
交際をしていた相手に復讐をするなどの目的で、交際中に撮影したり取得した裸や性行為の写真・動画を公開することを、リベンジポルノと呼んでいます。
スマートフォンの普及によりSNSの利用者が増えた現在、容易に人目に触れる場所で拡散されやすいことから制定されたのが、リベンジポルノ防止法です。
本記事では、リベンジポルノ防止法について詳しく解説します。
リベンジポルノ防止法とは
リベンジポルノ防止法とは、平成26年法律第126号・私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律の通称で、リベンジポルノ行為を処罰する内容が定められています。
法律ができた経緯
リベンジポルノ防止法は、2013年10月8日に東京都三鷹市で発生した三鷹ストーカー殺人事件がきっかけで制定されました。このストーカー殺人事件の過程で、被害者の性的な画像や動画が拡散された事実を大手メディアが大々的に報じたことで、リベンジポルノが社会問題化したためです。
リベンジポルノ防止法で禁止される行為
リベンジポルノ防止法で禁止される行為は次の行為です。
- 第三者が撮影対象者を特定できる方法で、インターネットを通じて私事性的画像記録を不特定または多数の者に提供(リベンジポルノ防止法第3条第1項:私事性的画像記録の公表罪)
- 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供・又は公然と陳列(リベンジポルノ防止法第3条第2項:私事性的画像記録物の公表罪)
- 1.および2.の行為をさせる目的で、インターネットを通じて私事性的画像記録を提供し、または私事性的画像記録物を提供(リベンジポルノ防止法第3条第3項:公表目的提供罪)
私事性的画像記録の公表罪
インターネットを通じて私事性的画像記録を不特定多数に提供した場合には私事性的画像記録の公表罪が成立します。
私事性的画像記録とは
私事性的画像記録とは、次のいずれかに該当する人の姿態が撮影された画像に関する電磁的記録その他の記録を指します(リベンジポルノ防止法第2条第1項)。
- 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
- 他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
もっとも、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の第三者が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものは除かれます(例:アダルトビデオの動画)。
第三者が撮影対象者を特定することができる方法
第三者が撮影対象者を特定することができる方法である必要があります。
たとえ女性の顔にモザイクをかけたり、画像・動画をトリミングすることで、顔がわからないようにしている場合でも、他の情報(動画に部屋が写っている・音声が残っている等)によって特定ができる場合には、撮影対象者を特定できているといえます。
私事性的画像記録を不特定多数の者に提供
インターネットを通じて私事性的画像記録を不特定多数の者に提供する行為が私事性的画像記録の公表罪の対象です。
不特定多数の者が閲覧できる状態であることが必要で、SNSにおけるいわゆる鍵付きアカウントや、非公開・限定公開の場合は、不特定多数の者が認識できるものではないと判断され、公表罪に問われない可能性があります。
私事性的画像記録の公表罪の法定刑
私事性的画像記録の公表罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
私事性的画像記録物の公表罪
私事性的画像記録を保存した私事性的画像記録物を不特定多数に提供した場合には、私事性的画像記録物の公表罪が成立します。
上述の私事性的画像記録を記録したものを私事性的画像記録物といい、これを公表したり公然と陳列する行為を処罰します。たとえば画像を印刷してポストに投函したり、張り紙をしたりする行為がこれに該当します。
法定刑は私事性的画像記録の公表罪と同様に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
公表目的提供罪
インターネットを通じて私事性的画像記録を提供する・私事性的画像記録物を提供することを処罰するものです。
SNSで拡散するよう依頼して提供する・提供した人が公表することを確信しているような場合が代表的な例です。
公表目的提供罪の法定刑は1年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
まとめ
本記事では、リベンジポルノ防止法について解説しました。
三鷹ストーカー殺人事件をきっかけに制定された法律で、インターネットでの性的な画像の公表を懲役刑を伴う犯罪として処罰するものです。万が一この条項に該当する行為をしてしまうと、逮捕・身柄拘束の可能性があります。性犯罪であり、逮捕されると私生活に対する影響は計り知れません。もし該当する行為を行ってしまった場合、早めに弁護士に相談しましょう。