
スマートフォンの普及により、誰でも簡単にカメラや動画を撮影できる時代になりました。しかし、軽い気持ちで行った盗撮が重大な問題を引き起こすことがあります。最近では法改正により盗撮が厳罰化され、刑事事件として扱われるため、適切な対応が求められます。
本記事では、盗撮で逮捕されたらどうなるのか、逮捕から釈放までの流れと適切な対応方法について解説します。
盗撮をするとどのような犯罪が成立するのか
盗撮をすると次のような犯罪が成立します。
性的姿態等撮影罪(撮影罪)
盗撮をすると性的姿態等撮影罪となります。
令和5年7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」)2条は、盗撮行為を禁止しています。これに違反すると、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金刑が法定されています。
2025年1月21日に札幌市の地下鉄のエスカレーターで盗撮した者が逮捕されたことがニュースで報じられているように、警察も積極的に逮捕などの強制捜査を行っています。
児童ポルノ禁止法
盗撮された方が18歳未満の場合、児童ポルノ禁止法に該当する可能性があります。
迷惑防止条例違反
令和5年7月12日以前の盗撮行為については、各都道府県の迷惑防止条例違反として処罰されます。
宮城県では宮城県迷惑防止条例第3条の2第1項第3号や、同第3項・第4項で盗撮行為が禁止されており、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習である場合には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が定められています。
軽犯罪法
同じく令和5年7月12日より前には、軽犯罪法違反となることがあります。
軽犯罪法第1条23号は、「正当な理由なく人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為」を禁止しています。違反をした場合には拘留又は科料に処せられます。
住居侵入罪・建造物侵入罪
住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する可能性があります。
たとえば部屋での様子を撮影しようとして住宅に侵入したり、商業施設でトイレの中を盗撮しようとして商業施設に入った場合には、それぞれ住居侵入罪・建造物侵入罪が成立します(刑法第130条)。住居侵入罪・建造物侵入罪には、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金が定められています。
なお、住居侵入罪・建造物侵入罪は盗撮のために行う目的・手段の関係にあり、この場合刑法第54条により、もっとも重い罪により処断されることになります。
盗撮をしてから釈放されるまでの流れ
盗撮をしてから釈放されるまでの流れは、おおむね次の通りです。
捜査・逮捕
捜査・逮捕をされます。
盗撮の場合、現行犯で逮捕されることもあれば、捜査の結果逮捕されることもあります。逮捕後は72時間以内に、勾留による身柄拘束を継続するかどうかが決定されます。勾留されない場合は釈放されます。
勾留
勾留されます。
逮捕後、勾留が決定されると、最大で20日間身柄を拘束されます。その間に起訴するかどうかが判断され、起訴されない場合は釈放されます。ただし、起訴されても在宅のまま手続きが進む場合もあります。
起訴・刑事裁判
起訴され刑事裁判となります。
勾留の結果起訴されることになると、刑事裁判が始まります。起訴された場合には起訴後勾留として身柄拘束がされたままですが、釈放される場合もあり、この場合は在宅で刑事事件が進行します。
拘禁刑(令和7年6月1日までは懲役)に処せられ執行猶予がつかない場合には、刑期が終了すると釈放されます。
盗撮で逮捕された場合の対応
盗撮で逮捕された場合に身柄拘束を解いてもらう・起訴猶予になるためには、被害者と示談する必要があります。
逮捕は証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合に行われるため、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを示す必要があります。被害者と示談をすることは通常証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを示すことになります。
刑事訴訟法第248条では、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないとき」は起訴しないことが可能とされています。特に示談が成立している場合、被害者の処罰感情が和らぎ、本人の反省が見られることから、犯罪後の状況として起訴されない可能性が高まります。
もっとも、逮捕されてしまうと相手と連絡がとれない上に、相手のことがわからない場合でも盗撮のような性犯罪については警察が被害者の連絡先を教えてくれません。そのため、弁護士に依頼して相手と示談をすることになります。
まとめ
本記事では、盗撮で逮捕された場合の逮捕から釈放までの流れや、対応方法を中心に解説しました。
令和5年7月13日に施行された性的姿態等撮影罪により盗撮行為は厳罰化されており、逮捕されると刑事事件となるばかりか報道されることもあり、対応は適切に行わなければなりません。
そのためにも、弁護士に依頼して被害者との示談を急ぐなど、適切な対応を行うようにしましょう。