盗撮未遂で逮捕されるケースは?証拠が無くても罪になる?

盗撮未遂で逮捕されるケースは?証拠が無くても罪になる?

盗撮をしようとしてカメラを向けたものの「うまくシャッターを切れなかった」「周囲に気づかれて制止された」というように、結果として撮影できていないケースがあります。

「画像や動画のデータが残っていないのだから、罪には問われないだろう」と楽観視してしまう方も少なくありません。しかし、現在の法律や条例において、盗撮はカメラを向けたり設置したりした段階で、未遂であっても厳しく処罰される犯罪です。

では、撮影データという決定的な証拠がないにもかかわらず、なぜ警察は事件化できるのでしょうか。本記事では、盗撮未遂で逮捕・処罰される法的根拠や、データがなくても有罪になり得る「証拠」の実態、そして万が一事件化してしまった際の正しい対処法について弁護士が詳しく解説します。

刑事事件お問い合わせ

盗撮が未遂であっても罪に問われるか

盗撮が未遂であっても罪に問われる犯罪は次の通りです。

罪名刑罰
撮影罪
性的姿態撮影等処罰法違反
2年~5年以下の拘禁刑
または200万円~500万円以下の罰金
迷惑防止条例違反1年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金
住居侵入罪・建造物侵入罪3年以下の拘禁刑
または10万円以下の罰金

未遂で罪に問われるために必要な刑法の規定とそれぞれの犯罪について解説します。

未遂で罪に問われるためには規定が必要

ある犯罪について、未遂である場合に罪に問われるためには、未遂の場合でも罰する旨の規定が必要です。

刑法第44条は「未遂を罰する場合は、各本条で定める。」として、未遂の場合でも処罰するためには、条文で定めることが必要とされています。例えば殺人罪は刑法第199条に定められていますが、第203条で未遂を処罰する旨が規定されているので殺人未遂罪として処罰されます。

一方、名誉毀損罪(刑法第230条)には未遂を罰する規定がなく、名誉毀損未遂罪は処罰されません。

性的姿態等撮影罪には未遂規定がある

盗撮行為を処罰する「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」第2条第1項は、性的姿態等撮影罪として盗撮行為を処罰していますが、同2項において未遂を処罰する旨の規定がありますそのため、盗撮が未遂で終わったとしても処罰されます。

撮影罪とは?性的姿態撮影等処罰法で犯罪になる5つの行為
スマートフォンや小型カメラの悪用による盗撮被害の深刻化を受け、令和5年7月13日に「性的姿態撮影等処罰法(通称撮影罪)」が施行されました。これにより、従来の迷惑防止条例違反ではなく、全国一律の基準として処罰される体制へと移行しています。条例…

迷惑防止条例には未遂犯は無いが処罰される

なお、撮影罪は2023年7月13日に施行されたものですが、それ以前の盗撮については都道府県の迷惑防止条例と呼ばれるもので処罰されていました。

宮城県では、宮城県迷惑防止条例が制定されており、以下のような条文に基づいて処罰されています。

人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を向け、若しくは設置すること。

第3条の2第1項第3号

何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

第3条の2第3項

何人も、正当な理由がないのに、集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所にいる人又はタクシー、貸切バスその他の特定かつ多数の者が利用するような乗物に乗つている人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

