条例違反
令和5年7月12日より前の盗撮行為については、各都道府県の迷惑防止条例違反が成立します。
例えば、宮城県では宮城県迷惑防止条例第3条の2第1項第3号や、同第3項・第4項で盗撮行為が禁止されています。宮城県迷惑防止条例違反の法定刑は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。ただし、常習である場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金となるので注意しましょう。
軽犯罪法
同じく令和5年7月12日より前の盗撮には軽犯罪法違反が成立します。
「正当な理由なく人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為」は軽犯罪法第1条23号で禁止されています。軽犯罪法第1条23号の法定刑は拘留または科料です。
住居侵入罪・建造物侵入罪
盗撮する場所次第では、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する可能性があります。
他人の住宅の中に侵入して盗撮をした場合には住居侵入罪が成立します。また他人が管理している建造物に侵入して盗撮をした場合には建造物侵入罪が成立します。住居侵入罪・建造物侵入罪には、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が定められています。
なお、住居侵入罪・建造物侵入罪は盗撮のために行う目的・手段の関係にあり、この場合刑法第54条により、もっとも重い罪により処断されることになっています。撮影罪が成立する場合には撮影罪のほうが重いのですが、迷惑防止条例や軽犯罪法との関係では住居侵入罪・建造物侵入罪のほうが重くなるので注意が必要です。
盗撮罪で逮捕された場合の量刑の相場
盗撮罪で逮捕された場合の量刑の相場はどうなるのでしょうか。
盗撮は比較的軽微な犯罪の部類に入るので不起訴となることが多い
まず、盗撮については逮捕されたとしても不起訴となることが多いことを知っておきましょう。
前述のように改正によって法定刑が引き上げられたとはいえ、盗撮罪の上限は3年の拘禁刑(現在は懲役)もしくは300万円以下の罰金です。重大な犯罪として知られる強盗罪は5年以上の有期懲役、窃盗罪で10年以下の懲役なので、これらに比べると盗撮罪の法定刑は軽く、犯罪全体的に見ても軽微な犯罪の部類に入ります。そのため、盗撮では不起訴処分となることが多いです。
どのような場合に不起訴になりやすい・起訴されやすいのか
次のような事情があると不起訴処分となりやすいとされています。
- 初犯である
- 犯行が悪質ではない
- 被害者と示談が済んだ
- 罪を認めて反省をしている
これらの事情がない場合には逆に起訴されやすいことになります。
盗撮罪の初犯の量刑相場
盗撮罪の量刑の相場として、初犯で公共の場所で女性のスカートの中をスマートフォンで撮影した場合で、示談をしていない場合、罰金30万円程度が相場といわれています。
ここから、犯行の悪質性・示談が済んでいるか・罪を認めて反省しているかなどを勘案して、刑事裁判で刑罰が決まります。
執行猶予はつくのか
盗撮をした場合、執行猶予はつくのでしょうか。
執行猶予は、禁錮以上の刑を受けたことがない者が3年以下の懲役・禁錮、または50万円以下の罰金を言い渡す場合につけることができます。
なお、禁錮以上の刑に処せられたことがある場合でも、その執行を終えた日から5年以上が経過していれば執行猶予がつくことがあります。
盗撮罪の初犯である場合には執行猶予がつくことが多いです。
盗撮で逮捕・起訴されないためには
盗撮をしてしまい事件になっている場合に、逮捕・起訴されないためには、被害者との示談が欠かせません。
逮捕は逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に行われるのですが、被害者と示談が済んでいると逃亡や証拠隠滅を疑われずに済むことがあります。また、被害者との示談は、検察が起訴を見送る可能性を高める要因となります。
もっとも、盗撮相手と示談交渉をすることは難しく、相手や連絡先がわからない場合には警察が加害者に直接教えてくれることは期待できません。また、すでに逮捕されてしまっている場合には示談を進めることができません。
示談は弁護士に依頼して行う必要があるので、盗撮で逮捕・起訴されないようにするためにも、すぐに弁護士に相談・依頼して適切な対応を検討しましょう。
まとめ
本記事では盗撮の初犯で逮捕された場合の量刑の相場や執行猶予などを中心に解説しました。
盗撮は厳罰化の方向で改正されましたが、それでも量刑としては比較的軽いので、適切な対応をすれば逮捕・起訴を避けられます。早めに弁護士に相談して、生活への影響を最小限に抑えましょう。