
かつて交際していた相手などへの復讐や嫌がらせを目的として、交際中に撮影した裸や性行為の画像・動画をネット上に公開する行為を「リベンジポルノ」と呼びます。 スマートフォンの普及やSNSの流行に伴い、一度拡散されてしまうと完全に削除することが極めて困難な、極めて深刻な現代の社会問題となっています。
このような悪質な行為から被害者を守り、加害者を厳密に処罰するために制定されたのが通称「リベンジポルノ防止法」です。
本記事ではどのような行為が違法となるのか、刑罰や罰則はどれくらいかなど、リベンジポルノ防止法の内容について、わかりやすく解説します。
2025年6月から懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されました。旧制度や過去の事件に関連する場合は、懲役・禁錮と表記している場合もあります。
リベンジポルノ防止法とは
リベンジポルノ防止法とは「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」の通称で、リベンジポルノ行為を処罰する内容が定められています。
リベンジポルノ防止法は、2013年10月8日に東京都三鷹市で発生した三鷹ストーカー殺人事件がきっかけで制定されました。このストーカー殺人事件の過程で、被害者の性的な画像や動画が拡散された事実を大手メディアが大々的に報じたことで、リベンジポルノが社会問題化したためです。
リベンジポルノ防止法で禁止される行為
リベンジポルノ防止法で禁止される行為は、公表罪と公表目的提供罪の二つです。
| 罪名 | 内容・刑罰 |
|---|---|
| 公表罪 | 顔や個人が特定できる状態で、ネットやSNSなどに性的な画像・動画を投稿し、不特定多数の人が見られる状態にすること 3年以下の拘禁刑 または50万円以下の罰金 |
| 公表目的提供罪 | 他の人にネットやSNSなどで拡散してもらう目的で、性的な画像・動画を渡す行為 1年以下の拘禁刑 または30万円以下の罰金 |
私事性的画像記録(物)の公表罪
インターネットを通じて画像データなどを流出させた場合は「私事性的画像記録の公表罪」現物(モノ)をバラまいた場合は「私事性的画像記録物の公表罪」が成立します。形が違うだけで、どちらも重い犯罪です。
データとは、ネット掲示板やSNSへのアップロード、LINEグループへの動画転送など、デジタルデータを指します。
現物(モノ)は、現像した写真をポストに投函する、壁に貼り出す、データを焼いたDVDやUSBメモリを配るなど、手に取れる「形のあるモノ」を指します。
以下で紹介する3つの条件(構成要件)が揃ったときに初めてリベンジポルノ防止法違反に問われます。
- 私事性的画像記録(物)に該当するもの
- 第三者が撮影対象者を特定することができる方法
- 私事性的画像記録を不特定多数の者に提供
私事性的画像記録(物)に該当するもの
私事性的画像記録(物)とは、次のいずれかに該当する人の姿態が撮影された画像に関する電磁的記録その他の記録を指します(リベンジポルノ防止法第2条)。
- 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
- 他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
もっとも、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の第三者が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものは除かれます(例:アダルトビデオの動画)。
第三者が撮影対象者を特定することができる方法
リベンジポルノに該当するには、第三者が撮影対象者を特定することができる方法である必要があります。
たとえ女性の顔にモザイクをかけたり、画像・動画をトリミングすることで、顔がわからないようにしている場合でも、他の情報(動画に部屋が写っている・音声が残っている等)によって特定ができる場合には、撮影対象者を特定できているといえます。
私事性的画像記録を不特定多数の者に提供
インターネットを通じて私事性的画像記録を不特定多数の者に提供する行為が私事性的画像記録(物)の公表罪の対象です。
不特定多数の者が閲覧できる状態であることが必要で、SNSにおけるいわゆる鍵付きアカウントや、非公開・限定公開の場合は、不特定多数の者が認識できるものではないと判断され、公表罪に問われない可能性があります。
私事性的画像記録の公表罪の法定刑
私事性的画像記録(物)の公表罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
私事性的画像記録(物)の公表目的提供罪
自分で直接ネットに投稿していなくても、「他の人にネットやSNSで拡散してもらう目的」で性的な画像や動画を第三者に渡す行為を処罰する罪です。いわば、流出の「原因」や「きっかけ」を作った時点でアウトになります。
公表目的提供罪の法定刑は1年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
公表しなくても逮捕される?問われる可能性がある犯罪
「ネットなどに公開しなければリベンジポルノ防止法には問われない」というのは事実ですが、だからといって他の罪に問われないわけではありません。流出させると脅したり、勝手に撮影したりした場合は、以下のような別の重い犯罪で逮捕される可能性が十分にあります。
| 罪名 | 内容 |
|---|---|
| 脅迫罪 | 「別れるなら裸の写真を親に見せるぞ」などと相手を脅す行為 |
| 強要罪 | 脅し文句を使って、相手に無理やり「さらに性的な写真を撮らせる」などを行わせる行為 |
| 名誉毀損罪 | 「不特定多数」ではない「知人のLINEグループ」などに性的な画像を送り、社会的信用や名誉を著しく傷つけた場合 |
| ストーカー規制法違反 | 別れた後も「写真をばら撒くぞ」と連絡を繰り返したりメッセージを送り続けたりする行為 |
| 撮影罪(性的姿態撮影罪) | 性的な写真や動画を相手の同意なく勝手に撮影する行為 |
| 児童買春・児童ポルノ禁止法違反 | 18歳未満の児童の性的な写真や動画を所持・提供・製造する行為 |
まとめ
本記事では、リベンジポルノ防止法が禁止する行為や、それに伴う法的リスクについて解説しました。
リベンジポルノ防止法は、インターネット上での画像データ流出(公表罪)だけでなく、写真を印刷してバラまく行為や、他人に拡散を依頼する行為(公表目的提供罪)も厳しく処罰する法律です。
また、仮にネットへ「公表していない」段階であっても、画像をネタに相手を脅せば脅迫罪・強要罪に、無断で撮影していれば性的姿態撮影罪(撮影罪)などの重罪に問われます。「これくらいなら大丈夫だろう」という軽い気持ちや別れ際の感情的な行動が、取り返しのつかない事態を招きかねません。
仙台青葉ゆかり法律事務所では、リベンジポルノ防止法違反で逮捕された方の示談交渉や刑事弁護のご相談をお受けしています。もしリベンジポルノに該当する行為をしてしまった、あるいはトラブルに巻き込まれてしまった場合は、事態が深刻化する前にご相談ください。