第3条の2第4項

つまりカメラを向けたり設置した段階で撮影していなくても処罰する旨の規定があるので、盗撮行為自体が行われる・行われないに関わらず犯罪が成立しています。

盗撮のために侵入行為をしていると住居侵入罪・建造物侵入罪に問われる

盗撮自体は未遂に終わったとしても、盗撮をするために住居に侵入していたり、建造物に侵入している場合には、住居侵入罪・建造物侵入罪は既遂として成立します

盗撮未遂は証拠が無くても罪になるのか

盗撮未遂は証拠が無くても罪になるのでしょうか。

盗撮未遂に限らず、刑事事件で有罪とする判決を下すためには、証拠が必要です。そのため、盗撮未遂でも証拠は必要です。

撮影データが無い盗撮未遂は罪に問えるのか

盗撮未遂の場合撮影データが無いのですが、盗撮未遂として罪に問えるのでしょうか。

撮影罪の既遂で起訴する場合、スマートフォンや自宅のパソコンなどを押収して、盗撮をしている画像・動画などのデータをもとに、盗撮していたことを認定します。撮影データが無い盗撮未遂では証拠がないため、罪に問えないのではないかと考える方も居ます。

しかし、盗撮行為についての証拠は本人が写した画像・動画のデータだけではありません。他にも目撃者の証言や監視カメラ・防犯カメラの動画などで、盗撮しようとしていることを立証できることがあります。このような場合には盗撮をした撮影データがなくても罪に問われることになります。

撮影データ以外の「証拠」となる具体例

裁判や警察の捜査において、有罪を立証するための証拠はデータだけではありません。以下のような具体例がある場合、撮影データがなくても盗撮未遂として立証されます。

駅のホームやエスカレーターの防犯カメラ映像

スマホを不自然に下から差し入れたり、女性のスカート内に差し向けたりしている一連の「動作」が、駅や商業施設の防犯カメラに鮮明に記録されている場合。撮影ボタンを押していなくても、その不審な挙動自体が「盗撮を試みた強力な証拠」になります。

周囲の目撃者や被害者本人の証言

「スマホを不自然にスカートの真下に差し向け、画面を覗き込んでいた」「カメラのレンズがこちらを向いていた」といった、第三者(通行人や駅員など)の具体的かつ一貫した目撃証言がある場合。

本人の自白や過去の余罪データ

取り調べに対して本人が容疑を認めた場合。さらに、スマホ内から「過去に撮影された別の盗撮データ」が見つかった場合、今回の行為も「単なる誤解ではなく、盗撮目的でカメラを向けた(未遂である)」と強く推認される材料になります。

盗撮未遂で刑事事件となった場合の対応方法

盗撮未遂で刑事事件となった場合には、被害者との示談を早急に進めることが重要です。

逮捕は加害者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあることでおこなわれますが、被害者と示談が済んでいると、逃亡や証拠隠滅のおそれはないとして逮捕を免れる可能性が高まります。

また、起訴について刑事訴訟法第248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」としています。そのため、被害者と示談をして真摯な反省を示せば、起訴されないで済む可能性が高まります

盗撮事件の被害者との示談は、被害者が強く処罰感情を持っているケースがあります。そのような場合に、相手や警察が連絡先を教えてくれることはまずありません。直接示談交渉をすることができない以上、弁護士に依頼して代理してもらう必要があります。

盗撮未遂は「データがないから安心」ではない!

本記事では、盗撮未遂で逮捕・処罰されるのか、撮影データがない場合の捜査の実態、そして事件化してしまった際の正しい対処法について解説しました。

最後に、重要なポイントを3つにおさらいします。

  • 未遂でも厳罰に処される
  • 周囲の状況証拠で有罪になる
  • 自力での解決(示談)は極めて困難

「未遂だから事件にならないだろう」と楽観視して対応を後回しにしていると、ある日突然、警察が自宅に逮捕や家宅捜索(スマホの押収など)にやってくるリスクがあります。

もし、盗撮未遂の現場で取り押さえられた、すでに警察の捜査対象になっている、あるいは自首すべきか悩んでいるという場合は、一刻も早く刑事事件の解決実績が豊富な弁護士へ相談・依頼し、迅速な示談交渉へと動くことを強くおすすめします。

仙台青葉ゆかり法律事務所では、盗撮事件に関する刑事弁護や示談交渉を数多く手がけています。家族が逮捕された場合や、警察から調査されているなどの場合はできるだけ早くご相談ください。