
合法ドラッグは、脱法ドラッグや危険ドラッグとも呼ばれます。「合法ドラッグ」という名称から、使用しても逮捕されず、安全なものであると誤解する人もいます。
しかし、合法ドラッグの多くは幻覚や嘔吐などの危険な症状を引き起こすものであり、違法薬物として法律による規制の対象とされています。
今回は、合法ドラッグとは何かを説明したうえで、危険性や罰則、逮捕されたらどうなるかを解説します。
合法ドラッグとは?
合法ドラッグとは、あたかも合法で安全かのように取引されている危険薬物の総称です。
商品としては、ハーブやアロマ、たばこ、お香などさまざまな形態で取引されています。
現在、合法ドラッグという名称が新聞やテレビなどのメディアで使われることはありません。合法ドラッグという名称は、合法・安全との誤解を招くことから、現在では危険ドラッグという名称が用いられています。
合法ドラッグ・危険ドラッグについては、次々と新しいものが製造されており、それに対する法規制も進められています。
かつて、法規制が及ばずに「合法」であったドラッグも、現在では多くが法規制の対象とされているのです。
合法ドラッグの危険性
合法ドラッグ・危険ドラッグ(以下、この記事では「合法ドラッグ」と称して解説を続けます。)の中には、覚せい剤や大麻、シンナーなどの違法薬物よりも人体への悪影響が強いものもあります。
合法ドラッグによる症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 幻覚や幻聴
- 妄想に取り付かれる
- 極度の興奮状態
- 嘔吐
- 疲労感や倦怠感
- 集中力の低下 など
合法ドラッグは、使用直後は「気持ち良い」「疲れが抜ける」などの感覚を得られますが、多くは激しい副作用に襲われます。
依存性の高いドラッグも多く、1度使用しただけでも禁断症状から抜け出せなくなる可能性もあります。
合法ドラッグを使用することで、他の犯罪を引き起こしてしまうケースも少なくありません。
ドラッグを手に入れるために窃盗や強盗などの犯罪に手を染めたり、幻覚や妄想が原因で他者に危害を加えたりするなど、合法ドラッグを原因とする犯罪は少なくありません。
合法ドラッグの使用を続けると、ドラッグ依存から抜け出せず普通の生活を送ることができなくなります。
最悪の場合には、ドラッグの作用が原因で命を落とすこともあるでしょう。合法ドラッグとの名称から安易に手を出すと、取り返しのつかない結果を招くことになってしまいます。
合法ドラッグを使用したことによる罰則
合法ドラッグには、さまざまな種類があります。合法ドラッグを使用すると、ドラッグに含まれる成分に応じた罰則の対象となります。
ここでは、合法ドラッグの「使用」に限定して各種罰則を解説します。
覚せい剤取締法違反
合法ドラッグに覚せい剤の成分が含まれていた場合、覚せい剤取締法の使用罪による処罰の対象となります。
覚せい剤使用の罰則は、10年以下の拘禁刑です。
この場合、合法ドラッグを使用した人の「合法だと思っていた」「覚せい剤の成分が入っているとは知らなかった」という言い訳は通用しません。
合法ドラッグを使用した人が「規制薬物と同様の作用があるドラッグ」だと認識していた以上、薬物の種類や違法であるとの確定的な認識がなくても、薬物使用の故意は否定されません。
医薬品医療機器等法違反
医薬品医療機器等法は「中枢神経系の興奮もしくは抑制または幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物」(同法2条15項)を指定薬物と定義しています。
合法ドラッグと呼ばれる薬物の多くは、医薬品医療機器等法における指定薬物に該当します。
指定薬物を使用したことによる罰則は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。
かつては医薬品医療機器等法で指定薬物の使用は規制されていませんでした。
2014年の法改正により使用についての罰則が新設され、合法ドラッグを使用したケースの多くが同法で処罰されています。
薬物の濫用防止に関する条例
各都道府県では、薬物の濫用防止に関する条例を定めています。
たとえば、東京都では健康に悪影響を及ぼすおそれがある薬物を知事指定薬物として、製造や販売、使用、所持などが禁止されています。
医薬品医療機器等法違反の指定薬物に該当しない場合でも、条例による規制の対象となっているときは、条例による罰則の対象となるのです。
その他の犯罪
合法ドラッグを使用した状態で交通事故を起こし、人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪により処罰されます。
他にも、ドラッグによる幻覚や妄想で他人を攻撃したときは、傷害罪や殺人罪などに問われるケースもあるでしょう。
合法ドラッグを使用すると、その使用自体による罰則に加え、他の犯罪を引き起こして重い刑罰の対象となる可能性があります。
合法ドラッグで逮捕されたらどうなる?
合法ドラッグで逮捕された場合、勾留されたのちに起訴されるケースが多くなっています。
合法ドラッグの使用のみであれば、初犯の場合は罰金または執行猶予付きの判決となる可能性が高いでしょう。
逮捕された際に適切な対処をするには、弁護士のサポートが欠かせません。
弁護士は、身体拘束からの早期解放や重い処罰を避けるため、さまざまな活動を行います。
取り調べの対応方法や事件の見通しを把握するためにも、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。







