
他人の自宅のベランダに侵入して下着を盗むなど、下着を対象に窃盗することを、一般的に下着泥棒といいます。下着泥棒はどのような犯罪になり、どんな刑罰が科されるのでしょうか。また、どのような対応をすべきなのでしょうか。
本記事では、下着泥棒で逮捕された場合の対応方法について解説します。
下着泥棒により成立する犯罪と刑罰
下着泥棒により成立する犯罪と、その刑罰は次の通りです。
窃盗罪(刑法第235条)
下着泥棒で成立する犯罪に窃盗罪があります。
窃盗罪は次の要件によって成立します。
- 他人の財物を
- 自分のものにするという意思で
- 窃取する
「財物」というと貴金属やブランドもの、自動車などを想像する人も多いですが、財物は高価なものに限らず、下着もその対象に含まれます。
なお、窃盗罪については未遂であっても処罰される旨が規定されているので(刑法第243条)、たとえばベランダに手を伸ばして下着を盗もうとして、家主に見つかり逃げた場合でも窃盗未遂として処罰されることになります。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
常習累犯窃盗罪(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第2条)
下着泥棒の特徴に、再犯率が高く常習性があることが挙げられます。
そのため、常習的に窃盗を行う場合には、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第2条によって常習累犯窃盗罪が成立する可能性があります。常習累犯窃盗罪は次の要件によって成立します。
- 常習
- 刑法第235条(窃盗罪)・第236条(強盗罪)・第238条(事後強盗)・第239条(昏睡強盗)の罪またはその未遂罪
なおここにいう「常習」とは、過去10年以内に、窃盗既遂罪・窃盗未遂罪と窃盗罪と他罪との併合罪で6カ月以上の懲役刑の執行を3回以上受けた場合を言います(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律第3条)。
強盗罪(刑法第236条)
強盗罪が成立する可能性があります。
強盗罪が成立する条件は次の通りです。
- 暴行又は脅迫を用いて
- 他人の財物を強取した者
下着泥棒にあたって、家主を脅迫したような場合には、強盗罪が成立することになります。なお、強盗行為の結果被害者が怪我をした場合や、その怪我で亡くなった場合には、強盗致死傷罪(刑法第240条)が成立します。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役が、強盗致傷罪の場合には無期懲役または6年以上の懲役刑が、強盗致死罪の場合には死刑又は無期懲役が法定刑です。
事後強盗罪(刑法第238条)
事後強盗罪が成立する可能性があります。
下着の窃盗をした後に、取り返されることを防ごうとする・逮捕を免れようとする・証拠隠滅をするために、暴行又は脅迫をした場合には、強盗と同様に取り扱います。
住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法第130条)
住居侵入罪・建造物侵入罪が成立する可能性があります。
下着泥棒をする場合、多くのケースで住居・建造物への侵入をしているため、住居侵入罪・建造物侵入罪が成立しえます。住居・建造物侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となります。
なお、この場合、窃盗行為を行うことが目的であり、住居・建造物への侵入はその手段という関係にあります。そのため、刑法第54条により、もっとも重い罪である窃盗罪によって処断されることになります。
下着泥棒をしてしまった場合の対応方法
下着泥棒をしてしまった場合、どう対応すれば良いのでしょうか。下着泥棒については現行犯逮捕される場合と通常逮捕される場合があるので分けて対応方法を考えましょう。
現行犯逮捕された場合
現行犯逮捕された場合には、身柄拘束されている状態です。
そこでまず目指すべきなのは身柄拘束を解いてもらう方法でしょう。逮捕は罪証隠滅・逃亡のおそれを防止するために行われるものであり、そのおそれがない状態にする必要があります。
また、次に考えるべきことは起訴されないことです。刑事事件についての手続きについて定める刑事訴訟法第248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」としています。
以上の対策としてもっとも効果があるのが、被害者と示談をすることです。示談をすることで罪証隠滅・逃亡のおそれがないと判断できれば、釈放し在宅で手続きをすすめる可能性が高まります。また、示談によって被害者の処罰感情が薄まり、かつ犯罪後の反省を示すことができます。
もっとも、逮捕されている状況では被害者との示談交渉もできません。そのため、弁護士に依頼して示談交渉をすることをおすすめします。
通常逮捕される場合
通常逮捕される場合、すぐには身柄は拘束されません。
下着泥棒で現行犯逮捕されなかった場合でも、被害者が防犯カメラを確認し、警察に被害届を提出することで、捜査の結果、通常逮捕されるケースがあります。そのため、まだ逮捕されていない場合は、逮捕を回避するための行動を取ることが重要です。前述の示談に加え、自首することも有効な手段の一つです。
なお、下着泥棒のようなケースでは被害者が直接加害者との交渉に応じてくれることが期待できません。そのため弁護士に依頼して示談交渉を進めることをおすすめします。
まとめ
本記事では下着泥棒で逮捕される場合の罪状や刑罰について解説しました。
窃盗をはじめとする複数の犯罪が成立する可能性があり、逮捕される可能性があります。対応については弁護士に相談した上で相手と示談をすすめることをおすすめします。