
「キスをした」という事実だけで、不同意わいせつ罪(旧・強制わいせつ罪)として警察に逮捕されたり、処罰されたりすることはあるのでしょうか。
結論から言うと、相手の同意がないキスは、状況によって不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。 ただし、挨拶やゲームなど、行為の目的や文脈によって法律上の判断は大きく異なります。
そこで今回は「不同意わいせつ罪が成立するキスの基準」を明確にし、万が一「同意があった・なかった」でトラブルになった際の正しい対処法について詳しく解説します。
2025年6月から懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されました。旧制度や過去の事件に関連する場合は、懲役・禁錮と表記している場合もあります。
どのような行為が不同意わいせつに問われるのか
不同意わいせつ罪とは、拒絶できない状況や勘違いなどを利用し、相手の真意に基づく同意がないにも関わらずわいせつな行為を行った者を処罰する犯罪です。
「キスをした」状況や目的、手段などを総合的にみてわいせつな行為であるかどうか判断されます。
不同意わいせつ罪の構成要件
不同意わいせつ罪が成立するのは、次の3つの場合です(刑法176条)。

- 相手が同意していない
- わいせつではないと誤信または人違い
- 相手が16歳未満である
3つのNoのいずれかが困難な状態が不同意とされています。
従来の強制わいせつ罪では暴行もしくは脅迫を行うことのみが規定されていました。しかし、不本意なわいせつ行為を余儀なくされるケースはほかにもあることから、2023年7月13日に改正がされ、現在の規定となりました。
たとえば、眠っている人にキスをすることは「睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる」に該当します。また、職場での地位を利用してキスをすることは「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる」に該当します。
- 暴行もしくは脅迫を用いる
- 心身の障害を生じさせる
- アルコールもしくは薬物を摂取させる
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
- 同意しない意思を形成・表明するいとまをなくさせる
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖、驚愕させる
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
- 経済的・社会的地位に基づく影響力による不利益を憂慮(ゆうりょ)させる

キスはわいせつな行為か否か
わいせつな行為とは「いたずらに人の性欲を刺激し、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と最高裁判所の判例で定義されました。
キスについては性愛表現の一種ですが、親密であることを示したり、挨拶として交わされることもあり、常にわいせつに該当するとはいえません。そのため、わいせつな行為にあたる場合もあれば当たらない場合もあります。
刑事事件では、キスをした時間や場所、どこにキスをしたか、キスをした相手との関係、キスの仕方、キスをした相手の反応、キスをするまでの流れや周囲の状況、キスが社会一般でどのように受け止められているかなど、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。わいせつ行為を肯定または否定する判断に影響を与える事情については、以下をご参照ください。
| 判断基準 | わいせつを肯定する事情 | わいせつを否定する事情 |
|---|---|---|
| キスをした時間 | 深夜・未明 | 昼間 |
| キスをした場所 | 周囲に人がいない場所 | 周囲に人がいる場所 |
| どこにキスをしたか | 唇・性器など | 手の甲・おでこ |
| 相手との関係 | 他人・知っている程度の人 | 夫婦や恋人 |
| キスの仕方 | 相手を掴むなどの有形力を行使した | 力を入れておらず自然である |
| 相手の反応 | 嫌がった、歯を食いしばって舌を入れてくるのを拒否 | 嫌がるそぶりを見せない、舌を絡ませる、相手に腕を回す |
| キスをするまでの流れ | 突然キスをするなど | デート中、挨拶をした後など |
| 周囲の状況 | 2人きりになっていた | 周囲にたくさん人がいた |
未遂でも処罰される
また不同意わいせつ罪については、未遂でも処罰される旨の規定があります(刑法第181条第1項前段)。
婚姻関係があっても成立する
不同意わいせつ罪は、婚姻関係があっても成立します。そのため、配偶者でもキスをすることで不同意わいせつ罪が成立することもあるので注意が必要です。
不同意わいせつ罪の罰則や時効
不同意わいせつ罪の法定刑は、6か月以上10年以下の拘禁刑です。相手を怪我させた場合には、不同意わいせつ致傷罪となり無期または3年以上の拘禁刑となる可能性もあります。
不同意わいせつ罪の公訴時効については特別の規定が設けられ、不同意わいせつ罪の公訴時効は12年となっています。不同意わいせつ致傷罪は20年となっています。
不同意わいせつ罪で逮捕・起訴されないためには
キスをしたことで不同意わいせつ罪に問われる可能性がある場合、逮捕や起訴を避けるにはどのような対応が必要でしょうか。
被害者と示談する
被害者と示談をします。被害者と示談をすることで、罪証隠滅のおそれがないとして逮捕されない・処罰感情が弱まり起訴の必要がない、と判断され、逮捕・起訴を免れる可能性が高まります。被害者との直接示談をしようとすると相手に拒否されることがあるので、弁護士に依頼して示談をすすめるのが良いでしょう。
なお、慰謝料としては事案により30~100万円程度が相場となります。
警察に自首をする
被害者と面識がなかったり、連絡方法が分からない場合は、示談を進めるのが難しいことがあります。その場合、警察に自首することが選択肢の一つです。ただし、警察が被害者の連絡先を教えてくれるとは限りません。そのため、弁護士に依頼して警察から被害者の連絡先を取得し、示談交渉を進める形になります。
トラブルになったら弁護士に相談を
今回はキスをしただけで不同意わいせつ罪になるのかについて解説しました。
キスといっても様々な態様があり、ケースによっては不同意わいせつに該当する場合があります。キスによって不同意わいせつ罪に問われる可能性がある場合は、早めに被害者と示談を行うことが重要です。不同意わいせつ罪の示談交渉は、被害者と加害者が直接行うのは非常に困難です。そのため、弁護士に依頼して示談交渉を進めてもらい、逮捕や起訴を防ぐ対応を取ることをおすすめします。
仙台青葉ゆかり法律事務所では、性犯罪事件の示談交渉経験があります。既にトラブルになっていた場合でも、トラブルになる可能性が出てきた場合でも、最適な解決策を一緒に探ってまいります。トラブルとなった際にはできるだけ早くご相談ください。







