不同意性交等罪で捕まると懲役刑?執行猶予はある?

不同意性交等罪で捕まると懲役刑?執行猶予はある?

不同意性交等を行って刑事事件になる場合、気になるのはどのような刑罰が科されるのか、必ず刑務所にかなければならないのか、といった点ではないでしょうか。

そこで本記事では、不同意性交等罪で捕まった場合の刑罰や、逮捕・懲役刑で服役しなければならないのかといった疑問について解説します。

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不同意性交等罪とは?法定刑は?

不同意性交等罪とはどのような犯罪なのか、またその法定刑について確認しましょう。

不同意性交等罪とは

不同意性交等罪とは、同意をしていない・同意をすることが困難な状況の相手と性交等をした場合に成立する犯罪で、刑法第177条に規定されています。

かつては強姦罪・強制性交等罪などと呼ばれていましたが、犯罪の成立範囲が拡大する法改正によって現在の呼び方に変わっています。

同意をしていない・同意をすることが困難な状況として、刑法第176条に規定されている次のような事情や、それに類する行為や事由が該当します。

同意をしていない・同意をすることが困難な状況
  • 暴行もしくは脅迫を行う
  • 心身の障害を生じさせる
  • アルコールもしくは薬物を摂取させる
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせる
  • 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させる
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせる
  • 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる
  • 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせる
  • 行為をする者について人違いをさせる
  • 16歳未満の者に対し性交等をする

ここにいう性交等とは次の行為を指します。

性交等に該当する行為
  • 性交
  • 肛門性交
  • 口腔性交
  • 膣もしくは肛門に陰茎以外身体の一部もしくは物を挿入する行為であってわいせつなもの

不同意性交等罪の法定刑

不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑とされています。

拘禁刑とは、刑務作業が義務とされる懲役刑と異なるもので、更生プログラムを受けさせるなどの措置を行います。最低でも5年という期間の刑になっており、罪としては非常に重い部類に分類されているといえます。

なお、拘禁刑は2025年6月1日から施行され、それまでの間は懲役とされます(附則(令和5年5月17日法律第28号)第10条)。

なお、不同意性交等行為によって怪我や死傷の結果を生じさせた場合には、不同意性交等致死傷罪となり(刑法第180条)、無期又は6年以上の懲役が科されます。

不同意性交等罪で捕まると必ず懲役刑となるのか

不同意性交等罪で捕まると必ず懲役刑となるのでしょうか。

起訴され、有罪とならなければそもそも懲役刑にはならない

起訴され有罪とならなければ、そもそも懲役刑にはなりません。

そのため、起訴前に示談ができて、検察官も起訴の必要がないと考え、不起訴処分になれば懲役刑にはなりません。また、起訴されたとしても証拠不十分などで有罪とならなければ懲役刑になりません。

懲役刑になっても執行猶予となれば身柄拘束が解かれる

懲役刑となっても執行猶予となれば身柄拘束が解かれます。執行猶予とは、刑事事件としては有罪なのですが、刑の執行が猶予されるものです。

執行猶予としてもらえる条件は次のいずれかです。

執行猶予としてもらえる条件
  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない場合で3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言渡しを受けるとき。
  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがある場合には、刑の執行を終わった日またはその執行の免除をしてもらった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない場合で、3年以下の懲役もしくは禁錮または又は50万円以下の罰金の言渡しを受けるとき。
  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者が、1年以下の懲役または禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるとき。

不同意性交罪は上記のように法定刑が現在は5年以上の有期懲役となるので、そのままではいずれの要件も満たしません。しかし、刑法第68条によると、減刑ができる事由がある場合には、有期の懲役であれば、その長期及び短期の1/2を減ずる旨を規定しています。そのため、刑の減軽がされれば懲役刑は2年半以上となるため、法律上は執行猶予を得られる可能性があります。

もっとも、現実には不同意性交等罪で逮捕され、起訴されると執行猶予がつくことは稀であるため、執行猶予を得るためには弁護士に依頼して適切な対応をすることが欠かせません

不起訴・執行猶予になるための対策

不起訴にしてもらう・執行猶予になるためにはどのような対策が必要なのでしょうか。

被害者と示談をする

被害者との示談は不起訴・執行猶予には欠かせません。被害者と示談が成立している場合、被害者の処罰感情が弱まっていると考えられます。その結果、犯罪後の状況を踏まえて「起訴する必要がない」と判断されることがあり、不起訴になる可能性があります(刑事訴訟法第248条)。また、起訴された場合でも、情状の酌量ができるとして刑の減軽を受けられる可能性があります(刑法第66条)。

もっとも、不同意性交等罪の場合、加害者本人が被害者と直接連絡を取ることは非常に難しく、特に被害者と連絡がつかない場合には、警察から被害者の情報を教えてもらうことも困難です。そのため、通常は弁護士に依頼して示談交渉を進めることになります。

自首する

相手が特定できず示談ができない場合には自首することも対策の1つです。自首によっては犯罪後の情況により訴追を必要としないと判断される可能性があり、また刑の減軽を受けることができます(刑法第42条)。

自首についても、きちんと反省をしていることを示すために、弁護士によるサポートを受けるのが望ましいといえます。

まとめ

この記事では、不同意性交等罪で逮捕された場合に懲役刑になるかどうかを中心に解説しました。法律上、不起訴になれば懲役刑は科されません。また、起訴された場合でも刑が軽減されれば懲役刑を科されても執行猶予が付く可能性があります。

もっとも実際の運用では実刑に処されるケースが多く、刑事事件となった場合にはきちんとした対応が必要となります。弁護士に依頼して被害者と示談を進める、自首をするなどの適切な対応をするようにしましょう。