
近年、SNSの普及もあり盗撮動画がネットに流出するという事件が多くなっています。そのような状況から、2023年7月に「性的姿態撮影等処罰法」が施行され、盗撮行為は従来より重く処罰されることになりました。
ネットに盗撮動画を流出させてしまった場合、逮捕されたり、初犯でも実刑判決を受けたりする可能性はあるのか、不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、盗撮動画をネットに流出させた場合について、成立し得る犯罪や刑罰、予測される刑事処分などを解説します。
盗撮した場合に成立し得る犯罪とは
かつて、盗撮した場合に成立し得る犯罪は、迷惑防止条例違反や敷地・建物内への侵入を伴う場合の住居侵入罪など、比較的軽い刑罰の犯罪のみでした。
しかし、2023年7月に「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の撮影に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下、「性的姿態撮影等処罰法」と呼びます。)が施行され、盗撮行為が従来より重く処罰されることとなりました。
ここでは、性的姿態撮影等処罰法と迷惑防止条例について、処罰の対象となる行為や罰則などを解説します。
性的姿態撮影等処罰法
性的姿態撮影等処罰法で処罰の対象となる主な行為としては、次のものが挙げられます。
- 正当な理由がないのに性的姿態等を撮影する行為
- 自分の意思で同意できる状態にない被害者を撮影する行為
- 被害者を誤信させて対象性的姿態等を撮影する行為
- 性的映像記録を第三者に提供する行為
- 性的映像記録を不特定多数に提供する行為、公然と陳列する行為
盗撮は、正当な理由がないのに性的姿態等を撮影する行為として、盗撮動画をネットに流出させる行為については、性的映像記録を公然と陳列する行為として性的姿態撮影等処罰法の処罰対象となる可能性があります。
正当な理由がないのに性的姿態等を撮影する行為については、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、性的映像記録を公然と陳列する行為については、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(併科される場合もある)に処せられます。
迷惑防止条例
迷惑防止条例で規制の対象となる行為や罰則は各都道府県によって異なります。たとえば、東京都の迷惑防止条例では、盗撮行為について1年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則が規定されています。
性的姿態撮影等処罰法の施行後は、迷惑防止条例で処罰の対象とされていなかった行為で処罰されたり、同じ行為でもより重い刑罰が科されたりするケースが多くなるでしょう。
盗撮動画をネットに流出させたらどうなる?
ここでは、性的姿態撮影等処罰法の適用を前提に、盗撮動画をネットに流出させた場合に成立する犯罪と逮捕された場合の流れについて解説します。
成立する犯罪
盗撮動画をネットに流出させると、性的影像記録提供等罪で処罰される可能性があります。性的影像記録提供等罪の構成要件は、次のとおりです。
- 正当な理由なくひそかに性的姿態等を撮影した性的映像記録を
- 公然と陳列したこと
性的姿態等とは、次のいずれかを指します。
- 人の性的な部位(性器や臀部、胸部など)
- 人が身に着けている下着のうち性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分(ブラジャーやパンティー、水着など)
- わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態(性行為中の姿態など)
公然と陳列したとは、不特定多数の者が閲覧できる状態に置くことを指します。ネットに盗撮動画を流出させると、不特定多数の者が閲覧できる状態になるため公然と陳列したと言えます。
逮捕された場合の流れ
盗撮動画の流出については、警察による家宅捜索から逮捕に至るケースが多くなっています。逮捕後は、72時間以内に勾留するか釈放するかの判断が行われます。盗撮動画の流出で逮捕された場合、勾留請求されるケースがほとんどです。
勾留は、最長10日間で捜査の必要性がある場合にはさらに10日間延長される可能性があります。つまり、逮捕・勾留の期間を合わせると最長で23日間の身体拘束を受けることになります。
起訴されてしまった場合、有罪判決は免れません。有罪判決で前科がつくと、社会生活において大きな不利益を受けることになります。起訴を避けるには、逮捕・勾留の段階で被害者との示談交渉を進めるなどして不起訴処分を目指す必要があります。
盗撮動画の流出で逮捕されたら弁護士に相談すべき
盗撮動画の流出で逮捕されたら、早急に弁護士に相談・依頼すべきです。
盗撮動画の流出で逮捕されると、被害者との示談が成立しない限り、起訴されて有罪判決を受ける可能性が極めて高いでしょう。逮捕されている状況において、被害者との示談交渉を進めるには、弁護士への依頼が不可欠です。
さらに、弁護士に依頼すると、今後の流れや取り調べの対応方法のアドバイスをもらえるため、逮捕・勾留中の不安を軽減できます。
身体拘束の期間を短縮したり、刑事処分をできる限り軽減するためにも、盗撮動画の流出で逮捕されたらできる限り早く弁護士に相談することをおすすめします。