
盗撮をした場合に、警察や建物の管理をしている人などとは全く関係の無い人から、盗撮をしていたとして動画を撮られ、金銭を脅し取られることがあります。このような者を「盗撮ハンター」と言うのですが、彼らから脅迫や恐喝を受けた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
本記事では、盗撮ハンターへの対応方法について解説します。
盗撮ハンターとは
盗撮ハンターとは、盗撮をしている人を画像や動画に収めるなどして声をかけて、金銭を要求するなどの行為を行う者のことをいいます。
盗撮は、性的姿態等撮影罪という犯罪です。罪を行い終わった者のことを現行犯人というのですが(刑事訴訟法第212条第1項)、現行犯人については何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕できる旨が、刑事訴訟法第213条に規定されています。そのため、盗撮が多発する場所で張り込みを行い、現行犯人として逮捕して金品を要求するのが盗撮ハンターの手口です。
盗撮ハンターの特徴
盗撮ハンターには次のような特徴があります。
写真や動画を撮ってくる
盗撮ハンターの特徴として、写真や動画を撮ってくることがあります。
これは、盗撮をした人に対して「お金を払わなければこの動画をSNSに流す」などと脅し、金銭を払わせようとするためです。特に多いのが身分証明書や名刺などを出させてそれを撮影しようとする行為です。一度撮影されてしまうと、その場では金銭を要求されなくても、後日自宅や職場に押しかけてきて金銭を要求される可能性があり大変危険です。
警察などに引き渡そうとせず直接交渉してくる
盗撮ハンターの特徴として、警察などに引き渡そうとせず直接人気のない所に連れて行って金銭を要求しようとすることが挙げられます。
本来、盗撮をしたとして現行犯逮捕をした場合、すぐに警察などに引き渡す必要があります(刑事訴訟法第214条)。盗撮ハンターは警察に引き渡そうとせずに、人気のないところで金銭を要求します。もちろん盗撮ハンター自身には金銭を要求する権限は一切ありません。
被害女性とされる人が仲間である可能性がある
被害女性とされる人が仲間である可能性があり注意が必要です。
盗撮をしたとして現行犯逮捕をしたにもかかわらず、被害女性が全く出てこないことがあります。もちろん被害女性が一般の方の場合、関わり合いたくなくてすぐに立ち去ることもあるでしょう。しかし、盗撮ハンターの多くは被害女性とあわせようとせずに、盗撮の加害者を一方的に責め立てることがあり、このような場合には被害女性とされる人が盗撮ハンターの仲間である可能性があり、注意が必要です。
盗撮ハンターに成立する犯罪
盗撮ハンターに成立する犯罪には次のものがあります。
脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合には、脅迫罪が成立します(刑法第222条)。
盗撮ハンターが、盗撮したことをSNSで拡散するなどと脅した場合は、名誉に害を加える旨を告知して人を脅迫しているので、この場合には脅迫罪が成立します。
強要罪
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合には強要罪が成立します(刑法第223条)。
盗撮ハンターが盗撮した人に土下座を強要した場合には、強要罪が成立する可能性があります。
恐喝罪
盗撮ハンターが盗撮した人に対してお金を払わなければ警察に通報する・写真や動画をSNSに投稿する、などと告げてお金を支払わせると恐喝罪が成立します(刑法第249条第1項)。
盗撮ハンターの被害にあった場合の対応方法
盗撮ハンターの被害にあった場合にはどのような対応をすれば良いのでしょうか。盗撮ハンターの被害にあっている場合、盗撮をした相手と盗撮ハンター双方への対応が必要になります。
まず、盗撮をした相手との関係では、性的姿態等撮影罪などが成立するので、それへの適切な対処が必要です。対処の中でもっとも重要なのは被害者との示談であり、示談をすれば逮捕や起訴を免れる可能性が高くなります。一方で盗撮ハンターとの関係では、金銭などの請求は上記のように犯罪であり、これに対して断固とした対応をとる必要があります。
盗撮のような性犯罪については被害者との示談は難しい場合が多く、また盗撮ハンターのような脅迫や恐喝行為を常習的に行っている者と適切に交渉するのは容易ではありません。そのため、弁護士に依頼してこれらの交渉を任せることをおすすめします。
まとめ
本記事では盗撮ハンターとはどのようなものか、その対処方法について解説しました。
盗撮は犯罪ですが、盗撮ハンターのやることもまた犯罪で、この場合盗撮をしたことに対する対処と盗撮ハンター相手の対処の両方をきちんと行う必要があります。盗撮について逮捕されることはもちろん、盗撮ハンターからの金銭請求や、盗撮しているところの動画などをSNSで拡散されることを防ぐ必要がありますが、いずれの交渉も個人で行うのは非常に難しいです。なるべく早い段階から弁護士に相談し、依頼することをおすすめします。