
盗撮が発覚して刑事事件になると、多方面に影響が及びます。その中でも特に大きいのが、仕事への影響です。公務員である場合、民間では解雇に相当する懲戒免職や、減給などの処分のほか、出世などへの影響が考えられます。
本記事では、公務員が盗撮をした場合にどうなるのか、仕事への影響について解説します。
盗撮するとどのようなペナルティを受けるのか
盗撮をするとどのような法的なペナルティを受けるのでしょうか。
刑事事件になり逮捕・起訴される可能性
盗撮行為は、刑事事件として扱われる可能性があります。
令和5年7月13日に新設された撮影罪のほか(それ以前は都道府県の迷惑防止条例)、住居・建造物侵入罪、軽犯罪法など、盗撮行為を犯罪とする法令があり、これらの規定により、刑事事件として立件される可能性があります。
新設された撮影罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金であり、現に撮影罪で公務員が逮捕されている事例は宮城でも発生しています。
撮影罪については「撮影罪とは?性的姿態撮影等処罰法で罪になる5つの行為」で詳しく解説しているので参考にしてください。
民事事件として損害賠償が請求される
民事事件として損害賠償を請求されます。
盗撮の被害者は、民法第709条に基づく不法行為損害賠償請求権により、加害者に対して損害賠償を請求することができます。損害賠償額の相場は、50万円から100万円程度とされていて、盗撮の頻度や回数、インターネットへの公開などによって賠償額が異なります。
たとえば、盗撮した画像をもとにSNSアカウントを作成して公開した事例において、88万円の損害賠償が認められています。
雇用関係に影響する
雇用関係に影響する可能性があります。
民間企業では会社から、公務員の場合には自治体から懲戒処分を受ける可能性があります。盗撮などの性犯罪には厳しい対応が取られることが多く、解雇・懲戒免職となる可能性があります。宮城県でも仙台市の中学校教諭が盗撮をしていたとして懲戒免職となった事例があります。
その他
そのほかには、これまで述べてきたとおり、盗撮によって逮捕されニュースになってしまったり、仙台市では盗撮をした職員が現行犯逮捕されたことを公表しています。
家族や知人などに知られてしまい、離婚の原因になるなどの可能性があります。
公務員が盗撮をした場合の仕事への影響
公務員が盗撮をした場合の仕事への影響についてフォーカスしてみましょう。
懲戒処分
公務員は、一定の行為により懲戒処分を受けることが法令で定められています(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
国家公務員・地方公務員問わず、職務に忠実であるとともに、信用を失墜させる行為をしてはならないとされています(国家公務員法第99条・地方公務員法第33条)。盗撮は信用を失墜させる行為であり、「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」(国家公務員法第82条第1項第3号・地方公務員法第29条第1項第3号)として懲戒処分の対象です。
公務員の懲戒処分には次の4つがあります。
- 免職:職を失わせる(退職金もなし)
- 停職:職を一時停止させる
- 減給:給与を減額する
- 戒告:口頭や文書による厳重な注意を与える
盗撮で行われた懲戒処分については次のものがあります。
- 4月から7月までの間に当時勤務していた中学校の校内に小型カメラを設置して盗撮していた:免職
- 3,4年前から2週間に1回程度のペースで盗撮をしており、悪質で常習性も高い:免職
- 仙台市内の飲食店のトイレ内に盗撮目的で小型のデジタルカメラを録画状態で設置した・職員同士の懇親会で、女性職員に対して性的な言動を繰り返していた:停職6ヶ月
- 宮城県警の警察官が、女性のスカートの中を盗撮したとして罰金50万円の略式命令を受けた:減給3ヶ月
盗撮を行った場合、懲戒免職や停職・減給などの処分を受けることは避けられないでしょう。
出世などに影響することも
公務員は懲戒処分を受けると人事システムに処分内容が登録されることになっています。その結果、免職を免れたとしても出世などに影響する可能性は高いでしょう。
盗撮について刑事事件化しないようにする
盗撮をしてしまった場合、刑事事件に発展するのを防ぐためには、できるだけ早急に対処する必要があります。
刑事事件化しないための対策の中でも最も重要なのが被害者と示談を進めることです。もっとも盗撮の加害者は被害者と示談に向けて話し合うこと自体が難しいです。そのため、早めに弁護士に相談し、依頼することが重要です。
まとめ
本記事では公務員が盗撮をするとどうなるのか、仕事に影響があるのかについて解説しました。
公務員が盗撮を行うと、刑事・民事の両面で責任を追及されるだけでなく、懲戒処分によって公務員としてのキャリアが台無しになり、再就職も難しくなることが避けられません。もし盗撮をしてしまった場合には、なるべく早い段階から弁護士に依頼し、刑事事件化を防ぐための対応を早期に講じるようにしましょう。