

家宅捜索のタイミングを事前に知ることはできますか?家宅捜索に備えて準備しておくことはあるでしょうか。

在宅事件の場合、家宅捜索のタイミングを事前に予測することはできません。
被疑者に家宅捜索のタイミングが知られると、証拠を隠されるおそれがあるため、家宅捜索は予想もしないタイミングで突然行われます。
家宅捜索を拒否することはできないため、家宅捜索を受けた際は、令状の内容を確認し、落ち着いて従うようにしてください。
今回は、家宅捜索とは何かを理解するために、家宅捜索の要件や流れ、対処方法などを解説します。
家宅捜索とは捜索差押のこと
家宅捜索は、法律上の用語ではありません。家宅捜索の正式名称は「捜索差押」といいます。捜索差押は、家宅捜索の他にも「ガサ入れ」と呼ばれることもあります。
捜索差押とは、捜査機関が犯罪の証拠を集めるために、被疑者や関係者の自宅や勤務先などを捜索し、差し押さえる手続きのことです。
捜索差押を行うには、裁判官から捜索差押許可状の発布を受ける必要があります。
捜索差押は、逮捕や勾留などと同様に、被疑者の意思にかかわらず行える強制処分です。
捜査機関が被疑者に捜索差押許可状を示して捜索差押を行う場合、被疑者は捜索差押を拒否することはできません。
家宅捜索の要件
捜索差押を行うには、裁判官から捜索差押許可状の発布を受ける必要があります。
刑事訴訟法218条1項は「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」を令状発布の要件としています。しかし、捜査の必要さえあれば、常に令状の発布が認められるわけではありません。
捜索差押は、被疑者のプライバシーを侵害するものです。そのため、捜査の必要性があると認められるには、次の4つの要件を満たす必要があります。
- 犯罪の嫌疑があること
- 犯罪と捜索の目的物に関連性が認められること
- 目的物が捜索場所に存在する蓋然性(可能性)があること
- 捜索差押という手段に必要性と相当性があること
わかりやすく言うと、捜索差押が行われるのは、犯人としての疑いが高まった状況で、場所や対象の目的物を限定して行われなければなりません。
捜索差押は、被疑者のプライバシーを侵害する捜査手続であるため、容易に認められるものではない点を覚えておきましょう。
家宅捜索の流れ
ここでは、家宅捜索が行われるタイミングや家宅捜索の流れ、家宅捜索の範囲や対象について解説します。
家宅捜索のタイミング
家宅捜索が行われるタイミングに法律上の決まりはありません。多くは起訴前の捜査段階で行われますが、起訴後に行われるケースもあります。
起訴前の家宅捜索についても、逮捕前に行われるケースもあれば、逮捕後に行われるケースもあります。逮捕前に家宅捜索が行われる場合、タイミングを予想するのは難しいでしょう。
実際、予期していなかったタイミングで警察官が自宅を訪れ、捜索差押から逮捕に至るケースも少なくありません。
何らかの犯罪を犯してしまった場合、何の前触れもなく家宅捜索を受ける可能性があるのです。
家宅捜索の流れ・対象
家宅捜索は、捜索を受ける対象者に捜索差押許可状を提示して、内容を読み上げてから実施されます。
その際、罪名や差し押さえの対象となる物、捜索する場所などが読み上げられますので、聞き逃さないよう注意が必要です。
家宅捜索は、令状に記載された場所に限って行われます。被疑者の自宅のみが捜索場所となっている場合、被疑者の職場や車などを捜索することは許されません。
捜索の結果、差し押さえられるのも、令状に記載された物のみです。最後に押収物のリストが読み上げられるので、対象外の物が含まれていないかについては十分に確認すべきです。
なお、被疑者が逮捕されている場合は、同居人や管理人などが家宅捜索に立ち会います。捜査機関が誰の立ち合いもなしに家宅捜索を行うことはありません。
家宅捜索への対処方法
家宅捜索への対処方法としては、次の3つが挙げられます。
- 捜索差押令状の内容を確認する
- 何が押収されたのかを確認する
- 弁護士に相談する
それぞれの対処方法について具体的に解説します。
捜索差押令状の内容を確認する
家宅捜索の開始時には、捜索差押許可状の内容が読み上げられるため、その内容をしっかり確認しておくことが重要です。特に、次の内容については十分に確認してください。
- 被疑者もしくは被告人の氏名
- 罪名
- 差し押さえるべき物
- 捜索すべき場所・物・身体
まずは、被疑者の氏名と罪名で自分にどのような犯罪の嫌疑がかけられているのかを確認してください。
差し押さえるべき物や捜索すべき場所の記載は何より重要です。
捜査機関が令状に記載された場所以外を捜索したり、令状に記載されていない物を差し押さえようとした際には、すぐに抗議する必要があります。
何が押収されたのかを確認する
捜索差押では、最後に押収品のリストが本人に交付されます。
大量の物が押収されると、何が押収されたのかを覚えておくのは難しいでしょう。押収品のリストは、何が押収されたのかを確認するための重要な資料となります。
押収品のリストから、捜査機関が何を犯罪の証拠と考えているのかを推測することができます。あらかじめ証拠の内容を把握しておけば、刑事裁判での対策も立てやすくなるでしょう。
また、押収物の還付を受ける際にも、押収品のリストを活用できます。
弁護士に相談する
在宅で家宅捜索が行われた場合、その場で逮捕を免れたとしても、後日に逮捕される可能性は十分にあります。家宅捜索を受けたなら、すぐに弁護士に相談すべきです。
弁護士に相談すると、現在の状況から今後の見通しについて説明を受けることができます。
逮捕や取り調べを予測して事前に準備をしておくことは、逮捕・勾留からの早期釈放や刑事処分軽減のために重要なことです。
逮捕されてしまった場合でも、事前に相談しておけばすぐに動いてもらえます。逮捕直後は弁護士以外との面会はできないため、弁護士の存在は、大きな支えとなるでしょう。







