淫行勧誘罪とは?刑罰や構成要件について

淫行勧誘罪とは?刑罰や構成要件について

平成30年1月19日、アダルトビデオプロダクションの元従業員とアダルトビデオ製作会社社長などを、アダルトビデオへの出演を強要したことについて、淫行勧誘罪で逮捕したことが報道されました。聞き慣れない罪名ですが、どのような犯罪なのでしょうか。

本記事では淫行勧誘罪について解説します。

刑事事件お問い合わせ

淫行勧誘罪とは

淫行勧誘罪とは、営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者に対して成立する犯罪です。この罪は刑法第183条に規定されており、条文は以下のように記載されています。

(淫行勧誘)第百八十三条営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

この条文は、善良な風俗の保護や、女性の性的自由を守ることを目的としています。

淫行勧誘罪の構成要件

淫行勧誘罪の構成要件は次の通りです。

営利の目的であること

刑法第183条は、営利の目的であることを規定しています。

営利とは、自分または第三者が財産上の利益を得ることを目的とすることを指します。そのため、財産的な目的ではなく、性的な満足を目的としているのみの場合には淫行勧誘罪は成立しません。

淫行の常習のない女子

刑法第183条では、淫行の常習がない女子を対象としていることが規定されています。

淫行の常習がない女子とは、不特定の男性を相手に性交する習癖のない女性のことをいいます。同条が明治40年当時の価値観で作られたものであるため、適切ではないとする指摘もあります。なお、「女子」について特に年齢の制限は存在しません。

勧誘する

刑法第183条は、勧誘することを規定しています。

勧誘とは、女性に男性との性交を決意させる行為を指します。そのため、自ら性行為をすることを決意した場合には同条に該当しません。勧誘する行為が構成要件となるため、女性自身や性行為をした男性は基本的にはあてはまりませんが、男性が勧誘をしている場合には該当しえます。

姦淫させた

刑法第183条は姦淫させたことを規定しています。

姦淫とは、性行為を指します。

淫行勧誘罪の刑罰

淫行勧誘罪に該当する行為を行った場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。

淫行勧誘罪は現在ではあまり適用されない

現在、淫行勧誘罪が適用されるケースはほとんどありません。

これは、売春防止法が規定され、売春行為を行わせることについて細かく同法が規定した結果、淫行勧誘罪の適用の必要性がほぼなくなったためです。

アダルトビデオ出演強要問題に同条が適用されたのは82年ぶり

しかし、上述したように、アダルトビデオへの出演を強要したことについて、淫行勧誘罪で逮捕されました。同条の適用による逮捕は82年ぶりのことで、極めてレアなケースです。

この条文が適用され逮捕者が出た背景には、アダルトビデオへの出演強要について脱法行為が行われることが多発したためと言われています。

芸能プロダクションがアダルトビデオへの出演を強要することは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第58条の有害業務への派遣となり、同条に違反する行為で、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金となるものです。

労働者派遣法の規定を免れる目的で、業務委託契約など労働者ではないと主張することで犯罪に問われるのを免れるための行為に対し、この条文が適用されて処罰された経緯があります。

なお、アダルトビデオへの出演強要問題については、「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」(アダルトビデオ出演被害防止・救済法)が制定され、現在では同法により処罰されることになります。

淫行勧誘罪で罪に問われるときの対応方法

淫行勧誘罪で罪に問われる場合にはどう対応すれば良いのでしょうか。

犯罪として刑事事件になる場合、逮捕や起訴を避けるため、また、逮捕されている場合には早期の身柄解放が必要です。淫行勧誘罪のような性犯罪の場合、被害者と示談が成立していると、逮捕・起訴の可能性が下がり、すでに身柄拘束をされている場合には身柄の解放に繋がります。もっとも、淫行勧誘罪に問われる場合には、警察が被害者の連絡先を教えてくれることは期待できず、また連絡先を知っている場合でも被害者が連絡を拒否するなど、示談の成立が非常に難しい場合が多いです。

このような場合、弁護士に依頼して、被害者とコンタクトをとってもらい、示談交渉をすることが欠かせません。弁護士であれば被害者の連絡先を教えてもらうことができ、また加害者が直接交渉するわけではないので示談がスムーズです。

まとめ

本記事では淫行勧誘罪について解説しました。

アダルトビデオ出演強要問題で82年ぶりに適用されましたが、現在では対応するための法律も制定されており、淫行勧誘罪が適用されて刑事事件となることはほぼ無いといえます。もし淫行勧誘罪、売春防止法、またはアダルトビデオ出演被害防止・救済法などに違反する行為をしてしまった場合には、逮捕や起訴を避ける、身柄解放をしてもらうために、弁護士を通じて被害者と示談をするようにしましょう